先日、下記のようなテーマでお届けしました。
【社員不在時に、生徒が教室を自由に出入りするメリット・デメリット(Vol.820)】
https://r-partners.jp/1232/
軽くおさらいしてみます。
コロナ禍の影響も大きかったと思いますが、さまざまな業界で何かと無人化が進む中で、
学習塾で同様のサービスをイメージするとどうなるか。
最初に頭に浮かんだのが、
「社員不在時でもスマートロック(電子錠)で生徒さんが自習室を自由に利用する」です。
それにはもちろんメリットもデメリットもあって、ざっとこんな感じでしょうか。
【メリット】
(1)社員(塾長)の出社日数や拘束時間が減る
(2)生徒さんの勉強時間がかなり増える
(3)土日や年末年始、お盆休みなどの休校期間も利用できる
【デメリット】
(1)防犯面の不安
(2)休みの日も気が気でなく、休んでいる気になれない
(3)管理者がいないと、自習室の質が低下する
これらを総合的に考えた結果、私の結論としては
「スタッフ不在時の利用は基本的にナシ、色々と条件付きで何とかアリ」という感じです。
今回はこの「色々と条件付き」に関して具体的にお伝えしてみたいと思います。
「デメリットばかりだからやらない」だけだと面白くありませんよね。
どこまで徹底すればアリになるかをお伝えします。
前回の記事で、みなさんにも「自塾なら、こういうやり方でアリにする」という方法を
考えてみてくださいと宿題を出させていただきましたが、いかがでしたか?
またみなさんなりのアイデアをお聞かせいただけると嬉しいです。
では、いってみましょう!
まずは、スマートロックの使用を「入室のみ使用可」とします。
「退室は使用不可」です。
例えば弊塾の場合、夏期講習中は10:00から開校しています。
それを「社員不在の7:00~9:00の間のみ使用可能」とします。
22:00に授業が終わりますが、それ以降(社員の帰宅後)に残って勉強するのは不可です。
午前中の早い時間に限って使用可能ということですね。
もう少し細かいルールを想定するなら、最初に入室した生徒さんが
「警備のセキュリティ解除」「電気をつける」「エアコンをつける」「扇風機を回す」
「入退室システムを立ち上げる」ことができるように、マニュアルを作ることが必要でしょう。
エアコンが作動しない、照明がチカチカしているなど、
マニュアル内の項目で何かトラブルが起きた場合は
すぐに教室LINEへ連絡してもらうようにします。
また弊塾は、基本的に土・日・祝も常に開校していますので、
9月以降に学校が始まってからでも、「土・日・祝に限り、7:00~9:00の間のみ使用可能」、
加えて、創立記念日などで平日に学校が休みになる場合などは、
事前申請があった場合に限り使用可能とします。
1月1日は完全休校にしていますので、この日に関しては自習室利用も不可です。
戸締りをする社員がいないからです。
やはりそこまですべて生徒さんに任せるのはリスクがあると思いまし、
しかも夜は暗くなりますので、それもネガティブ要素ですね。
そして、対象者は「高3限定(希望者のみ)」にします。
中3や非受験生は不可です。
やはり中3生はまだ心身ともに幼い場合がありますし、
さすがにすべて信用して任せるのは早いなかという判断です。
そもそも教室が開いている時間は十分に確保してあるので、
その枠の中でフルに自習すればいいと考えています。
高3で使いたい生徒さんは、
「1週間のうち、週4回以上は必ずスマートロックを使用する時間帯に通塾する」
というルールにしますかね。
週1〜2回程度しか使わないのであれば気持ちも中途半端になるので、
通常どおり毎日10:00に来れば十分なはず。
「毎日、早朝に教室へ来て勉強する」という覚悟を決められる人のみが対象です。
生徒さんには、誓約書も書いてもらいます。
契約書レベルで、司法書士にリーガルチェックしてもらって厳格な文書を作ります。
例えば「教室備品に一切触らない」「時間外のスマートロック使用は不可」
「ルールを破った際には即退塾」など、かなりきめ細かく設定し、
本人だけでなく保護者さんにも署名・捺印してもらうところまでやる必要があるでしょう。
何と言っても「契約」ですので。
教室内に、防犯カメラをくまなく設置することも必須です。
死角がないように複数台設置し、
それを塾長やオーナーがライブで確認できる仕組みを構築します。
トイレ付近にも設置し、いたずらや犯罪防止の抑止力につなげることも欠かせません。
また、そのライブ映像を教室内のモニターに映し出し
「常に見られている」ということを意識してもらえるように「見える化」します。
さらに、警備セキュリティの加入も必須です。
弊塾は大手警備会社と契約しており、
いざとなったら駆けつけてもらえるような体制は整えています。
入口に警備会社のシールを貼ることもできるので、抑止力にもなるはずです。
弊塾は出入口が2ヶ所あり、ふだん生徒さんが往来する正面入り口は、
シャッターが降ろすことができますので、
正規の時間外は常にシャッターを下ろした状態にします。
宅配業者さんや郵便屋さんが来たとき
「まだ教室には誰もいない」(ように見える)状況を作るためです。
そして、もう一方の入り口にスマートロックを設置し、そこから出入りするようにします。
生徒ファイルや入会申込書など、個人情報が掲載されているものは
鍵付きロッカーにしまい、生徒さんがさわれないようにしましょう。
社員のデスクの引き出しなども同様です。
しっかり施錠し、生徒さんに魔が刺さないようにします。
……ざっとこんな感じです。
思いつくまま挙げてみましたが、いかがでしたでしょうか。
実際にやるとなったら、相当ハードルが高くなりますね(笑)。
それでもやるのであれば、高3メンバーが闘志をメラメラとみなぎらせて
「もっと勉強時間を増やしたい!」という要望がとても強い場合でしょうか。
社員不在の空間を作ること自体がリスクになりますので、
そのリスク以上のリターンを感じられないのなら、私は躊躇してしまいます。
弊塾の場合は土日祝も常に開校しているので、
社員が教室に滞在している時間帯はもともと多いほうです。
もし、日祝は休校にしている塾さんであれば、
「使用不可」にするのか、「夜に社員が出社して戸締り対応する」のか、
「生徒さんに戸締りしてもらうのか」など、考える必要もあります。
個人的には、信頼できるスタッフを雇って、
土日祝は教室に常駐してもらう仕組みが一番安心だとは思います。
生徒さん自身がスマートロックで、社員不在の教室を利用するのは、
大手塾さんではなかなか実践できない仕組みです。
個人塾や中小塾にとっては差別化になると思いますし、
生徒さんの勉強時間が飛躍的に増えることで偏差値も上がりやすい利点もあります。
一方で、デメリットや注意点など、リスクも潜在していることを忘れてはいけません。
しっかり考えシュミレーションした上で、
「自塾はこうする!」といった方針を作っていきたいところですね。
対策をしっかりした上でという条件付きですが、
とりあえず試しに1年やってみるという感じでもいいかもしれません。
【今回のまとめ】
・社員不在時に生徒さんが自習室を使う場合、かなりの配慮が必要
・メリットよりデメリットが大きいのであれば、やらない選択肢も大いにあり