【Vol.973(2026.01.15)】自由が欲しいが、責任は取りたくない子どもたち

博報堂教育財団こども研究所が実施した調査で、興味深い結果が出ていました。
子どもたちが「おとな」に対してどんな印象を抱いているのか、意識調査したものです。

<「おとな」に関する意識調査 おとなをみて、どう思う?>
https://kodomoken.hakuhodofoundation.or.jp/topics/2134/

これによると、早く「おとな」になりたいと思っている小中学生は54.9%。
そして「おとなになったらやってみたいこと」として上位に上がった項目は以下の通り。

1位:自由にスマホを使う
2位:好きなものをぜんぶ買う
3位:夜更かしをする
4位:車やバイクを運転する
5位:好きなだけゲームをする

ほかにも「好きなだけ動画をみる」「好きなだけおかしを食べる」
「好きなだけマンガやアニメをみる」などの声も多く出ていたようです。

ここから顕著に分かるのは、子どもたちは何かにつけ
「自分で決めたい(決定権を持ちたい)」と思っているということですよね。

このような事例を出すと、やはり多くの塾関係者が、
「学習にも自律性が大事だ」と考えると思います。

生徒さん自身が目標を立て、自分で考え、主体的に学べるなら、
それは理想的な学習環境だと言えるでしょう。

ただ、今回の調査結果を読むと、その「自律性」という言葉を、
私たちは少し単純に扱いすぎてきたのではないか? という違和感も覚えました。

調査では、半数以上の子どもが「早くおとなになりたい」と答え、
その理由として「自由に(好きなように)○○したい」が並びます。

これを見て、「やはり子どもは自由を求めている」
「だから自己決定感を大切にした学習設計が必要だ」とまとめるのは自然です。

でも、本当にそれだけなのか、とも思うんですよ。

ここで注目したいのは、子どもたちが求めている「自由」の中身です。

自由にスマホを使う、自由にお金を使う、自由に時間を使う……

これらは一見、主体的な意思決定の表れのように見えますが、
同時に、「その結果に責任を負わなくてよい自由」への強い憧れも感じられます。

好きなだけ動画を見ても叱られない、
夜更かししても翌日の不調を自分で引き受けなくていい、などです。

つまり、子どもたちは「決めたい」のと同時に、「決めた結果を背負うこと」からは
距離を取りたいのではないかという仮説が成り立つと思うんですよね。

心理学で有名な「自己決定理論」でも、自律性=「選べること」ではなく、
選択した行為を自分のものとして引き受けられる感覚が重要だとされています。

一方で、選択肢が多すぎると人は不安になり、判断を先送りしたり、
他者に委ねたりすることも分かっています。

子どもにとっての「自由」は、安心がセットでなければ成立しません。

ここを見誤ると、「選ばせているつもりが、実は放置しているだけ」に
なってしまう可能性があると思います。

その前提で、「学習における自律性」を考えてみましょう。
大きくは三つに分けられると思います。

(1)「何をやるかを決める力」
(2)「決めたことをやり切る力」
(3)「結果を振り返り次に生かす力」

です。

しかし、「自由」「自律学習」という言葉だけにとらわれすぎると、
(1)の「何をやるかを決める力」ばかりに意識が向いてしまいます。

「今日は何をやる?」「どの教材にする?」と聞くこと自体は悪くありませんが、
子どもたちが本当に弱いのは(2)と(3)ですよね。

何をやるか決めたはいいけれど続かない、
結果が出なかったときに理由を考えずそのままになってしまう……

ここにこそ、塾として力を入れる余地があり、
個別指導塾の非常に独特な立場を形成すると思います。

学校ほど制度的ではなく、家庭ほど感情的にも近すぎないからです。

だからこそ、子どもの意思決定に「同伴」することができるのではないでしょうか。

学習計画を生徒さん自身に立てさせることは大切ですが、
それを「自分で決めたんだから頑張ろう」だけで終わらせては片手落ちです。

なぜそう決めたのかを言語化させ、
途中でうまくいかなかったときには「変えてもいい」と伝え、
その際に必ず振り返りを行うところまで踏み込むべきだと思います。

自由を与えるのではなく、決定を一緒に引き受けるイメージですね。
この姿勢が、結果的に自律性を育てるはずです。

これは教育論であると同時に、経営論でもあります。

「面倒見がよいです」「手取り足取り教えます」という塾は確かに分かりやすいですが、
それは多くの塾さんが掲げているキーワードで、差別化は難しいでしょう。

一方で、「自立を促しています」という言葉は便利ですが、具体性に欠けます。

その中間に、「意思決定を一緒に背負う塾」というポジションを置くのはいかがでしょうか。

保護者さんに対しても、「点数だけでなく、計画を修正する力や振り返る力を育てています」と
説明できれば、納得感は高まりますよね。

今回の調査結果は、「子どもは自由を求めている」という単純な話ではありません。

自由に憧れながら、自由を扱う力はまだ発展途上にある子どもたちに、
どう伴走すべきかという大きなヒントになっていると思います。

教えるだけでも、管理するだけでもなく、「決める練習」を安全に行える場所であること。
自律性を便利なバズワードとして掲げるだけでなく、その未完成さごと引き受けること。

そこに、個別指導塾の本質的な価値があるのではないでしょうか。

【今回のまとめ】
・「自律」とは何か、もう少し深く考えてみよう
・生徒さんの意思決定を、塾も一緒に背負ってあげる

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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