いやー、いよいよ実現しそうですね!
何がって、全国の高校授業料無償化です。
<高校無償化、私立「45.7万円」引き上げ明記…自公維の合意で予算案の年度内成立に公算>
https://news.yahoo.co.jp/articles/45e3d35abf1bad05521169eb05c53cfd2431085a
大阪と東京でさきがけて無償化が導入された中で、
全国一律導入はもう少し先になるのではという見方もありましたが、
ここに来て一気に現実味を帯びてきました。
全国の保護者さんにとって、高校無償化は素直にありがたい話でしょう。
私も子を持つ親の身ですから、その気持ちはよく分かります。
一方で、塾経営者としてこのニュースを分析すると、
考えないといけない課題もたくさん見えてきます。
最も大きいのは、保護者(と言うか国民)の
教育に対する意識が変わることではないでしょうか。
「教育はタダである」という認識が、常識となっていくはずです。
そうなると、「お金を取って教育を提供する」塾は、
よりそのクオリティが問われることになるでしょう。
本来、教育そのものは費用対効果で考えるものではありませんし、
「これを学べばこうなれる」という、短絡的で成果主義的な発想は本質を歪めます。
教育の質と拠出したお金が比例する、もっとストレートに言えば
「良い教育を受けるためには、たくさんお金を出さなくてはいけない」というのも、
極めて危険な考え方です。
しかし、それは公教育(学校)の話。
塾運営が経済活動である以上、どんなに正論やキレイごとを並べても、
(賛否はさておき)「費用と成果」の視点からは逃れられないしょう。
つまり保護者さんは、当然のように
「これだけお金を出しているんだから、見合った成果を売ってちょうだい」と考えるはずで、
公教育が無償化することで、その志向はより強くなるのではないかと考えます。
「学校はタダなんだから、お金を払う以上、塾はそれ以上の教育価値を出すべき」
という考え方です。
そうなったとき、学校でもできること、あるいはその延長レベルにしかない教育サービスでは、
なかなか評価してもらえなくなるはずです。
ただ、だからこそ逆に、個人塾の尖った個性が
評価される時代にもなるのではないかと思います。
規制上、公教育ではできないことや、独自の教育理念、取り組みなどが
塾の強みとなっていくはずです。
また、ここで忘れてはいけないのは、
今回の無償化はあくまで「授業料無償化」であるということ。
授業料以外の費用は、普通に家庭の自己負担です。
例えば近年、留学や海外研修の類が盛んになってきています。
特に私立校はそのあたりのカリキュラムが充実していましたが、
今回の無償化で私立進学者は増えるでしょうから、
これに参加したい(させたい)と考える生徒さん(保護者さん)も比例して増えるでしょう。
おそらくここに、家庭の経済力の差も出てきます。
今でもすでにその傾向はありますが、
同じ学校に通っていても、留学に参加できる子とできない子が
より顕著に分かれていくはずです。
これと、先述した「お金を払ってでも受けたい教育」を絡めて考えると、
単なる教科学習やその授業ではなく、「経験」に価値を見出す人も増えるかもしれません。
これもまた、塾にとってはチャンスではないでしょうか。
塾だからできる貴重な(教育的)体験はないか、
アイデアをめぐらせてみるのも悪くないと思います。
例えば、探究学習のための経験や調査をサポート(伴走)するとか、
部活動ではできないスポーツや文化活動の場を提供(紹介)するとか、
学外のコンテストや大会への挑戦をアシストするとか、
セミナーやフィールドワークを企画してみるとか、
講師が自分の通っている大学を案内してくれるとか、何でもいいと思います。
塾が学校教育を補完する立場であると考えるなら、
学校ではカバーしきれない部分をサポートするという意味でも理に適っています。
問題があるとしたら「学力向上」「志望校合格」以外に、
保護者さんが対価としての価値を見出さない(その視点がない)ケースでしょうかね。
それでも、やり方がないわけではありません。
塾の理念やブランドとも関係してくることではありますが、
「成績向上や志望校合格は当たり前」という前提で、
プラスαの価値を示すことが大事と考えても良いですし、
成績・合格に特化して、そこで突き抜けたベネフィットを提供するのでも良いと思います。
いずれにせよ、保護者さんや生徒さんが
「お金を払うべき価値のある教育」をどう考えるか予測し、
そのニーズに合わせていくことが大事だと思います。
もちろん、そんなものにおもねらず、プロダクトアウトの発想で
「うちはこれを売りたいんだ!」と強いこだわりをもってブランディングするのもアリです。
学校教育の逆張りをすれば良いというものではないと思いますが、
「教育はタダ」の世界線で有償の教育が生き残るには
相当な価値・インセンティブが必要になるのは事実です。
いまの教育サービスを極めていくのか、新たな価値を提供していくのか、
今から少しずつでも考え始めておくことをおすすめします!
【今回のまとめ】
・「教育はタダ」が常識になる時代がくる
・そうなったとき、「有償の教育」の価値をどう作るか