【Vol.869(2025.02.07)】塾のルールを決めるとき、忘れてはいけないこと

当メルマガでも時折取り上げているテーマ、「塾のルール」。

あなたの教室でも、大なり小なり、
生徒さんが守るべき何らかのルールを設定されていることでしょう。

弊塾は比較的厳しくルールを設定して厳格に運営するスタンスですが、
意図的にゆるくしている塾さんもいらっしゃると思います。

どんなルールを、どのくらいの量、どのくらいの「強制力」を持って運営するかは、
塾のブランドや塾長の方針・教育観などにもよってきますので、
それぞれに判断が分かれるところです。

もちろん、何が正しいとか間違っているとかいう問題でもありません。

ただ「ルール」の存在や内容について、子どもたちや学校がどう捉えているか、
現代社会のトレンドを抑えておくことは役に立つと思います。

そこで、こんな記事を見つけましたのでご紹介させてください。
併せて、塾経営へのヒントを一緒に考えてみましょうj。

<校則の見直し「必要」が8割強 生徒指導提要改訂が影響か>※有料記事
https://www.kyobun.co.jp/article/2025012904

有料記事ですので、内容をざっくりとレジュメ的にまとめます。

・校長と生活指導担当の先生方に、アンケートを実施
・関東7都県にある高校のうち、校則の見直しについて8割超が「必要」と考えている
・実際に校則見直しを「実施している」「予定している」学校も8割以上
・生徒指導提要の改訂が強く影響していると思われる

一つ目のポイントは、子どもたち自身ではなく
先生方(学校)も「校則を変えたほうが良い」と思っていることだと感じました。

下着の色の指定や、地毛が茶色系なのに黒く髪を染めさせるなど、
人権侵害にも近い “ブラック校則”が社会問題にもなりましたが、
やはり先生方も客観的に考えて「それはおかしい」と思われているのでしょうね。

ちなみに、見直すべき校則で上位に入ったのは「制服のジェンダーレス化」、
「制服の夏服冬服切り替え時期の柔軟化」、「登下校時の服装」、
「スマホや携帯の使用に関すること」だそう。

傾向として共通して言えそうなのは、ルールで縛って押し付けるのではなく、
「生徒自身の主体性や判断に委ねる」要素が強いことではないでしょうか。

これが一般化していけば、現代の子どもたちの「ルール観」も
おそらくそのように変わっていきます。

つまり、かつての強権的な学校(先生や校則)のイメージは
弱まっていくことが予想されるわけですが、これが塾にも影響するかもしれません。

あまりに強引だったり、極端だったり、
時代錯誤が過ぎたりするようなルール設定を続けていると、

「学校と違って、塾は強制的にルールを押し付けてくる」
「学校と違って、塾の先生は生徒を信用してくれない(からルールで縛る)」

と思われてしまうかも……

とは言え逆に「学校が“ゆるい”から、塾では厳しくしてもらったほうが勉強に集中できていい」
と感じる生徒さんもいると思います。

ある程度、強制力があったほうが動きやすいタイプの子どもたちですね。

実際に弊塾にも、そう言ってくれる生徒さんは多数います。

もう一つのポイントは、「生徒指導提要の改定の影響」という部分です。

生徒指導提要とは、生徒指導における基本的な考え方や価値観、
方法論などを示したガイドブックのようなもの。

平成22年に始めて作成され、令和4年に改訂がなされました。

改定の要諦はいくつかあるのですが、
留意したいのは「児童生徒の権利の理解」という項目が新設されたことです。

生徒指導を実践する上で、子どもの権利条約の一般原則に沿って
「差別の禁止」「子どもの最善の利益の保障」「生命・生存・発達への権利」「意見表明権」への
理解が不可欠とされました。

つまり、校則や学校での生徒指導は、これらが根底になければいけないということです。

もっと言えば、そもそも「子どもの権利条約」は世界条約ですので、
校則とか学校とか関係なく、子どもであるというだけで保障されるべき権利なわけです。

だとすると、いくら塾が私企業であり、
塾長の価値観や方針によって個性が生まれるものだとしても、
それによって独自の塾内ルールを定めるのだとしても、
「子どもの権利」を無視することがあってはなりません。

注意したいのは「子どもの最善の利益の保障」「意見表明権」あたりでしょうか。

そのルールは、真に子どもたちの利益に適うものか(=塾の都合を押し付けていないか)、
子どもたちに意見を述べる機会を与えた上で作ったものか、
を客観的に見直してみる必要があると思います。

特に「意見表明権」については、そのような権利を子どもが有していることすら
知らない大人が多いことが大きな問題になっているそうです。

「つべこべ文句を言うな、黙って従え」は不適切であるというのが、
現代社会の価値観だと考えておきましょう。

もちろん、厳しいルールを設定してはいけないとか、
子どもたちにおもねらなくてはいけないという意味ではありません。

上述したように、子どもの権利およびその条約については、
社会的な周知徹底ができていないのが現状です。

しかし、この認知が広がり社会が変わってくれば、保護者さんや生徒さんの中にも
「この塾のルールは、子どもの権利を無視しているのでは?」と考える人も増えてきます。

そうなったとき、「いや、これがうちのルールなので」の一点張りでは、
塾として選ばれなくなる可能性もあるでしょう。

ルールを設定・運用するときは、子どもの主体性を信じつつ、
かつ子どもの権利が保障されているか、忘れないようにしていきたいところです。

【今回のまとめ】
・学校も、社会も、ルールに対する意識が変わりつつある
・塾でも、子どもの権利を意識したルール運営を

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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