私たちは学習塾を運営する中で、さまざまなタイプの生徒さんに接しています。
毎日の習慣としてしっかり勉強に取り組む生徒さんもいれば、
宿題をやってこなかったり、学習意欲が低かったり、
勉強の習慣がつけるところから取り組むべき生徒さんもいます。
もちろんみなさんも、そうした十人十色の生徒さんたちに接し、
日々ああでもない、こうでもないと腐心しておられることでしょう。
そのアプローチ法について、むしろ私がご教授いただきたいくらいです!
しかし、同じ人間なのになぜここまで行動が違うものなんでしょうね。
もちろんそれぞれに持っている能力や特性の違いはあると思いますが、
最近は、それとは別に「動機の差」も大きいのではないかと思うようになりました。
それは、ある実体験からです。
私は2ヶ月ほど前から、英語の勉強を毎日するようになりました。
知人にフィリピン人の英会話講師を紹介していただき、
オンライン英会話も毎週続けています。
中高生のときには筋金入りの英語嫌いだった私が
まさか自主的に英語を勉強するようになるとは、
当時の担任の先生も腰を抜かしているでしょうね(笑)。
正直、かなりきついのですが、なぜそれでも毎日続けていることができるかというと、
「日本に来た外国人観光客に対して、京都を案内するビジネスをやってみたいから」
という強い思いがあるからです。
長年京都に住んでいましたので、
京都のことはまあまあわかっているつもりです(ディープなエリアも)。
京都の文化などを中心に外国人観光客の方に知ってもらいたいと思いますし、
それを仕事にできれば、事業の柱を増やせるというおまけもつきます。
そのためにはまず英語を話すことができなければなりません。
あとは「英語が喋れたら単純にかっこいい」と思っているからです(笑)。
また、40歳を超えてから、海外に興味を持つことが増えたのも後押しになっています。
娘が高校を卒業すれば親の役割はほとんど終わったようなものですから、
妻と色々な国に旅に出ようとも話しています。
このように、自分のやりたいことの多くに英語が関係しており、
「英語を毎日勉強しよう」という強い動機となりました。
あとは、今までの経験からも、
習慣づけができれば勝ったも同然であることは知っていましたので、
まずは習慣として定着すると言われている3ヶ月を目指して、勉強する時間を作っています。
朝ごはんを食べたら歯を磨く、寝る前にお風呂に入るといったレベルで
無意識に行動できるようになるまであと少し頑張りたいです。
だからこそ、私たち塾関係者は
「あの生徒さんはやる気がない」「勉強の習慣がつかない」と
ラベリングしてはいけないと思うのです。
「この子はやる気がないから」という前提で学習サポートをするのではなく、
やる気の発火点は誰の中にも眠っており、まだそれに着火してないだけというスタンスで、
強い動機を与えるような接し方が必要ではないでしょうか。
あなたは、自塾に通う生徒さんそれぞれの
「勉強するための動機」を把握できていますか??
私も含め、目先の成績向上に意識を奪われるあまり、
それが目的化していないかはきちんと振り替える必要があると思います。
ご存知の方も多いかもしれませんが、
書籍も映画も大ヒットした「ビリギャル」の主人公・小林さやかさんも
坪田信貴先生から非常に見事な動機づけをしてもらい、
ガツガツ勉強する体制を整えたことは有名です。
具体的には、志望校を決める際に、当時イケメンが大好きだったさやかさんに、
「嵐の櫻井翔さんがいるから」という理由で志望校を慶応義塾大学に決めたことです。
当時のさやかさんの偏差値は「29」だったにも関わらずです。
動機づけが目標達成へのふんばりとなり、「がんばろう」という気持ちを支えてくれます。この部分を私たちはもっと大切にしないといけません。
特に個別指導塾であれば、一人ひとり個別対応するための塾ですから、
なおさら一人ひとりと向き合い、動機づけをしていくことが何よりも大切といえます。
言い換えると「動機づけをうまくできれば、勉強する習慣が確立できる」のです。
それをやらず(生徒さんの内発的動機と向き合わず)に
「やる気がない」「言い訳ばかりする」で済ませているようではプロとは言えないですよね。
そもそも、自分で動機を見つけて自分で努力できるところまで高まっている子であれば
塾になど行かなくていいですし、それができないから塾に助けを求めているわけです。
なのに塾に来てまで「やる気がない」と言われても困りますし、
それを何とかするのが私たちの仕事のはずです。
例えば学校でも、授業をまじめに受けない生徒さんがいたとして、
優秀な先生ほど「生徒が悪いのではなく、面白い授業を提供できていない自分が悪い」
と発想されますよね。
現実として生徒さん側に問題があるのだとしても、
まずは大人が自分を顧みる姿勢は大事だと思います。
「やる気が出るためにどういった動機づけが最適か」
「言い訳しなくなるためにどんな動機づけが有効か」と思えるようになりたいところです。
私たち学習塾は、高い費用を保護者さんからいただいています。
付け焼刃のテクニックで目先の成績をアップすることはできるかもしれませんし、
それで生徒さんや保護者さんは喜ぶかもしれませんが、
それではきっとこの先の人生も、その子にとって勉強はテクニックでしかありません。
勉強する動機も存在しないままです。
それならば、いただいた費用や期待以上のものをお返しするためにも、
動機づけという部分にフォーカスしてみるのも重要ではないでしょうか。
そのためには生徒さんのことをもっと知る必要がありますので、
今まで以上に生徒さんとのコミュニケーションが深まるでしょう。
「生徒さんのことを知ろう」という考えが私たちの行動をも変えます。
そして、結果が出る塾といった評判にもなり、紹介が増えるなど、
教室全体に良い影響も与えてくれます。
生徒さん一人ひとり、それぞれ頑張れる動機が少なからずあるはずです。
その動機を共に見つけ、刺激し、
生徒さんが変わっていく姿を想像するだけでワクワクしますよね。
学習塾ですから、学習指導がメインになるのはおかしなことではありません。
もちろんそれは大切ですが、生徒さんへの動機づけを意識する運営を行なっていけば、
結果として学習指導にも効果を発揮すると思います。
ただし、勉強させるための手段として夢や目標を持たせるのは順番が違います。
夢や目標が目的であって、勉強が手段になるような意識を持たねばなりません。
また、夢や目標は内発的なものであって、他人からそれを持つことを強要されたり、
ましてや「これを目指そう」と決められたりするのもおかしな話です。
こちらのアプローチは、あくまでヒントやきっかけづくりであること、
決めるのは子どもたち自身であることを忘れないようにしたいですね。
あなたの教室では、生徒さんへどういった動機づけのアプローチをおこなっていますか?
【今回のまとめ】
・動機づけは踏ん張るエネルギーの源
・生徒さんへの動機づけも私たちの大切な仕事