【Vol.896(2025.05.14)】フランチャイズ化を進める塾の真意を考える

Facebookを見ていると、最近特に学習塾のフランチャイズ(FC)募集広告を
よく目にするようになってきました。

元からFC事業をメインにし拡大している塾(明光義塾さんやスクールIEさん)ではなく、
直営で運営している塾さんがFCオーナーを募集するケースです。

本来なら直接、「なぜフランチャイズ化しようと思ったんですか?」と聞くのが一番なのですが、
あいにく私のネットワーク内には該当する知人がいないため、
私なりの考察をしてみたいと思います。

もし、そのあたりを当事者として話しいただける知見をお持ちの
経営者の方がいらっしゃれば、ぜひご一報ください!

さて、FC化には当然ながらメリットもデメリットもあります。

あくまでも私なりの仮説でしかないのですが、
五つにまとめてみましたので一緒に考察していただけますと幸いです。

【1】フランチャイズできるぐらい仕組みが確立できた

まず、直営で塾運営をする中で、ノウハウを「仕組み化」できたケースです。

良い意味で「研修すれば誰でもできるモデル」を作ることができたために、
そのコンテンツを外部に提供する形で事業化しているのだと思います。

FC化するということは、生徒指導における中身から、教室作り、そして宣伝広告など、
それだけ直営で実績が出ている可能性が高いです。

中身に自信がなければFC化なんて考えないでしょうしね。

そういう意味では、他業種から学習塾業界参入を検討されている方にとっては、
直営展開していた塾のFCモデルは、勢いもあって良いかもしれません。

【2】展開のスピードを早めたい

直営で教室展開をする場合、どうしても展開スピードを上げることができません。
いいところ、1年で3〜5教室ぐらいではないでしょうか。

適切な物件(テナント)を探して契約、内装や什器の設置、
配属する社員の育成などいろいろな準備が必要であるためです。

教室展開を見越して余剰人材を採用・育成できれば言うことはありませんが、
そうした人材を大量に抱えられるほど余裕のある塾さんも少ないと思います。

直営校舎の売上・利益によっては、出店を一旦ストップしないと
資金に余裕がなくなる場合もあるでしょう。

しかし、FC化すればマンパワーの問題は一気に解決します。

オーナーもしくは、オーナーが採用した教室長にしっかり研修すれば、
自塾(本部)の持っているノウハウを伝え切ることが可能になります。

また、当然ながら出店費用はFCオーナー側の負担ですので、
直営店舗の売上や利益が下がっていても大きな影響はありません。

オーナーさえ見るけることができれば、自塾のブランドをどんどん広げることができるのは、
本部側にとって大きなメリッです。

【3】直営よりフランチャイズ展開の方が楽

先ほども述べたように、直営で店舗展開する場合、
人材や出店費用などの不確定要素に左右される場合があります。

そのため、オブラートに包まない言い方をすれば、
「直営で教室を増やすより、FC展開のほうが楽」なのです。

リアルな話、加盟金も現金で入ってきますしね。

また、昨今の人手不足や賃金上昇などもあり、
直営で教室を広げていくことは年々困難かつリスクにもなっていると思います。

「直営よりも、FCで広げていくほうが良い」という考えがあるのかもしれません。

会社を安定して継続していくための判断としては、選択肢として大いにアリだと思います。

【4】今の商圏にこだわらず、全国で広げることができる

直営の場合、第1号教室を中心に各教室を近隣に展開していくのが中心で、
やや広範囲な場合でも同じ都道府県下での展開になるケースが多いです。

ある程度、同一地域(都道府県)の主要商圏を押さえたら近隣他県へ……
みたいなパターンが一般的ではないでしょうか。

塾の場合、商圏が重ならない程度の近場で店舗展開する
「ドミナント戦略」も効果的ですからね。

例えば兵庫県を地元とする中小塾が、いきなり北海道に出店することはほとんどありません。

社員さんが事情で地元に帰ることになったため、
その社員さんに任せる形で遠方での出店になったというパターンも耳にしましたが、
これはレアケースでしょう。

その点、オーナーさんを全国各地から集めることができるFCは遠方に展開しやすい上、
オーナーさんも塾の理念などに共感できれば距離の壁なく加盟できて、
お互いにとってメリットですよね。

ただ、遠方で出店した際は、ネームバリューが効かずドミナント戦略も取れないため、
地域に認知され生徒さんが増えるまでは大変かもしれませんね。

オーナーさんにも相当の手腕が求められます。

塾勤務経験者であれば、個人の看板で始めたほうが早いかもしれません。

【5】直営の売上・利益が減少してきたため

直営教室での売上や利益が減少してしまい、今後も回復の見込みが厳しい場合、
FC化によってメインのキャッシュポイントをそちらに移そうという経営判断もあるでしょう。

“本体”の調子が良いのであれば、引き続き直営で展開していく選択肢もあるわけで、
「FC化せざるを得ない理由」があると考えることもできます。

もし、FC加盟や本部に対する不安があるのなら、
直営教室の生徒数推移や売上・利益の把握はもちろん、
直営教室を複数見学するなど、加盟前にきちんとリサーチすることをお勧めいたします。

いかがでしたでしょうか。

直営で展開していた塾さんがFC展開を進めるのは、
ポジティブなものであれネガティブなものであれ、何らかの意味や意図があるはずです。

FC加盟を考えておられる方は、その意図を汲み取った上で、
自分に合っているかどうかを判断してみるのがいいかもしれません。

「なぜ、直営ではなくFC展開をする判断をしたのか」と、
ストレートに疑問をぶつけてみると良いでしょう。

また、明光義塾さんやスクールIEさんなど、FC事業が主体の老舗ブランドで展開するのも、
それぞれメリット・デメリットがあると思いますので、ぜひ考えてみてください。

飲食店のFCと比べて属人性が強い学習塾のFCは、
どうしても人への依存度が高くなるため、
例え仕組み化されていても再現性が低くなりがちなのも注意が必要です。

生徒数や売上までFCが用意してくれるわけではありませんので、
最後は結局オーナーの手腕やマネジメント力が問われます。

FCというモデルそのもの、
あるいはFC展開される塾さんを否定する意図などまったくありませんが、
「FCに加盟しさえすれば安心」という考えは危険です。

FC加盟を考えているのであれば、
FCと直営それぞれの現実を見極めつつ、メリット・デメリットをよく比較した上で、
あなたにとってより良いと思える選択をしてください。

……という私の空想(仮説)ではあるのですが、
特に他業種から塾業界に参入されている方の参考になれば幸いです!

塾業界の経験者で独立を考えておられる方は、
FCよりも個人塾で独立する方がいいと私は思います。

その際のサポートが必要であれば、ぜひ弊社にご相談ください!

【今回のまとめ】
・フランチャイズもメリット・デメリットあり
・本部(本体)がなぜフランチャイズ化を進めるのか、その理由を考える

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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