【Vol.846(2024.11.15)】GIGA端末、3分の1が使われていない!?

GIGAスクール構想で、学校に一人1台のデジタル端末環境が整備されましたが、
実は公立高校の配備された端末の3分の1が1度も使われておらず、
しかも1部は今後も使われる見込みがないことが分かったそうです。

<公立高校向けタブレット端末 3分の1が使われず 会計検査院>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241015/k10014610121000.html

かつて「電子黒板」なるものが世に登場したころも、
似たようなことが起こったのをご存じでしょうか。

多額の予算を投じて学校に投入されたものの、現場で使いこなすことができず
ほぼ使われないまま倉庫でホコリをかぶっていた学校が多かったのです。

GIGAスクール構想以前から、あるいは学校でも塾でも、
教育の「デジタル化派」と「アナログ派」の対立があったのは事実です。

今回の件を受けて、「アナログ派」からしてみれば「ほら見たことか」と
嫌味の一つも言いたくなるかもしれません(苦笑)。

しかし、問題の本質はそこではないと思います。

教育の「現場」と指導機関の間に生じた温度差が、
こうした行き違いや無駄を生んでいると考えられるからです。

またそれは、学習塾の運営においても大きなヒントになると思います。

大きくは、以下の5つが挙げられるのではないでしょうか。

1.現場のニーズを理解する
2.目的と活用法を明確にする
3.トライアル導入で効果を検証する
4.導入後のサポートと教育が重要
5.コストパフォーマンスを重視する

それぞれ、詳しく考えてみましょう。

1.現場のニーズを理解する

学校においてIT機器が無駄にされた背景には、文部科学省などの“お上”主導のもと、
ある意味で一方的に現場に配備したことがあると考えられます。

教育現場(学校)がタブレットを使いたいと望んだわけではなく、
必要性を実感できないまま配布されたため、使用頻度が低くなったということです。

この「文科省が勝手に決めて現場に次々と下ろし、教員がついていけず疲弊する」
という構図は、以前から何度も問題視されてきました。

近年定着してきた、探究学習の潮流などにも言えることです。

これと同じで塾経営においても、設備投資や教材導入の際に重要なのは、
まず「現場のニーズを理解すること」ではないでしょうか。

塾に新しい教材やシステムが導入されるとき、
たいていは塾長が「これはいい!」と思ったものを現場に下ろす形だと思います。

しかし同時に、講師が日々の授業でどのような問題に直面しているか、
生徒さんがどのような学習ツールを使いたがっているかをリサーチすることも大切です。

講師や生徒さんにアンケートを行い、
具体的にどのようなツールが授業に役立つかを調査することで、
導入後の使用率や効果を高めることができると思います。

  1. 目的と活用法を明確にする

タブレットが学校で使われなかった一因として、
「目的が不明確」であったことも考えられるでしょう。

例えば、デジタル機器を授業の補助として使う場合、
その利用目的や学習効果を具体的に示さなければ、ただの「飾り」に終わってしまいます。

塾でも同様に、新しい教材やシステムを導入する際には
「何のために使うのか」「どのように効果を測定するのか」を
事前に明確にしておくことが重要です。

例えば英語学習アプリを導入するのなら、
「リスニング力を高める」など具体的な目的を設定し、
それに沿った活用法を講師やスタッフに共有(あるいは一緒に考える)したいところです。

  1. トライアル導入で効果を検証する

GIGAスクール構想では一度に大量の機器が配備されましたが、
実際の効果や使用状況を小規模な試験導入で検証するプロセスに
欠けていた面があったのかもしれません。

塾の設備投資でも、いきなり教室全体に新しいツールを導入するのではなく、
まずは一部の教室や特定の生徒さんにトライアル的に導入し、
効果を検証するのが無難かもしれません。

例えば、複数のデジタル教材のうち、
どれが最も生徒さんの理解度向上に役立つのかを確認するため、
テスト導入してみることもできるのではないでしょうか。

  1. 導入後のサポートと教育が重要

「導入後のサポート不足」も、IT機器が教育現場で使われなかった原因の一つでしょう。

機器だけは配布されたものの、教員が使い方を学ぶ機会が少なく、
最終的に使用されないという状況が見受けられます。

塾でも新しいシステムや教材を導入した際には、
講師やスタッフにその効果的な使用方法を十分に伝え、
活用法についての研修やサポート体制を整えることが重要です。

「今日からこれを使うから、後はうまくやってくれ」では講師も困りますよね。

  1. コストパフォーマンスを重視する

教育機関でのタブレット配備は、多額の予算がかけられているにもかかわらず、
実際に活用されていないことが問題視されています。

これは明らかな経営資源の無駄遣いであり、効果的な投資が行われていない典型例です。

中小規模の学習塾経営においても、
当然ながらコストパフォーマンスを意識した設備投資が求められます。

上述した「トライアル導入」なども併用して、高額な設備を一度に購入するのではなく、
予算に見合った、そして現場で本当に必要とされる機器や教材に限定することが大切です。

また、導入効果を数値で把握するための指標を設定し、定期的に投資効果を見直すことで、
コストに見合った投資が可能となるでしょう。

今回のニュースのような事例は、単にハードウェアやシステムを導入するだけではなく、
現場でのニーズの把握、導入目的の明確化、トライアル検証、サポート体制の確立、
コストパフォーマンスの考慮がいかに重要かを示しています。

新たなツールや設備が次々と登場する中ですが、現場の声に丁寧に耳を傾けながら
実際に必要とされ、活用される設備投資をしたいところです。

【今回のまとめ】
・素晴らしい教育ツールも、「上」が勝手に決めて下ろすだけでは宝の持ち腐れ
・何かを新規導入するときは、現場の声に耳を傾ける姿勢を忘れずに

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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