【Vol.813(2024.07.24)】未成年の喫煙・飲酒による、オリンピック辞退問題を考える

ご存知の方も多いかもしれませんが、来週からオリンピック!というタイミングで、
代表選手による喫煙・飲酒が発覚し、代表を辞退するという事態が起こってしまいました。

私たち凡人にはわからないレベルで、さまざまなものを犠牲にして
死に物狂いのトレーニングの果てに掴んだ代表でしたでしょうから、
きっと本人が一番後悔し反省していると思います。

20歳未満の喫煙や飲酒は禁止で法律違反なわけですから、
その行為自体は、やっぱりダメなものはダメです。

それでも、数年後には今回の件が笑い話になるように、
また再起を図って頑張ってほしいですね。

未成年で喫煙が発覚し謹慎していた野球選手も、今や大リーグで活躍されていますし、
こうなってしまった以上、大事なのは将来の道まで閉ざしてしまわないことだと思います。

ましてや私たちのように直接の関係がない外野の人間が、
web上で誹謗中傷などを行うことは絶対にあってはなりません。

世論では「代表辞退は当然だ」といった声や、「そこまでしなくても」といった
賛否両論が各方面から上がっていて、色々な人たちの考えを知ることができます。

みなさんはどう思われましたか?

夏期講習のお忙しい時期かと思いますが、探究学習の一環として、
生徒さんと話し合っていただく題材にしてもいいかもしれません。

そこで、代表辞退はやりすぎだという意見と、妥当だという意見を
web上から3つずつ集めてみました。

【代表辞退はやりすぎだという意見】

・宮田笙子選手のオリンピック代表辞退【ゼロ・トレランス方式への疑問】/教育評論家・親野智可等
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0f6572dc4f6bf765d39b4b9f27ffc476a70000c9

・「代償が大きすぎるやろ…」慶應大女性教授は喫煙&飲酒で宮田笙子が“五輪辞退”の結末に苦言!
https://news.yahoo.co.jp/articles/065dd4936823674598f71cc44ac1b8bd723fb268

・本学学生のパリオリンピック出場辞退について
https://www.juntendo.ac.jp/news/19460.html

【代表辞退が妥当という意見】

・宮田笙子の五輪辞退「チーム規範を守れなかったのがもったいない」元五輪メダリストが指摘
https://news.yahoo.co.jp/articles/787f85462196a89654e2dd7e296fbb2ac843bb23

・武井壮、「強化費用使っている選手がルールすら守れなかったらそりゃ当然外される」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e82527293884852e75f8642d969928895373affb

・橋下徹氏 体操・宮田の五輪辞退に私見「協会の規範が著しく不合理だとは思わない」スケボーとの違いも指摘
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/07/20/kiji/20240720s00041000210000c.html

どちらも真っ当な意見だと思います。
どの記事を読んでも「そう言われれば、確かにな」と思える部分が多いです。

辞退はやりすぎだという意見の根底に共通しているのは
「若さゆえの多少の失敗は誰でもある。だからこそ寛大な処分が必要なのではないか」
という考えのように感じました。

おそらく「教育」という発想がベースになっているのでしょう。

ダメなものはダメだけど、喫煙・飲酒は軽度の違反だから……という意見もありますね。

確かに好奇心から喫煙や飲酒をやってしまうというのも、まあ分かります。
大学1・2年生が新歓コンペで飲酒するノリでしょうか。

また、成人が18歳からで喫煙・飲酒が20歳からというズレも、
少しは影響しているかもしれません。

一方で辞退が妥当という考え方の根底には「規範」があると思います。

確かに日本体操協会の「日本代表選手・役員の行動規範(一部抜粋)」には、
=====
・日本代表チームとしての活動の場所においては、
20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する。
※2016年度から数年かけて段階的に全面禁止とする

・日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止とする。
ただし、合宿の打ち上げ、大会のフェアウェルパーティー等の場合は
監督の許可を得て可能とする
=====
とあります。

あらかじめルールとして定められているのですから、守ることが前提であり、
ケースバイケースで見逃していては収拾がつかなくなる可能性があります。

私個人の意見としても「辞退が妥当」だと考えています。

やはり決められたルールがあって、そのルールを明らかに破った場合には
それなりのペナルティが必要であると思うからです。

厳重注意程度で終わった場合、これが一つの前例となって、
今後に同様の事例がでてきてもすべて許されることになってしまい、
ルールとしての効力を発揮しません。

そもそもルールが時代錯誤であるとか、矛盾しているのなら
それを変える視点も大事だと思いますが、
今回のルールはそれに当てはまらないと思います。

また、日本体操協会だけでなく、オリンピックには多くの団体が関わっています。

大手企業がスポンサーにつけば多額の契約金を払っていますし、
一般的な大会ともわけが違います。

無理矢理日本代表に担ぎ上げられたわけではなく、
自分から日本代表になりたくてなっているわけですから、
そのリスクも相応に受け入れなくてはいけません。

そうして総合的に考えると
ルール違反に加え、関係各所に多大な迷惑をかけた(これからかける)ことなどを
総合的に考慮し、辞退するという判断で良かったのではないでしょうか。

加えて言うならば、もし20歳を超えていたとしても、
トレーニングセンター内で飲酒していたら、
日本体操協会の規範に違反しているので、同様の処分で良いと考えます。

仮に今回の決断が逆で、辞退しないことになったとしましょう。

もしその際、力を発揮できずに思うような結果が残せなかったら、
こぞって叩きたがる輩が必ず出てきます。

いや、結果を残しても叩く人は叩くでしょう。

もちろん、そのような誹謗中傷を行う人が悪いに決まっているのですが、
残念ながら現状ではいきなりそれを根絶することはできません。

そうした悪意からご自身を守ってもらうためにも、
(今回は)辞退という判断はアリだったのではないかと思います。

ですから、今回の辞退は本当に苦渋の決断だったと思いますが、
これで禊を済ませて、再スタートしてもらいたいですね。

オリンピックが終わりしばらくしたらほとぼりも冷めます。
大会に出られることがあれば、私と妻は全力で応援していきたいです。

今回の件に通じるところもありますが、もしあなたの教室で、
生徒さんが塾のルールを破ったとき、あなたならどう対処しますか。

ルール通りの対処でしょうか。

それとも、「若気の至り」ということで、1・2回は見逃す感じでしょうか。

ぜひ、生徒さんや講師の皆さんと一緒に考えてみてください。

【今回のまとめ】
・ルールと罰則を、「教育」で考えるか「規範」で考えるか
・答えのない問いを話し合う機会を生徒さんと作る

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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