先日、下記のニュースや記事が報じられました。
【従業員の性犯罪歴確認、河合塾や早稲アカなど参加方針】
https://news.yahoo.co.jp/articles/9fb59e86deedb513388a8eb611020c0431c7b32e
【学習塾業界の6割が「日本版DBS制度」参加へ – 子どもの安全を守るための重要な一歩】
https://edu-match.com/juku-dbs-participation/
ご存知の方も多いかと思いますが、日本版DBSは、子どもと接する職業に就く人に
性犯罪歴等がないことを無犯罪証明書などで確認する制度です。
英国で導入されているDBS(Disclosure and Barring Service)を参考に、
日本版として検討されてきました。
当初は学校などでの運用がメインで想定されていましたが、
「塾も対象としてほしい」という声は多方面からあがっていました。
学習塾は制度への参加が任意ではありますが、
報道にもあるように多くの学習塾で制度活用するのではないでしょうか。
普通に考えれば当たり前ですよね。
学習塾が日本版DBSに参加して、
従業員・スタッフやその候補者の性犯罪歴を確認することができれば、
生徒さんたちを守るための対策を取ることができます。
私もこの制度は大賛成ですし、学校や保育所同様、
すべての学習塾で義務化されることを望みます。
実際に、昨年も大手塾さんでの講師による性犯罪が事件になりましたよね。
それ以前も、こうした事例は定期的に発生していました。
その事実を私たちは忘れてはいけません。
大手塾さんであれば、防止策を徹底するなどして運営を継続できても、
個人塾で同じことが起こった場合、即終了と思って良いでしょう。
とにかく、性犯罪の芽を事前に摘むことが、
生徒さんや保護者さんだけでなくあなた自身を守ることにもなるのです。
ただ、この制度での懸念点があります。
それは、何をもって性犯罪の前歴とするかについて
「有罪判決が確定した「前科」に限定する」としている点です。
もし事件を起こした事実があったとしても、示談などで不起訴になった場合、
日本版DBSのデータベースに載らないことになります。
個人的には、前科ではなく「事件を起こした」という事実を判断基準にしてもらいたいです。
また、日本版DBSだけで性犯罪を止めることはできないとも考えています。
理由はシンプルで、自塾で起こす犯罪が初犯になる可能性があるからです。
日本版DBSは性犯罪者をデータベース化して管理する仕組みですから、
「Aさんは性犯罪者か否か」という判断をすることしかできません。
その予備軍まで判断することは不可能です。
そこはやはり、私たちが面接や就業後の働きぶりなどを通して
しっかり見極めていくことが必要なのですが、一緒に働く仲間を
「この人は性犯罪の傾向を持っているかも」という目で見続けるのは心が痛みます。
それに、人は見た目によらないですからね。
人柄の良さでも知られたメジャーリーガーの通訳が
実はギャンブル依存症で横領まで働くなんて、ほぼ誰も想像もできなかったはずです。
ましてや人の性的志向など、表面的な部分だけで判断できませんから難しいところです。
加えて気をつけないといけないのは、
罪を犯すのは社員・スタッフなど教室運営側ばかりとは限らないということです。
生徒さんが犯罪者になる可能性もゼロではありません。
実際に私の知人の塾さんでは、男子生徒が盗撮をしてしまった事例もありました。
また、社員と生徒さんが恋愛関係になり、
隠れて交際していたという事例も聞いたことがあります。
恋愛や交際そのものは犯罪ではありませんが、
やはり塾という環境の道義的にはよろしくないです。
したがって、性犯罪歴については日本版BDSが対応するとしても、
予備軍が行動を起こさないための仕組みをそれぞれの塾が確立していくことが、
リスクヘッジとなります。
ちなみにマクドナルドでは、魔が差してクルー(スタッフ)が売上金を盗んだりしないよう、
制服にポケットをつけないなどの環境を作っています。
私たち学習塾関係者もこれを見習って「魔が差さない環境」を作っていきましょう。
できることはたくさんあるはずです。
私が思いつく範囲で今すぐできる(やるべき)対策としては、3つあります。
「防犯カメラの設置」「誓約書」「男女別のトイレ設置」です。
まず、防犯カメラは設置してあるだけで抑止力となります。
悪いこともしていないのに、
防犯カメラがあるとなぜか「ドキッ」とすることってありますよね。
弊塾では教室内外に防犯カメラを8台設置しています。
もちろん録画機能付きです。
そして、その様子を社員デスク横のモニターに映し出していて、
私や教室長だけでなく、学生講師や生徒さんも見ることができます。
「見られている」「悪いことをすればバレるよ」という環境は、強い抑止力になるはずです。
次に、誓約書です。
弊塾は、学生講師採用時の雇用契約書に
「生徒と教室外での接触禁止」「生徒とSNSでのやりとりの禁止」「生徒と交際禁止」
などを明確に記載し、サインしてもらっています。
違反した場合は、損害賠償請求を行う旨も当然明記しています。
個人塾の場合、まともな雇用契約書もなく、
契約書なしの口約束で雇用する塾もあると聞きますが、
それは本当に危険ですので、雇用契約書は必ず取り交わしましょう。
大手塾さんでは、毎月誓約書を交わすなど、
繰り返し徹底されているところもあるようです。
弊塾では雇用時の1回のみでしたが、毎月だとリマインド効果も高まりますし、
私も見習って、定期的に誓約書を交わしていきたいと思います。
最後に「男女別のトイレ設置」です。
教室にトイレが1つしかなく、
男女共用の場合は盗撮等のリスクが高いことを理解しておくべきです。
誰でもトイレにカメラを仕掛けることができるわけですから。
だからこそ、トイレは男女別にして、2つ設置しておくことがマストだと考えます。
同性愛者はどうするんだという意見もあるでしょうが、
絶対数として性犯罪の多くが異性間で起きているわけですから、
まずはそれを抑止するだけでも意味があるはずです。
なお、トイレ増設となった場合、大家さんの許可を取る必要から始め、
工事費用もそれなりにかかると思います(それでも100万円はかからないはず)が、
設置の許可が出るのであれば、工事をするべきです。
大家さんに理由を丁寧に伝えることで理解してくださるかもしれませんし、
持ちビルで犯罪が起きる可能性があると言えば検討してくださるケースもあるはずです。
7〜80万円で安全・安心を買えるなら買っておくべきだと私は思います。
どうしてもトイレが1つ(共用)しか設置できない場合は、
防犯カメラの台数を増やしたり、
トイレ周辺(プライバーシーにもちろん配慮の上で)にカメラを設置したりなど、
できる対策を行いましょう。
私も娘を持つ親として、トイレが1つしかない塾には絶対に行かせませんし、
同様の考えを持っている保護者さんも多いのではないでしょうか。
いかがでしたか。
日本版DBSが実際に始まるまでまだまだ時間がかかります。
また、日本版DBSが学習塾で義務化し浸透したとしても、
それだけで未然の防止をすることは不可能です。
自塾の身は自塾で守ることが大前提として、できる対策をおこなっていきませんか?
生徒さんを守るだけでなく、自身の塾を守るためにも。
【今回のまとめ】
・日本版DBSだけだと性犯罪は抑止できない
・日本版DBSと並行して、自塾でできる対策を行う