文科省は、主に金銭的事情を抱える短大生や大学生に対して支援を行う
「修学支援新制度」を設けています。
しかし、対象となる短大・大学が一定の定員を満たしていることが条件だったため、
これをクリアできず学生募集を停止する大学などが出たことから、要件を緩和するそうです。
<「道府県で唯一の学問分野ある大学」ペナルティー猶予 文科省見直し>
https://www.asahi.com/articles/AST4125NLT41UTIL007M.html?iref=pc_edu_issue_list_n
大まかには、独自性・専門性が高い学問内容を提供する学校は、
定員割れをしていても対象から除外しませんよ、というものです。
学校に市場の競争原理を働かせることのネガティブな側面が
如実に表れた結果だとも見ることができます。
話題の高校無償化で、統廃合となる公立校が増えるのも同じ原理だと言えるでしょう。
<高校無償化どうなる?大阪は公立離れ 東京は中学受験“熱”も>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250309/k10014744261000.html
塾を「経営」している私たちからすると、生き残るために必死で創意工夫をしているわけで、
競争の中で廃校になってしまう学校があるのは、
市場の摂理として仕方ないと感じる方も多いでしょう。
勝者はそれだけ多くの価値を市場に提供したから勝てたのであって、
敗者は市場のニーズを満たせなかったから負けた、
だから退場しなくてはならないというシンプルな掟です。
そして、その考えは基本的に間違っていないと思います。
しかし、それと同じ考え方で学校(公教育)を捉えるのは危険です。
公教育は社会基盤として必要な制度です。
記事にもあるように、単にニーズの多寡だけでその価値を決めることはできません。
たとえば地域に一つしか学校がないような過疎地で、
生徒が少ないからと言って学校をなくしてしまえば、
その地域に住んでいる子どもたちは教育を受ける機会や選択肢を失います。
もっと言えば、その町に住んでいられなくなるでしょう。
そこへ他校や私立と競争させて「生徒が少ない=必要性がない=だからなくしてしまえ!」と言うのは、
市場原理としては正しいかもしれませんが、
社会インフラの存続としては問題があるということです。
もちろん、だからと言って学校は
存続のための努力や工夫をする必要がないという意味でもありません。
当メルマガでも何度かご紹介している「高校魅力化プロジェクト」においては、
地方の学校がその地域性を生かして「その学校(地域)でないと学べない」コンテンツを作り、
学校の魅力向上に努めています。
そしてこのような動きは、逆に塾を「経営」している私たちにとっても
大きな学びのヒントとなりそうです。
学習塾も同様に、単なる市場競争の中で生き残りを図るだけでなく、
地域社会における独自の価値を見出し、それを強化することが重要ではないでしょうか。
例えば、その地域特有の教育ニーズに応えるサービスを提供することで、
他塾さんとの差別化を図ることはできるでしょう。
1校区1教場スタイルのように、地元校のカリキュラムに合わせた補習や、
地域の文化・歴史を取り入れた特別講座などを実施している塾さんは少なくないはずです。
他にも、例えば第一次産業従事者のご家庭が多く、特定の繁忙期がある地域なら
それを見越した家庭との連携やスケジュールの組み方などもできるかもしれません。
地域のイベントやボランティア活動に積極的に参加して地域社会とのつながりを深めれば、
塾の存在感を高める効果も期待できます。
こうした活動やサービスの提供は、均一化された品質が強みである大手さんには
「やりたくてもやれない」部分だと言えます。
それに「どこに行っても同じ質のサービスを提供できる」ことは強みですが、
「どこに行っても同じなら、別にどこでもいい」とも言えてしまうわけですものね。
そこへ、私たち中小の塾が同じ土俵に上がろうとしなくても良いはず。
つまり、「他の地域でも受けられるサービス」をそのまま自分たちの地域に持って来るよりも、
「その塾(自塾)がその地にある意味」「この地域だからこそ求められる強み」を
作ることが大事なのだと思います。
近年はオンライン化で「どこからでも受講できる」タイプの塾さんも増えていますし、
それも魅力的な経営手法の一つだと思いますが、そんな中で「あえて」地域に根差すのなら、
その意義を作らないと意味がないとまでは言わずとも、「もったいない」と思うんですよ。
教育社会学の研究によると、塾など地方の小規模教育機関は
地域コミュニティの形成や維持において重要な役割を果たすとされています。
地域の文化的資源を活用し、地域住民の教育水準の向上や
地域アイデンティティの強化に寄与しているからです。
少子化や市場競争の激化といった課題は、学習塾経営にとって大きな壁です。
塾経営はもちろんビジネスですが、同時に教育機関としての本質的な価値を再認識し、
地域とともに成長する姿勢を持つことで分かる視座もあるはず。
あなたの教室は「この町の」子どもたちのために何ができますか?
そんな視点で考えてみてはいかがでしょうか。
【今回のまとめ】
・均一化されたサービス品質を、あえて地域に持ち込んで競争する意味は?
・地域特性を理解し、そこで求められるサービスをもっと追求してみよう