【Vol.942(2025.10.01)】「バイトに有給なんて」と思っていませんか?

先日、懇意にしている塾の先生からこんなご相談をいただきました。

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先日バイトの大学生の子から「ウチは有給休暇あるんですか?」と聞かれました。
バイトが有給休暇とれるとは知らなかったので
「よく分からないね……考えたことないわ」と答えたのですが、
ちょっと調べたらアルバイトでも有給休暇とれるのですね。全然知りませんでした・・・
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そうなんです。
アルバイトでも有給休暇(以下、有給)は取れます。と言うか、権利なのです。


実は、1994年(平成6年)改正の労働基準法から、
パートタイム労働者(アルバイト・パート)も有給の対象とされています。

本当は30年以上前から、アルバイトでも条件を満たせば有給を申請できたわけですね。


しかし、当メルマガ読者の方が大学生やフリーターでアルバイト講師だったころ、
有給を申請したという方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

雇用者側も「アルバイトが有給? は?なめんなよ」みたいに思っていたかもしれませんし、
私たちも「アルバイトに有給なんてあったんや」という感じで、無知だったことも否めません。

仮に当時、私たちがもし有給の存在を知っていたとしても、
「有給なんて要求したら何を言われるか、されるかわからない」と思って
言えなかった場合も多かったのではないかと思います。


10年ぐらい前からでしょうか、働き方改革やプライベート重視の働き方、
ライフワークバランス重視の空気が根付いてきました。

権利を権利としてしっかり認め、アルバイトにも有給を付与したり、
アルバイト従業員自身も、自分に有給の権利があることを知ったり、行使したりという
流れになっているような気がします。


みなさまの教室ではいかがですか?

今回は、アルバイトやパートさんにも有給の権利があり、
きちんと使ってもらわないといけない時代であることを改めてお伝えしたいと思います。

ちなみに弊塾は、アルバイトやパートスタッフにも
有給をきちんと取得・消化してもらっていますよ!

もちろん、正社員の方にもきちんと有休を取ってもらわなくてはいけません。
もし社員さんに有給を付与していないようであれば、大問題ですよ!


誰にどのくらいの有給が与えられるかは、法律で定められています。

社員さん(や週5勤務のアルバイト)は、半年勤務したのち、10日の有給が付与されます。

この10日分のうち、最低5日は実際に有給を取得させないと労働基準法違反です。
2019年の働き方改革関連法で決まっています。

【「年次有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています(厚生労働局)】
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf


したがって、社員さんがいらっしゃる塾さんは、
社員さんに必ず有給を取ってもらってください。

塾長やオーナーが「お前ら、有給なんか取るなよ」みたいな圧をかけることは許されません。

「制度として有給はあるが、実質上取れない」文化が
定着していることもあるかもしれませんが、これもダメです。

ブラック塾として、働き手がどんどん去っていってしまいます。

このあたりは、大手塾さんや上場されている塾さんのほうが
きちんと整備されているのではないでしょうか。


こうした労務環境をきちんと整えた上で、
アルバイトやパートさんにもきちんと有給があることを伝え、
決まった日数分を付与しましょう。

アルバイトやパートさんはそれぞれで労働日数が異なると思いますので、
労働日数に応じて有給の日数が変わることも把握しておいてください。

ちなみに、勤続年数が半年経てば、下記の有給日数が付与される決まりです。

【有給付与日数(勤続年数が半年以上)】
・週5日以上・・・有給日数10日
・週4日程度・・・有給日数7日
・週3回程度・・・有給日数5日
・週2回程度・・・有給日数3日
・週1回程度・・・有給日数1日


「自分たちの時代には有給なんてもらえなかったのだから」と、
あたかもそれが「普通」であるかのような考えはいち早く捨てましょう。

厳しい言い方になり恐縮ですが、完全に時代錯誤です。

学生アルバイトが「有給ってあるんですか」と聞いてくるのは
とても勇気がいることだと思います。

「近頃の若い奴は、権利ばっかり主張してくる」なんて考えてはいけません。

きちんと誠実に対応する必要がありますし、
そもそも権利なのですから付与するのが当然なのです。

アルバイト講師が何も言ってこないからOKなのではありません。

むしろ塾側から
「有給は権利なのでしっかり使ってね。
ただ生徒さんの迷惑にはならないように、時期やタイミングには気をつけてね」
と伝えるぐらいのほうが、信頼度にもつながると思います。


最近は、大学側が1年生の入学オリエンテーションなどで
「アルバイトには有給があります。権利なのできちんと申請してください」と指導もしています。

その走りとして有名なのが、2016年に早稲田大学公認で出版した
「ブラックバイト対処マニュアル」です。

私も読みましたが、当時は「ブラックバイトのこんな対処本があるのか」と驚愕しました(汗)。

【ブラックバイト対処マニュアル(早稲田大学出版部)】
https://www.waseda-up.co.jp/newpub/post-710.html


また、有給をむしろアピールポイントとして使い、
「アルバイトにもきちんと有給を付与しています」と求人欄に載せて、
よい人材を確保する塾さんもあります。

上手なアピールだなと思いますが、
悲しいかな、有給がアピール材料になってしまう現状に問題があるとも言えます。

何度も言いますが、有給は「権利」なのです。

「使わせたくない」「有給=塾側にとって損」という考え方は、とにかく改めていくべきです。


今、貴塾で働いているアルバイトやパートさんも、
幅はあれど絶対に有給のことは把握しています。

彼らの善意につけこみ、あたかも有給が存在しないかのように対応するのは、
バラック企業のやることであり搾取の論理です。

善意を搾取することなく、気持ちよく働いてもらうためにも
有給についてしっかり制度を整えましょう。

ぜひ、社労士さんに相談してみてください!!!



【今回のまとめ】
・アルバイトやパートさんにも有給休暇の付与を(権利!)
・今なら有給休暇をアピール材料にして、よい人材を確保できるかも

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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