【Vol.794(2024.05.17)】勉強好きな子は、なぜ勉強好きになる!?

塾経営(学業指導・サポート)を生業にしている者として常に頭を悩ませるのが、
生徒さんの「勉強に対する前向きな姿勢」をいかに引き出すかではないでしょうか。

もう、不変のテーマと言ってもいいくらいですよね。

塾として求められる成果(成績向上・志望校合格)を出すのは最低限の務めではありますが、
それにこだわるあまり、生徒さんや保護者さんを苦しめるなど、
手段を選ばないアプローチをするのは気が進まないという人も多いでしょう。

泣きながら勉強する子どもたちをさらに怒鳴りつけ、追い込み……
みたいなやり方をすれば成果は出るかもしれませんが、
それで本当に子どもたちのためになっているのか、倫理的にどうなのかという話ですね。

だからこそ無理やりやらせるのではなく、やる気を引き出して、
主体的に楽しく学び、勉強を肯定的に捉えられる生徒さんを育てる
「人間教育」的な部分に力を入れる塾さんが多いのだと思います。

理想的な話をするならば、そもそも大人側が「勉強=苦役」と考える時点で
スタートから間違っているのだと思います。

勉強は苦しいものだからそれを乗り越える力をつけよう、
その経験が人としての成長をもたらすという発想も間違ってはいないのでしょうが、
それでは子どもたちは永遠に勉強をネガティブに捉え続けますしね。

そんな中で、かなり気になる研究データ(プレスリリース)を見ました。

ベネッセ教育総合研究所が2015年から継続調査している、
「子どもの生活と学びに関する親子調査」の結果です。

どのような子どもが「授業が楽しい」「勉強が好き」と感じるのかなどを調べたものですが、
「チャレンジングな経験」を積んでいる子どもほど、
授業や勉強を肯定的に捉えており、結果として学業成績が良いことが分かったのです。

<「チャレンジングな経験」は子どものさまざまな能力と関連>
https://berd.benesse.jp/up_images/textarea/datachild/datashu06/datashu06.pdf

つまり、塾でもそうした環境を作ることができれば、
あるいは家庭でそうした経験が積めるようなサポートができれば、
塾事業の本丸である「成績が良くなり、かつ前向きに勉強に取り組む」生徒さんを
育てられるということになります。

先述したように、私たちはつい成果にこだわりすぎるあまり、
合理的な成績向上の方法や学習法、ツールにばかり目が行きがちですが、
「まずは畑を耕す」発想も大事だと思うのです。

では、具体的に「チャレンジングな経験」とは何を指すのでしょう?

同調査では「好奇心・探索の経験」「果敢な挑戦の経験」「夢中・没頭の経験」
「達成・自信の経験」「将来を考える経験」を「チャレンジングな経験」と定義しています。

つまり、勉強そのものでなくてもいいので、子どもが能動的にものごとに関わり、
行動を起こしていく一連の経験だと解釈して良いでしょう。

探究学習型の塾が人気を博していることの、強いエビデンスにもなりますね。

そう言うと「うちは教科学習中心で探究塾じゃないから……」という声も聞こえてきそうですが、
必ずしも探究活動をする必要はないと思うんですよ。

例えばレクリエーションも兼ねてキャンプに出掛けるとか、
勉強合宿のようなイベントを開催される塾さんもおられると思います。

そのコンテンツの中で「チャレンジングな経験」が積めるかどうかを意識して
プログラムを作れば十分に対応可能ではないでしょうか。

プログラミングやそろばんなど、習いごと系のコンテンツとも相性が良さそうですね。
キャリア教育を通して実践するのも面白そうですよね。

「勉強ができるようになるためには、勉強で成功体験を積まなければならない」という
先入観を捨てれば、できることはいろいろ広がるのではないでしょうか。

一方で同調査によると、「チャレンジングな経験」と定義づけられたいくつかの経験のうち
ここ9年間で「夢中・没頭の経験」と「達成・自信の経験」を持つ子どもが
減少しているのだそうです。

これは個人的な仮説に過ぎませんが、
大人も子供も「効率の良い勉強」や「費用対効果」みたいなことを考えすぎて、
「有益性のあること(勉強含む)」でなければやる必要はない、
みたいな価値観が強くなっているのかもしれません。

「これを学んで、将来何の役に立つんですか?」
「これって何の意味があるんですか?」みたいな発想です。

もしそうだとすると、悲しいことですよね。

ゲーム好きな子どもたちは、それが将来どんな役に立つかなんて
考えながら遊んでいないと思います。

スポーツやその他の趣味の類も一緒です。

ただ、楽しいからやっているのであって、意味を問うこと自体がナンセンスだと言えます。

勉強もそうなって欲しいですが、勉強でなくても良いので、
やはり「チャレンジングな経験」が積める環境を作ってあげたいところ。

私たち自身が、効率や意義ばかり追い求めずに、
子どもたちの自然な好奇心を大切に育ててあげたいですね。

【今回のまとめ】
・勉強が好きな子は、チャレンジングな経験をしている傾向が強い
・塾でも「チャレンジングな経験」を積む環境は作れるはず

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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