【Vol.802(2024.06.14)】共同親権導入で、学習塾はどう変わる?

かねてより喧々諤々で意見が飛び交ってきた「共同親権」ですが、
ついに日本でも法案が可決されましたね。

<共同親権とは>
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240417d.html

両親が離婚した場合、子どもの親権を誰が持つのかという議論ですが、
日本では長らく、父母どちらか一方が親権を持つという
「単独親権」の制度下で運用されてきました。

諸外国を見ると共同親権のほうが一般的ではありますが、
それぞれにメリットやデメリットがありますが、詳しくは上記リンクをご覧ください。

共同親権に関する決まりを盛り込んだ改正民法は、
2026年度(つまり2年後)までに運用が始まる見込みです。

こうなった場合、学習塾運営にどんな影響が及ぶでしょうか。
一緒に仮説を立てつつ、今のうちに取れる対策は始めておきましょう!

考えられるのは、このあたりでしょうか。

(1)入塾などの契約ごと(書面の取り交わしなど)
(2)保護者さんとのコミュニケーション
(3)生徒さんの生活リズムの変化

(1)入塾などの契約ごと(書面の取り交わしなど)

単独親権下では、親権を持つ親がサインすればそれで良かったですが、
共同親権になると、子どもの教育に関する決定は両親双方の同意が必要になります。

入塾に関する書面に両親の署名が必要になるケースや、
契約内容の変更や重要な連絡事項について
双方の親に通知できる体制づくりを求められるケースが発生するかもしれません。

母親が入塾を決めてきて、
父親が「そんなの聞いてないぞ!」なんてパターンもありそうですよね。

どちからが夏期講習を申し込んだら、
もう一方が「そんな高い費用は用意できない!」と言い出す場面もあり得ます。

そもそも共同親権下では、教育費をどちらが負担(分担)するのかという問題もありますから、
塾側は支払い方法や財務管理の仕組みの見直しを迫られるかもしれません。

請求書などの送付先も、両親それぞれに対応するなどの配慮も必要です。

現在は教室管理システムやSNS(LINEなど)を使って
保護者さんと連絡を取っている塾さんが多いでしょうが、
このアカウント登録なども両親にそれぞれ行ってもらう必要が出てくる可能性があります。

(2)保護者さんとのコミュニケーション

上記の業務連絡等をどうするかという問題とも関連してきますが、
共同親権下では両親双方が子どもの教育に積極的に関与する形となるため、
塾としては双方とより緊密なコミュニケーションを築く必要があるでしょう。

生徒さんの様子などの現状報告も両親それぞれに行い、
面談の際もどちらが出席するか、しっかりと意思確認をしなければなりません。

当然、進路や大枠の教育方針についても、父母で意見や要求が異なる場合があります。

一方が勉強や成績に強いこだわりがあり、
もう一方はもっとおおらかに学ばせたいなんてパターンの食い違いは
離婚していようがいまいが発生することですが、
共同親権下では双方個別にその確認が必要ですので、工数的な手間も増えます。

両親の間で意見の相違があった場合、
塾としては「お二人で話し合って決めてください」と言うしかない気もしますが、
こちらも巻き込まれてしまうといろいろ大変ですよね(苦笑)。

(3)生徒さんの生活リズムの変化

共同親権により、子ども(生徒さん)は
双方の親の家を日常的に行き来することが増えると予測されます。

今日はお父さんの家に泊まる、今週はお母さんの家で過ごす、などです。

そうなった場合、塾は授業スケジュールに柔軟性が求められることになります。

「来月はずっと(通塾するには遠い)お父さんの家で暮らすから、塾には来られません」
と言われても、通塾を強制することはできませんしね。

振り替え授業やオンライン対応ほか、
欠席時のフォローアップ体制も強化する必要があるでしょう。

また、子どもたちは共同親権下の新しい生活環境に慣れず、
メンタルの負担を抱えてしまうことも十分に想定できます。

これまで以上に生徒さんの表情やしぐさに目を配り、配慮していかなければなりません。

離婚は極めてプライベートな問題であり、
塾がどこまで踏み込んで関与するかは判断に迷うところですが、
忘れてはならないのは子どもの利益を最優先することです。

迷ったら「それは子どものためになっているか」に立ち返って
考えると良いのではないかと思います。

【今回のまとめ】
・共同親権が運用されたときへの対応を準備しておこう
・判断に迷ったら、子どもの利益を最優先に考える

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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