【Vol.814(2024.07.26)】生徒さん本人の意見、聞いていますか?

先日、ちょっと気に留めておきたいニュースを見ました。

滋賀県が、子ども・若者政策の総合計画を立てるに当たり、
子どもや若者当人に意見を聞いて、それを取り入れようというものです。

<子どもや若者の意見、滋賀県が募集中>
https://www.asahi.com/articles/ASS7L4DV9S7LPTJB00KM.html?iref=pc_edu_issue_list_n

これまでの日本社会において、子どもに関すること――
例えばどんな生育環境が望ましいのか、どんな教育を受け(させ)たいか、
国としてどんな教育を推進していくのかなどは、基本的にすべて大人が決めてきました。

もちろん、大人としては子どもに良かれと思ってやっているわけですが、
極端な言い方をすれば、子ども本人の希望や意見は無視されてきたわけです。

その根底には、年長者が優先される儒教的な考えや、
「子どもにその判断能力はない(から大人が決めてあげなければいけない)」
という先入観があったと思います。

要は、黙って大人の言うことを聞くのが普通だというわけですね。

ここで私たち塾関係者が絶対に知っておきたいのは、
昨年5月から施行された「こども基本法」の存在です。

同法は、子ども施策の基本的理念などについて定めたものですが、
施行前と大きく違うのが「子どもの意見の反映」を明文化したことです。

こども基本法第3条の三と四には、このように記されています。
=====================
(三) 
全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、
自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会
及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

(四)
全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、
その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
=====================

つまり、大人だけで勝手に決めるなということであり、
こども政策においては子ども本人の意見をちゃんと聞きなさい、
そのような場を作りなさい、そしてその意見を尊重しなさい、
子どもにはその権利があるということです。

今回の滋賀県の取り組みも、こども基本法の原則にのっとっています。

また、こうした「子どもは権利を持つ主体であること」は、
ユニセフの国際条約「子どもの権利条約」に定められたグローバルスタンダードです。

そもそも、子ども基本法もそれに基づいて策定されました。

ただ問題は、学校の先生も塾の先生も保護者さんも、
大人の多くがいまだこれをきちんと理解できていないこと。

今年3月に(株)サーベイリサーチセンターが発表した調査結果によると、
こども基本法の認知度についてこのような結果が出ていまいた。

・聞いたことがない:43.3%
・名前だけ聞いたことがある:38.5%
・内容を少し知っている:14.8%
・内容をよく知っている:3.5%

子どもの権利条約についても、おおむね似たような認知度です。

・聞いたことがない:46.8%
・名前だけ聞いたことがある:33.1%
・内容を少し知っている:15.8%
・内容をよく知っている:4.3%

実に約8割の大人がほぼ分かっていないということになります。

自戒を込めてお聞きしますが、あなたはいかがでしたか?
転じて、あなたの教室では子ども本人の意見が運営や教育内容に反映されていますか?

私たち大人、特に私教育である塾の世界は、
ほとんど大人(塾長や塾の先生)が教育内容を決めてきた部分があったと思います。

子どもたちがどんな教育を受けたいかより、
塾がどんな教育を提供したいかが重視されてきたわけです。

意地悪な見方をすれば「これが正しい教育だ」と押し付けてきたと言えるかもしれません。

ビジネス的には、マーケットイン(市場の求めに応じて商品やサービスを作ること)と、
プロダクトアウト(市場どうこうではなく、自分たちが売りたいものを作ること)の違いです。

賛否はともかく、教育界はとかくプロダクトアウトになりがちだと言われますし、
教育に思いが強い人ほど、マーケットイン型の思考を「市場におもねること」と感じ、
信念を曲げて商売に走ったかのような嫌悪感を抱く部分があると思います。

もちろん、教育に対する理念や信念はあっていいし、
それを子どもたちに届けたいと思うのも間違ってはいませんが、
そこに「子どもたちの声にも耳を傾け、意見を反映する」姿勢があることは
大事ではないでしょうか。

もちろん、市場のニーズなどをしっかり把握して、
ビジネス的な思考で塾経営に反映されている方もたくさんいらっしゃるでしょう。

しかし、このときの「市場のニーズ」とは「保護者さんのニーズ」でもあるわけです。
子どもたち当人のニーズかどうか分からないんですよね。

そこで改めて、その意見をしっかり聞いてみるのも悪くないと思います。

今まで「これが常識」だと思ってやってきたこと、
保護者さんにも問題なく受け入れられてきたことも、
子どもたち当人からすれば違和感や疑問を抱いていることがあるかもしれません。

また、私たち大人の視点では思いつかなかったような、
斬新な解決策(要望)を持っているかもしれません。

そしてその中に、新たな塾経営のチャンスや武器が眠っている可能性は大いにあります。

あれをやれ、こうしなさい、と指示するのは簡単です。

でも時には「何をしたい?」「どうやりたい?」と聞いてみるのも良いかもしれませんね。

【今回のまとめ】
・子どもは自分の意見を言う権利を持っていることを理解する
・子どもの意見の中に、新たな経営のヒントがあるかも

この情報をシェア
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

目次