【Vol.827(2024.09.11)】講師人件費率を適正値から外さないために

先日、クライアント塾さまから
「講師人件費の適正は何%ぐらいでしょうか」と相談をいただきました。

確かに人件費の比率はどのくらいが適切なのか、気になりますよね。

人件費率については以前にも当メルマガで取り上げたことがあるのですが、
当時と比べて物価高だの増税だの社会環境も大きく変わってきました。

そこで、改めて人件費の適正比率について一緒に考えてみたいと思います。

結論からお伝えすると、個別指導塾の場合、
「28%以下が適正、28〜30%がギリ許容範囲、30%以上は危険水域」といったところです。

弊塾では27%と、なんとか適性を保っています。

やはり講師人件費率が30%を超えると、
運営する上でかなり負担増となるのではないでしょうか。

みなさんの教室ではいかがですか?

「人件費÷売上」ですぐに算出できますので今すぐやってみてください。

30%を超えている塾さんは、黄色から赤信号です。

指導単価が安すぎるなど、そもそもの事業構造やキャッシュフローに問題がないか、
基本は1:2にも関わらず、振替などのイレギュラー対応で
1:1になることが多くなっていないかなど、原因を探してみてください。

厳しい言い方になりますが、1:2の個別指導塾で1:1の授業が常態化するのは、
いかなる理由があっても「悪」だと認識したほうが良いです。

実は弊塾では、コロナ禍中の4年間に授業料の値上げ1回、
講師給与のベースアップ(時給アップ)を1回行っています。

講師人件費率を適正の範囲内で抑えたいからです。

この事例をもとに、時系列に沿って具体的な人件費率の変化の数値を出してみます。

前提として、1:2の個別指導塾で、
講師が1日2コマ(1コマ75分)勤務した場合で考えてください。

(4年前)指導単価「値上げ前」、講師給与「アップ前」
=====
<人件費>
・1コマ(75分)1,510円×2=3,020円・・・(A) ※時給1,208円
・準備手当(前後30分)465円・・・(B) ※時給930円
・休憩手当(コマの間の10分)155円・・・(C) ※時給930円
・交通費300円・・・(D)
→ 合計3,940円・・・(E)=(A+B+C+D)

<売上>
・1コマ(75分/高1) 4,070円×2人×2コマ=16,280円・・・(F)

<人件費率>
・人件費(E)÷売上(F)×100=24.2%
=====

このバランスだと人件費率は24%となり、非常に安定した数値だったと思います。

しかし、より良い人材を確保するためには時給アップは欠かせないと判断し、
時給を1,208円から1,400円へと一気にアップしました。

その場合の人件費率は下記のようになります。

(3年前)指導単価「値上げ前」、講師給与「アップ後」
=====
<人件費>
・1コマ(75分)1,750円×2=3,500円・・・(A) ※時給1,400円
・準備手当(前後30分)480円・・・(B) ※時給960円
・休憩手当(コマの間の10分)160円・・・(C) ※時給960円
・交通費320円・・・(D)
→ 合計4,460円・・・(E)=(A+B+C+D)

<売上>
・1コマ(75分/高1) 4,070円×2人×2コマ=16,280円・・・(F)

<人件費率>
・人件費(E)÷売上(F)×100=27.4%
=====

時給アップしたぶん、人件費率も一気に跳ね上がりました。

理論上は27.4%ですが、当日欠席などの対応で、
1:1にならざるを得ない授業も1日に1〜2組はありましたので、実際は29%ほどです。

私が考える適正数値の水準を超えており、このままでは、
人件費が重荷になってどこかでサービスの質を削らないといけなくなります。

そこで、良いサービスを提供を継続するため、2年前に指導単価のアップを決断しました。

(2年前)指導単価「値上げ後」、講師給与「アップ後」
=====
<人件費>
・1コマ(75分)1,750円×2=3,500円・・・(A) ※時給1,400円
・準備手当(前後30分)501円・・・(B) ※時給1,002円
・休憩手当(コマの間の10分)167円・・・(C) ※時給1,002円
・交通費360円・・・(D)
→ 合計4,528円・・・(E)=(A+B+C+D)

<売上>
・1コマ(75分/高1) 4,400円×2人×2コマ=17,600円・・・(F)

<人件費率>
・人件費(E)÷売上(F)=0.2572・・・
→ 人件費率25.7%
=====

なんとか25%台まで抑えることができ、
当日欠席や1:1の授業などのロスを入れて27%台という形です。

現状は、この設定で回しています。

結局のところ、人件費率を抑えるためには、

・時給を下げる
・指導単価を上げる
・1:2比率を極限まで高める

のいずれか、もしくはすべてかに行きつくと思います。

しかし「時給を下げる」という選択は、今の社会状況や雇用状況から考えると逆効果です。
むしろ、時給を上げるケースがほとんどでしょう。

したがって、そのぶん指導単価を上げる(値上げをする)仕組みが欠かせないと考えます。

もちろん、1:2の個別指導塾と謳っていて、1:1の授業が多発するのは論外です。

「この生徒さんは1:2ではなく、1:1のほうが伸びます」など、
生徒思いの熱い教室長が言ってくることはありませんか?

気持ちは分かりますが、絶対にこのような例外を作ってはいけません。

1:2の個別指導塾なのですから、あくまでも1:2なんです。

指導単価や人件費、その他経費なども
1:2を前提として利益を出すスキームになっているわけで、
この前提を崩してはいけないんですよ。

一方で、確かに1:1の指導が適切な場合も存在はします。
高3の過去問解説などです。

弊塾では、高3生は夏ごろをメドに
1:2コースから(75分)から1:1コース(50分)へと切り替えます。

「1:1でないと授業が絶対に成り立たないから」です。

生徒さんは過去問を解いて丸つけ直しもした状態で授業に臨みます。

講師も事前に過去問を予習(もちろん予習給を支払って)してきてもらっている状況で
授業に入りますので、まさに臨戦体制です。

これぐらいのガチンコの場合だと、1:1しか成立しないと考えています。

そのため弊塾では、1:1コースを正式に設定し、指導単価を1.5倍にしています。
授業時間は75分→50分と2/3になるので、実質同料金です。

1:3や1:4が基本の個別指導塾さんでも、1:1対応をするのであれば
きちんと単価を上げたコースを作っておくことが重要だと思います。

繰り返しになりますが、1:2の設定で、あえて1:1の授業を行うのは言語道断です。

当日の欠席などを考慮しても、
1:2で実施する比率が最低でも全体の80%は超えていないと
人件費率はすぐに30%を超えてしまいますよ。

目先の生徒さんの力になってあげたい気持ちは分かりますが、
けっきょくそれが回りまわって自塾の経営を苦しめる形になり、
サービスの質は低下して生徒さん全体の不利益になってしまうのです。

いかがでしたでしょうか。

私は、人件費率28%以下というデッドラインを死守しています。
やはりそれぐらいしておかないと、利益が出ないからです。

学習塾は、良いサービスを提供しきちんと対価をいただく、
良いサービスを提供した講師にはきちんと対価を払う、
「ありがとう」と言っていただいてお支払いしていただくお月謝が
私たちのお給与となるといった、非常にわかりやすいシンプルな構造です。

もちろん、やみくもに授業料単価を上げれば良いというものでもありません。

弊塾の授業料値上げは、人件費率を適正にする考えで実施しています。
みなさんはどういった意図を持って授業料の値上げをされていますか?

個別指導塾において、人件費率は経営を左右すると言っても過言ではありません。

良い人財を得るためには、時給もそれなりにアップしていく必要があります。

それでも人件費率を適正内にするために、自塾でできることを考え続けてください。

弊塾内の生々しい情報まで曝け出しすぎて恥ずかしい気持ちもありますが(笑)、
少しでもみなさんの参考になれば幸いです!

【今回のまとめ】
・1:2の個別指導塾で、1:1のイレギュラーを作らない
・良いサービスを提供して、指導単価と講師時給の相互アップを

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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