ご存知の方も多いと思いますが、昨年に東洋大学と大東文化大学が、
いわゆる年内入試の形で、学力試験による選抜を行いました。
一応、規則では学力試験を実施できるのは2月1日以降となっており、
結果として文科省が激オコ状態、2大学を指導するという流れとなっています。
【文科省、東洋大と大東文化大を指導 学力試験の年内「前倒し」実施で 大学側反発】
https://www.sankei.com/article/20241216-72DF3CZVKNI4THZJJKWV5DEHNM
※こちらは、本件について大学ジャーナリストの石渡さんが書かれた良コラムです
【一般入試が実質年2回化へ~東洋大入試から始まる地殻変動】
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b7c4e96c4b564d67e3d7a860f379cc757b3e54cc
今回はこの一件を掘り下げて、
来年度の大学入試の形態がどうなるか考えてみたいと思います。
大きくは二つ、「年内入試(公募推薦)の実施の可否」と「1月に入試実施の可否」が
ポイントになりそうです。
まずは「年内入試(公募推薦による学科試験)の実施の可否」について。
端的にまとめると「大学入試実施要項では、学力試験は2月以降と明記してあるんだから、
年内に学力試験をするなんてとんでもない」ということになります。
ただ関西圏で生まれ育ち、今も関西に住んでいる私からすると本当にかわいそうな話で、
今回問題となった同様の試験スタイルは、関西では30年ほど前から習慣化していました。
実際に私も、28年前に公募推薦で受験・合格しました。
当時は公募推薦が始まったばかりで、「公募推薦、なにそれ?」という時代でしたが、
私はなんとか大学に合格したい(できるかぎり楽に)という一心で、
公募推薦の仕組みを調べあげて挑んだ思い出があります。
併願もできたので、志望学部を変えながら計6回くらい受験した記憶があります。
それぐらい関西では古い制度なのですが、30年間ずっと関東では浸透していませんでした。
5年くらい前に、関東圏を中心に活動する大学受験の専門家と話をしていたときも、
彼の中に「推薦=専願」みたいな概念がベースにあったせいか、
最初はなかなか話がかみ合わず、お互い「???」となった思い出があります(笑)。
ある種、関西の制度のほうが特異的だったかもしれません。
もし、今回の文科省の指導について関西圏の大学も従う流れになった場合、
受験生(新高3生)の受験プランに影響が出ることは必至です。
もちろん私たち塾や予備校、高校は私大受験戦略を立て直す必要があります。
例えば、公募推薦入試で第2志望の近畿大学を受験・合格しておき、
年明けの一般選抜で本命の関西学院大学に挑戦するという戦略が組めなくなります。
このやり方は本当に効果的で、公募推薦でどこかに合格できていれば、
12~1月の2ヶ月間で本命のみに絞った対策が可能です。
しかし、これができないとなると、本命もそれ以外の私大対策も
12~1月に並行して行う必要があり、本命の合格率が下がるでしょう。
こうしたことから、来年度の公募推薦がどうなるかは注視していく必要があります。
関西では、関関同立(関東でいうGMARCH)クラスの難関大学以外の多くの私大で、
公募推薦として学力選抜を行なっているのが現状です。
本当にどうなるのでしょうか……
素直に文科省の指導に従うのか、
違反しても罰則がないことにかこつけ強行実施するのか、注目したいところです。
次に、もうひとつのポイント、「1月に入試実施の可否」について。
年内入試(学力試験)実施の是非が強すぎて意外と盲点かもしれませんが、
こちらもとても深刻な話です。
【来年の大学入試、筆記試験は2月以降に…文科省のルール順守要請で高校側「受験のチャンス減る」】
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/daigakunyushi/20250125-OYT1T50084
関西では、早い大学では共通テストが終わった翌週から一般入試がスタートします。
1月から入試シーズンに突入しているのです。
しかしこれも関西特有と言えそうで、「学力試験は2月から」という原則に従うなら
これも本来ならアウトです。
具体的な例を2件挙げてみましょう。
弊塾で立てている受験計画の一例です。
本来はもう少し細かいですが、分かりやすいように表現しています。
<例1 本命:関西学院大学、第2志望群:近畿大学・甲南大学>
まず、3大学の一般選抜の日程をすべて羅列するとこのようになります。
・1月25日 近畿大学
・1月26日 近畿大学
・1月30日 甲南大学
・1月31日 甲南大学
・2月1日 関西学院大学・甲南大学
・2月2日 関西学院大学
・2月3日 関西学院大学
・2月4日 甲南大学
・2月5日 関西学院大学・甲南大学
・2月6日 関西学院大学
・2月7日 関西学院大学
これを元に受験プランを作った場合、ざっとこんな感じでしょうか。
・1月25日 近畿大学
・1月26日 近畿大学
・1月30日 甲南大学
・2月1日 関西学院大学
・2月2日 関西学院大学
・2月3日 関西学院大学
・2月5日 関西学院大学 or 甲南大学
・2月6日 関西学院大学
・2月7日 関西学院大学
生徒さんによっては甲南大学の日程を増やす場合もあります。
関西の塾さんはこういった形で作戦を立てられることが多いのではないでしょうか。
しかし、もし1月の学力試験実施もNGとなると、
近畿・甲南大学の入試が2月にスライドしてくるわけで、
本命の関西学院大学と日程がモロ被りするはずです。
そうなった場合、本命の関西学院大学を受験する回数を減らさざるを得ませんし、
4日連続や5日連続受験というハードな日程を組まざるを得なくなるでしょう。
個人的に、入試は3日連続が上限かと思います。
<例.2 関西の女子大に進学したい生徒さんの場合>
関西の女子大はびっくりするぐらい1月入試が多いです。
・1月22日 甲南女子大学
・1月23日 甲南女子大学
・1月24日 武庫川女子大学
・1月25日 武庫川女子大学
・1月26日 同志社女子大学・神戸女子大学
・1月27日 同志社女子大学・神戸女子大学
・1月28日 同志社女子大学
・1月29日 同志社女子大学・京都女子大学・神戸女学院大学
・1月30日 京都女子大学・神戸女学院大学
・1月31日 京都女子大学
・2月8日 神戸女子大学
・2月9日 甲南女子大学
・2月17日 神戸女学院大学
これで「1月入試はダメ!」と言われたときの混乱ぷりは、想像に難くありません。
今年度入試は新課程元年でいろいろな変更点もありましたが、
来年度は違った意味で大混乱になると考えています。
「公募推薦(での学力試験)ダメ、1月入試ダメ」となったら、
受験の仕組み自体がまったく違ったものになるでしょう。
正直なところ、個人的にはかなり戦々恐々としていますし、
できれば公募推薦も1月入試も従来通りOKとなるのが希望です。
文科省や各大学の動きに注目していきたいですね。
みなさんは、来年度の大学入試についてどうお考えですか?
【今回のまとめ】
・来年度、大学入試の仕組みが大幅に変わるかも
・文科省や各大学の動きに注目