先日、何度も首肯せずにはいられないこんな記事を見つけました。
お客を選ばず誰でもかれでも売ろうとし、値下げ戦略に入るのは結局自分の首を絞めるという内容です。
【経営を14年やってきて、これ本当に大切だなぁと思うのは「売上をあげる」よりも「売らない人を決める」でした】
https://togetter.com/li/1924060
みなさんの教室では、
「来ていただきたい層(範囲)の生徒さんや保護者さん」が明確になっていますでしょうか。
それとも「来るもの拒まず」で、とにかく受け入れる方針でしょうか。
どちらが正解・不正解というわけでもありません。
大切なのは、塾長の考え(塾の方針や理念)と実際の集客ポリシー、
あるいは行動が合致しているかです。
例えば「学力トップ層のみ受け入れる進学塾」。
なんてシンプルでわかりやすい表現なんでしょう(笑)。
保護者さんも「うちの子が対象だ」or「うちの子には無理だわ」のどちらかなので、
あまり判断に困らないと思います。
弊塾は「明確に顧客層を設定する派」です。
具体的には、
中学生:おとなしめで頑張る気持ちを持っている生徒さんと気長に見守れる保護者さん
高校生:大学受験に向けて自塾の方針に賛同していただける生徒さんと保護者さん
を受け入れるように心がけています。
チラシやHPでもそういった内容を告知しておりますし、
新規入会面談でも伝えて確認・合意するようにしています。
この方針に賛同いただけない、あるいは弊塾に「合わない」と判断した場合には、
申し訳ないですが入塾をお断りするのが基本です。
しかし、弊塾も開校当初は「ほぼ誰でもウエルカム」でした。
立ち上げたばかりで経営が軌道に乗るか分からない不安と、
そのためには「選んでなんていられない」という気持ちが先行していたからです。
また、私や教室長も若く、週6勤務&ひたすら授業というハードスケジュールでも、
フルパワーで対応できる体力があったことも要因になっていたでしょう。
授業料単価も地域内比較で最も安かったことも手伝って、問い合わせも多く、
そのぶん、さまざまな価値観をお持ちの生徒さんや保護者と面談した記憶があります。
とにかく早く軌道に乗せたい一心でしたので、
ちょっと感覚が合わない生徒さんや保護者さんでも
「入塾してもらえれば後はなんとかなる」という思いでした。
立ち上げ時は仕方ない面もあるとは言え、
今思えば、お金にコントロールされていた時代だったなあと反省する部分もあります。
まあそれでも、ほとんどが前向きで頑張る生徒さんや、
それを応援する保護者さんばかりではありました。
しかし年に1〜2組は、弊塾では対応しきれない人たちがいらしたことも事実です。
その対応に取られる時間も、内容も、正直なところしんどかったです。
例えば、明らかにやる気がないのに
保護者さんの意向のみで入塾させられたにわかヤンキーの生徒さん。
遅刻や欠席は当たり前で、授業中も大きな声で勉強とは関係ない話をする始末。
あまりにひどいので退塾してもらいましたが、
今度はヤンキー仲間を引き連れて教室の前をたむろする嫌がらせつき(笑)。
おかげで、当時の塾の評判も下がってしましました。
他にも、週1回の通塾に対して「5教科見てほしい」「それが無理なら、補習してほしい」と
無茶な要望をしてこられる保護者さんの対応にも苦慮しました。
目先の生徒数や売上に目がくらみ、自分も苦しむことになりましたし、
結果的には他がおろそかになり、教室全体の満足度を下げる結果となりました。
また、当時から大学受験生はは毎日自習にくるルールにしているのですが、
約束を守らない生徒さんもいるなど、フラストレーションもよくたまっていましたね。
本来ならば、新規面談の時点で
「本人に頑張る意思が見えないので、自塾では対応できない」
「週1回の通塾で5教科サポートは無理です」
「高3生になると毎日通塾です。それが無理なら他の塾さんへ行かれてください」
と言うべきだったのです。
つまり、こちらの要望に合わない生徒さんや保護者さんが悪いのではなく、
そうと分かっていて受け入れた私に問題があるんですよね。
一般的に、入塾とは「契約行為」です。
その契約とは「自塾にお任せください。何とかします」という約束なのですから、
約束を果たせないと分かっていて受け入れるほうが無責任で悪質です。
そして何より、自分で自分の首を絞めることになります。
やはり目先の数字にとらわれず、自塾のサービスで貢献することができる人を
お客さまに選ぶべきでしょう。
うどん屋さんが、ラーメンを食べたいと思っている客を受け入れてはいけないのです。
身に染みて分かりました。
当時は、ありがたい話で年間毎年80〜100件ほどのお問合せをいただいていましたが、
先着順で対応していたのも良くなかったです。
結果、受け入れるべき人を受け入れられず、
受け入れるべきでない人を受け入れることになっていました。
どれだけたくさんのお問合せをいただいても、その人たちのお役に立てなければ
単に「問い合わせが多い塾」という自己満足に浸るだけですものね。
そうした状況を避けるためにも、少しずつスタンスを変えていきました。
変化させていった部分は二つあり、一つは授業料改定です。
値上げをすることで需要と供給のバランスを整えるためです。
当時はこのバランスが崩れており、
たくさんのお問合せをいただいたにも関わらず、お断りするケースが多発していたため、
「とりあえず安いから」というニーズでの問い合わせをなくすためです。
たしかに問い合わせの母数は減りましたが、
多少高くても「我が子を通わせる価値がある」と思っていただけるご家庭を選択した形です。
もう一つはチラシとHPの内容です。
それまでは「誰でも対応します!」「何でもやります!」的な見せ方でしたが、改定後は
「通知表で『1』がついたことがある場合は入塾をお断りします」
「お子さまに入塾の意思がない場合は入塾をお断りします」など方針を明確に打ち出し、
「ご理解いただける方のみお問合せください」というスタンスに変えていきました。
また、弊塾には小学生が1名しかいません。
その1名も、通塾している中学生の妹さんを特別にお預かりしているだけです。
以前に当メルマガでもご紹介しましたが、弊塾高校生への対応を充実させるために
小学生の募集を行っていません。
小学生がたくさんいて賑やかに走り回っているような教室もいいですが、
それは大学受験に向けて真剣に頑張ろうとしている高校生が勉強するには
集中できるいい雰囲気とは言えないからです。
この方針にしてからは、新中1生が増えにくくなりましたが、
高校生の問合せや入塾は安定するようになりました。
小学生も増やしたいし、高校生も増やしたいというのは、
15〜20坪ぐらいの個人塾ではちょっと都合のいい話ですよね(笑)。
ただ、私の知人の中に、幼児〜高校生までが在籍する総合教育を
とても上手に展開されている塾さんが1軒だけあります。
そこは社員さんが複数名いて、きちんと役割分担されており、
3階建てで1フロア50坪ぐらいある環境で、もはや個人塾の領域を超えています(笑)。
人と場所をしっかり確保することができれば、こうした縦展開も可能だと思いますが、
塾長1名と大学生数名という形の個人塾ではちょっと厳しいような気がしますね。
こうした縦展開(年齢・学年別)と横展開(学力別)に加え、
生徒さんの性格や特性、保護者さんの教育観なども踏まえ、
自塾(塾長)がどういった人たちと「向き合っていきたいか」を明確にしていくことも、
一つのカギになると思います。
貴塾が受け入れられるのがどういった層(範囲)なのか改めて考えてみるのもいいですし、
決まっているのなら、現状の生徒層が合致しているのか検証してみるのもいいでしょう。
もちろん、対応できる生徒さんや保護者さんの幅を広げる努力は必要です。
自己研鑽を怠って「できることしかやらない」と胡坐をかくのと、
選択と集中を行うことは似ているようで違います。
前者は現状維持を是とする考え方ですので、発展もありません。
私も気をつけなければ!
【今回のまとめ】
・勇気をもって「お客を選ぶ」視点を
・受け入れ可能層を広げる努力も忘れずに