【Vol.829(2024.09.17)】講師人件費が10%増えると、生徒数は〇%増えないといけない?

先日の当メルマガで、
「講師人件費率を適正値から外さないために」というテーマでお届けし、
講師人件費率は「28%以下が適正、28〜30%がギリ許容範囲、30%以上は危険水域」
などとお伝えしました。

【講師人件費率を適正値から外さないために(9月11日配信分)】
https://r-partners.jp/1263/

これについて1点補足なのですが、私が提案している
「28%以下が適正、28〜30%がギリ許容範囲、30%以上は危険水域」という目安は、
「1:2」の個別指導塾のことです。

1:3や1:1がメインの個別指導塾さんの場合は、
人件費率の適正数値が変わりますのでご注意ください。

定義不足で失礼しました。

さて、今回はその続きとして、授業を実施することで残るお金、
シンプルに「授業料−講師人件費」という観点で考えてみたいと思います。

最後は会社にどれだけお金を残すことが大切ですからね。

人件費率が変わることで、それぞれのケースで同じお金を残す場合、
どれだけ生徒数を増やさないといけないかなどを一緒に考えていきたいと思います。

具体的な数値で見ることで、人件費率の意識が高まれば幸いです。
数字(とお金)は嘘をつきません。

では、いってみましょう!

前回もお伝えしましたが、弊塾における現在の指導単価・講師給与、
人件費率などは下記のとおりです(指導は1:2、1人の講師が1日2コマを受け持つ前提)。

=====
<人件費>
・1コマ(75分)1,750円×2=3,500円・・・(A) ※時給1,400円
・準備手当(前後30分)501円・・・(B) ※時給1,002円
・休憩手当(コマの間の10分)167円・・・(C) ※時給1,002円
・交通費360円・・・(D)
→ 合計4,528円・・・(E)=(A+B+C+D)

<売上>
・1コマ(75分/高1) 4,400円×2人×2コマ=17,600円・・・(F)

<人件費率>
・人件費(E)÷売上(F)=0.2572・・・
→ 人件費率25.7%(理論値。実際には振り替え授業などもあり、27%前後にはなります)
=====

これに追加条件として、
・生徒数:60名
・平均受講数:週1.5回(月6回)
とした場合、以下のようになります。

=====
<一人当たりの月謝>
・1コマ4,400円×月6回=26,400円

<月の売上(生徒数60名)>
・26,400円×60名=1,584,000円

<講師人件費(25.7%の場合)>
・1,584,000円×0.257=407,088円

<月の売上−講師人件費=売上の74.3%>
・1,584,000円−407,088円=1,176,912円
=====

1:2の個別指導塾では、非常に理想的な数値だと言えるかと思います。
ここから家賃や社員給与、光熱費や雑費などを引いても十分現金が残りそうです。

では実際、講師人件費を10%アップした場合(危険水域の人件費率35.7%)に
運営をしている場合、同じ額を残すためにどれだけ生徒数が必要なのかを考えてみましょう。

<月の売上−講師人件費=売上の64.3%>
・1,176,912円

<月の売上>
・1,176,912円÷0.643=1,830,345円

<生徒数(一人当たりの月謝26,400円)>
・1,830,345円÷26,400円=69.3人

いかがですか?

まったく同じ運営をしているにも関わらず、講師人件費が10%増えると、
生徒数は15%も増やさないと同じ額の現金が確保できないのです。

それに加え、講師人件費が35%になるということは、
「1:1指導の比率が高い」可能性が大です(もしくはそもそもの設計の問題)。

当日欠席が多く、やむを得ず1:1になってしまったり、
「この生徒は1:1のほうがいい」というよくわからない根拠で
特例としての1:1を多数作ってしまったりしていないでしょうか。

このような状態では、欠席連絡の電話や振替の相談、日程調整やらで、
社員の(無駄な)業務量が増えてしまいます。

無駄な作業の連続では社員さんも心身ともに疲弊しますし、
最悪の場合は退職に繋がってしまうかもしれません。

講師人件費率が高くなればなるほど、本来やるべき業務に支障が出て、
教室運営状況にはますますマイナスの影響が出る可能性が高いのです。

したがって、やはり講師人件費率に注目することはとても大切です。

前回もお伝えしたように「1:2の個別指導塾であれば、1:2が基本」という部分を
あらためて意識しなおしたいところです。

極論を言えば、振替制度をなくせばすべて1:2にはできるでしょうが、
単純にそうもいかないところだと思います。

では、それ以外の方法で1:1を極力作らないために何をするべきかなど、
考えるきっかけになればいいですね。

人件費率をしっかり抑え、抑えた分を教室運営のプラスになるよう
投資につなげるのが理想です。

チリも積もれば山となります。

1:2の個別指導塾でのイレギュラーな1:1はなくしていきましょう。
自分で自分の首を絞めないようにお気をつけください。

何度も言いますが、1:2の個別指導塾で1:1の授業をするのは「悪」ですよ!

【今回のまとめ】
・人件費率が増えるだけで、生徒数を増やさないといけなくなる
・1:2の個別指導で1:1が増えることはマイナスにしかならない

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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