【Vol.979(2026.02.06)】学習内容のバランスが、学校ごとに代わる時代へ

2030年度以降の次期学習指導要領に関する議論が進む中、
キーワードとなる10の教育用語を紹介している記事を見ました。

<あなたはいくつ知っている? 次期学習指導要領のキーワード10選>※有料記事
https://www.kyobun.co.jp/article/2026020302

ちなみに、記事内で紹介されている10のキーワードはこちら。
みなさんは、このうちいくつについて説明ができるでしょうか?

1.調整授業時数制度、2.高次の資質・能力、3.表形式化、4.デジタル学習指導要領、
5.学習評価、6.学習の自己調整、7.情報・技術科/情報の領域、8.特別の教育課程、
9.重層的な指導・支援、10.社会モデル

公教育の方向性や改革について常に強いアンテナを張っている方でない限り、
正直、聞きなれない言葉も多いのではないかと思いかもしれませんね。

しかし、学習指導要領のあり方は、塾の方向性にも大きな影響を与えるもの。
そこで、これらのキーワードの中から今回取り上げてみたいのが「調整授業時数制度」です。

「調整授業時数制度」とは、簡単に言えば、
学校の判断で一部の教科の授業時間を増やしたり減らしたりできる仕組みのこと。

減らした分は、学習支援や研修などに充てることもできるそうです。

学校の裁量を広げ、教育の自由度を高める前向きな改革だと思いますが、
地域の学習塾にもじんわりと変化をもたらすかもしれません。

調整授業時数制度の本質は、「すべての学校が同じ時間割・同じ重点で学ぶ」という
前提を手放す点にあります。

学校独自の重点分野や探究、学習支援などに振り向けられるようになることで、
学校ごとの教育課程の個性は、これまで以上に鮮明になるでしょう。

どの分野に力を入れ、どの分野にはあえて時間を割かないのかという判断が、
学校ごとに異なってくるということです。

言い方を変えれば、限られた時間の中で、
学校が「すべてを等しく教え切る」ことを制度的に諦める、という意味でもあります。

問題は、その「諦めた部分」を誰が、どのように引き受けるのかです。

おそらく学習塾業界も、ここにビジネスチャンスを見出すのではないでしょうか。

学校で扱う時間が減った教科や単元を補習する、
あるいは先取りで対応するという発想です。

ただし、その発想にはもう少し踏み込んだ注意が必要だと思います。

なぜなら、調整授業時数制度のもとでは、学校ごとに「削られた部分」が異なるからです。

A中学校では英語の表現活動に力を入れる一方で文法演習が減るかもしれませんし、
B中学校では理数探究を厚くする代わりに、社会科が整理されるかもしれません。

同じ学年であっても、その生徒さんがどの学校に通っているかによって
学びの「重心」がずれてくる可能性があります。

このとき塾が、全国一律のカリキュラム感覚や、
汎用的な「成績アップモデル」に依存していると、
保護者さんや生徒さんとのズレを起こしやすくなるでしょう。

一方で、地域密着型の個別指導塾が持つ強みは、むしろここで際立ちます。

近隣の学校がどの分野に力を入れており、
どこに余白が生まれているのかを把握して、小回りを利かせやすいからです。

ただし、足りない部分を「埋める」ばかりの発想も危険をはらみます。
重要なのは、その余白をすべて塾が埋めようとしないことです。

塾の役割は、学校の不足分を補完することばかりではありません。

むしろ、「この部分は学校に委ね、この部分を塾が一緒に、かつ個別に設計する」という
取捨選択を、保護者さんと共有できるかどうかが問われることになると思います。

調整授業時数制度では、学校側が意図的に「扱わない部分」を作るため、
それをすべて塾が回収しようとすると、学校の教育設計と衝突したり、
「塾に行っているのに学校とズレている」という違和感を抱かせたりしかねません。

学校が減らした部分を補うばかりでなく、
逆に増やした部分を塾でもさらに強化するという考え方もできるかもしれませんね。

そのほうが、評定などの向上には合理的だとも言えます。

また、裁量的な時間の一部は、
学習支援や学習の自己調整を支える活動に充てられることも想定されています。

これは、学習者が目標設定や振り返りを行う力を育てる方向性です。

ここでも塾は、「教える量」を増やすのではなく、
「学び方を再設計する場」として関われるかが分かれ道になります。

例えば、学校での学習内容をそのままなぞるのではなく、
「なぜこの学校は今、この単元に時間をかけているのか」
「、なぜここは薄く扱われているのか」
などを生徒さんと一緒に整理するだけでも、学習の質は大きく変わるはず。

これは授業時間を増やさなくてもできる支援であり、
個別指導塾だからこそ可能な関わりだと思います。

また、塾に行くと手取り足取り教えてくれるのは、一見手厚いサービスとも言えますが、
公教育が「学習の自己調整力」を伸ばそうとしているのに、
塾が過保護になりすぎて、その力の伸長の阻害になってしまっては本末転倒です。

ここからも、「塾が何を担うのか・担わないのか」を保護者さんや生徒さんと共有し、
しっかり言語化しておいたほうがよいと言えると思います。

地域の学校の教育課程を読み解き、
その文脈の中で最適な関わり方を設計できることが、生き残りのカギとなりそうです。

【今回のまとめ】
・学校によって学習内容の力点が違う時代がくる
・かと言って、足りない部分を補うだけの発想は危険

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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