【リアル・パートナーズ】自転車青切符制度から、塾のルール運用を改めて考える

この4月から、自転車の交通違反に対して反則金を科す、
いわゆる「青切符」制度が導入されて話題になっていますね。

各種報道でも触れられている通り、この制度には多方面から賛否が出ているようです。

<2026年4月から自転車の交通違反に「青切符」を導入!何が変わる?>
https://www.gov-online.go.jp/article/202410/entry-6604.html
<四輪ドライバーから大ブーイング!「車道のチャリをどうにかしてくれ!」>
https://news.yahoo.co.jp/articles/6618dd426d5f8c821f2cd8e68ef9da4fbf01cbec

警官を装って反則金をだまし取る詐欺の事例も出始めたという報道もあります。

ここで注目したいのは、この新制度は、ルールそのものが新しく作られたというより、
ルールの「運用方法」が変わったということです。

例えば、自転車に乗ったままの「ながらスマホ」(反則金12,000円)や、
信号無視(反則金6,000円)がダメだというのは、今に始まったことではありません。

以前からダメだったけど、「これからは罰金を取りますよ」に変わったということです。

つまり、「ルールをどう守らせるか」という発想が変わりつつあるわけですね。

この発想は、塾のマネジメント(ルール運用)においても大事なことだと感じます。

従来、自転車の違反は指導や警告にとどまるケースが多く、
「ルールはあるが守られない」という状態が半ば常態化していました。

今回の制度は、その前提を見直し、
「違反が起きたときにどう対応するか」を明確にしたものです。

曖昧だったルール運用を、きちんと機能させようとする動きと言えます。

ただし、この変化を「罰則を厳しくすれば行動が変わる」という
単純な話として捉えるべきではないでしょう。

交通政策の分野では、罰則だけで行動が変わるわけではなく、
「違反が起きやすい構造そのもの」をどう変えるかが重要だと指摘されてきました。

例えば、一時停止義務違反やスピード違反など、
取り締まりの警察官が「隠れている」ことについて、不満の声はよく聞きますよね(笑)。

「本当に事故や違反をなくしたいのであれば、隠れずに取り締まるべき」という意見です。

確かに、その主張自体は筋が通ったものですが、
「警官が隠れているかもしれないから、きちんと交通ルールを守らなくては」という
抑止力になる可能性も否定できないでしょう。

見えるところに警官がいたのでは
「警官がいるときだけルールを守る」という行動に繋がりがちですが、
「隠れているかもしれない」だと、常にルールを守ろうという意識も働くはずです。

つまり、誰もが納得しうる対応ではなかったとしても
「ルールを守る」という本質を追究するのであれば、結果論としてはアリだということです。

こうした「仕組みでルール遵守の環境を作る」という視点を、
塾経営にそのまま当てはめて考えてみましょう。

塾にはさまざまなルールがあります。
宿題の提出期限、遅刻への対応、教室滞在中のスマートフォンの扱いなどです。

そして多くの場合、「守らせる」ための工夫として、
注意や指導、場合によってはペナルティが用いられます。

つまり、「怒られたり、罰を与えられたりするのが嫌ならルールを守ろう」という「仕組み」です。

同時に一方で、「なぜそのルールが守られないのか」という
構造的な視点は、どれだけ持てるかも大事だと思います。

宿題の未提出で考えてみましょう。

「やってこなかったら叱る」「居残りをさせる」といった対応は一般的ですが、
そもそもその宿題は、生徒さんにとって取り組みやすい設計になっていたでしょうか。

量や難易度が適切か、提出方法が分かりやすいか、
宿題に取り組むタイミングが本人の生活リズムに合っているか、
こうした要素によって提出率は大きく変わります。

スマートフォンの使用も同様です。

「授業中(自習中)は使ってはいけない」とルールで縛ることはできますが、
そもそも授業や自習環境自体が集中しやすい構造になっているかどうかは別問題です。

授業や自習への(生徒さんの)関与度の低い時間が長ければ、
どれだけ禁止しても意識は外に向かいます。

逆に、自然と集中せざるを得ない設計になっていれば、
ルールに頼る必要は小さくなるでしょう。

つまり、ルールを「守らせる」か「守れるようにするか」という違いなんです。

前者は「生徒さんが違反をする」ことを前提にした発想であり、
後者はそもそも違反が起きにくい環境をつくる発想です。

もちろん、罰則を設けることを否定しているのでも、
「生徒さんを信じよう」という理念の話をしたいのでもありません。

自転車の青切符制度もそうであるように、一定の抑止力は現実的に必要でしょう。

ただし、それだけで行動を変えるのは難しいので、
人間の行動特性に基づいた設計の問題にも
意識を向けてみてはどうですか、という提案です。

ルールを厳格に運用することで短期的な改善は見込めますが、
長期的に見れば、「なぜその行動が起きるのか」を捉え直すことが不可欠になります。

なぜスマホを見てしまうのか、なぜ宿題を忘れてしまうのか、なぜ遅刻してしまうのか。

授業や自習に集中できない理由や環境があるのかもしれませんし、
その生徒さんの生活リズムや家庭の事情と、
宿題の内容や通塾日程の両立が難しいのかもしれません。

そこにフォーカスすると、取れる対策も変わってきます。

違反を減らすことが目的なのか、それとも望ましい行動を自然に引き出すことが目的なのか。

この違いは、教室の雰囲気や生徒さんの学び方に大きな影響を与えます。

守らせるための仕組みを磨くのか、それとも守れる構造を設計するのか。
そこを意識的に選択することが大事ではないでしょうか。

【今回のまとめ】
・生徒さんがルールを守れる「仕組み」を考える
・ルールを「守らせる」のか「守れるようにするか」は発想の起点が違う

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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