2025年に実施された全国学力テストの結果が報じられ、
記述式問題の平均正答率の低さが注目されました。
<全国学力テストの結果公表 記述式問題で平均正答率低い傾向>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250714/k10014863071000.html
中でも私が気になったのは、小学校算数の記述問題における
「正答率23.3%、無回答率15.6%」というデータです。
約6人に1人が回答を「書くことすらしなかった(できなかった)」という現実は、
ちょっと衝撃ではないですか!?
単なる学力問題を超えて、深い構造的課題があるように思えます。
このような報道を受けると、塾としては
「やはり塾でも作文の練習をさせないと」「もっと記述式演習を増やそう」といった
方針を掲げてしまいがちです。
しかし、記述問題に対応できない背景には、
作文スキル以前の「論理を言語化する力」の不足が隠れています。
ここに注目してみると、塾のブランディング(強み)構成の上でも
大きなヒントになるかもしれません。
記述式問題と聞くと、すぐに「国語の要約」「感想文」「作文」といったイメージが浮かびます。
確かに、中学国語の問題では、島崎藤村の小説を題材にした記述式問題で、
正答率17.4%、無回答率27.7%となっていました。
しかし、今回の全国学力テストでは、
小学校算数の分数に関する記述問題の誤答・無回答も目立っています。
毎日新聞の記事によると、文科省も
「文章の構成などについて根拠を明確にして考えること」や
「考えが伝わるように根拠を明確にして書くこと」に課題があると指摘しているそうです。
つまり、単なる表現力の問題だけではなく、論理的に考えたことを、
順を追って他者に伝える力に課題があるということでしょう。
こうした力は作文とは異なり、主観的な表現や表現力の豊かさではなく、
因果関係の把握・論理構造の明示・情報の整理能力といった
ロジカルシンキングの能力が問われています。
例えば「5個のリンゴを3人で分けるとき、なぜ1人分は5÷3個になるのか」を
説明させるような問題があったとしましょう。
実際に、あなたもちょっと考えてみてください。
これは、計算力よりも数学的思考を言語で整理する力が鍵となりますよね。
こうしたスキルは、国語の授業や読書経験だけでは十分に育まれません。
では、記述式問題を白紙で提出する生徒さんは、なぜ「書かない」のでしょうか。
その背景には主に2つの要因が考えられます。
(1)論理の構造が理解できていない
答えの理由を説明しようとしても、自分がどのように考えたのかを
順序立てて再構築できない可能性があります。
「なんとなくこうだと思ったけど、言葉にできない」「合っているかどうか不安で書けない」
といった認知のあいまいさが、手を止めさせるのでしょう。
(2)書く経験・訓練が圧倒的に不足している
「どう書き始めればいいかわからない」と感じる生徒さんの多くは、
書くためのフレームや型を知らないケースが考えられます。
つまり、ロジックは断片的に理解できていても、
それを文章に落とし込む技術が習得できていない状態です。
こうした生徒さんに、いきなり「自由に説明してごらん」と投げかけてもほぼ意味がありません。
必要なのは、書き始めの型を与える、順番に整理するテンプレートを用意するなど、
言語化の橋渡しをすることではないでしょうか。
実はこの「論理の言語化」は、国語よりも数学・理科が本領を発揮できる領域でもあります。
感覚的な作文や情緒的な表現ではなく、「事実→理由→結論」という論理構造は、
まさに数学の思考様式そのものだからです。
塾でも、そうしたアプローチをしてみてはいかがでしょうか。
例えば、次のようなトレーニングが考えられます。
・計算過程を言葉で説明させる(「どうしてこの式を使ったの?」)
・誤答例を見せて、「なぜその考え方が間違っているか」を説明させる
・同じ問題に複数の解法がある場合、「なぜこの方法を選んだか」を文章で比較する
このような訓練を通じて、生徒さんは「論理を言語にする技術」を獲得します。
これは単なる学力向上にとどまらず、AI時代においても代替されにくい
「考える力」「伝える力」を育んでいくはずです。
そしてここに、中小規模の個別指導塾が取れる戦略も眠っていると感じます。
作文や感想文を中心とした国語塾ではなく、
「思考を言語化するロジカルスキル」をコンテンツ(強み)の一つとして打ち出すことです。
例えば、こんなことができるかもしれません。
・「算数・数学で育てる言語力講座」
・「理科の実験レポート添削トレーニング」
・「誤答説明トレーニングによるメタ認知強化コース」
白紙回答をする子どもたちを「やる気がない」と片付けてしまうのは簡単です。
しかし、その多くは「考えてはいるけれど、どう書けばいいか分からない」だけなのです。
つまり、「書けない」のではなく、「書き始める助け」が足りないだけとも言えます。
そこに寄り添い、ロジックのフレームを与え、言語化の筋道を示すことができれば、
きっとそれは塾としての強みになるはず。
「書けるようにする塾」というブランドもアリかもしれませんね。
【今回のまとめ】
・記述式問題の正答率が低くなっている。白紙回答も目立った
・なぜ「書けない」のかに着目したサービス提供を考える