【Vol.804(2024.06.21)】「入塾30名・退塾20名」から「入塾15名・退塾5名」の時代へ

先日、個別指導塾を50教室ほど展開されている代表とお話しする機会がありました。

増収・増益し続けておられる、とても元気な塾さんです。

特に理念が素晴らしく、ここまで大きくなられたのはその理念の影響も大きいと思います。
本当にすごいです!

さて、代表がお話しされていた中で、とても印象的なワードがありました。

「生徒数が伸び続けているけれど、昔は入塾も多かったぶん、
退塾が多少出てもカバーできた。
ただ、少子化などの影響もあり、年間の入塾数は年々減ってきている。
うちは全社あげて退塾数を減らす取り組みをしていたこともあって、
入塾数が減っている以上に退塾数が減っているのでトータルで生徒数は増えている」。

いやー、素晴らしい取り組みですよね。
理想的な教室運営です。

生徒数が10名増えるとしても、
「入塾30名・退塾20名」と「入塾15名・退塾5名」では、まったく質が異なります。

後者のほうが圧倒的に教室の質も高いですし、業務効率も良くなり、
現場の教室長や社員、講師スタッフも働きやすくなるはずです。

少子化の波は止まりませんし、
後者の形をとれる塾が10年・20年先も残っていくことができるのではないでしょうか。

前者の意識のままでは、5年、いや下手をすると3年も持たない可能性だってあります。

そこで今回は、入塾と退塾のバランスについて一緒に考えてみませんか?

まずは退塾についてです。

教室の規模にもよりますが、個別指導塾で年間20名も退塾が出ているようでは、
中身に問題があるといわざるを得ません。

社員や講師の行動や人間性など、何かがおかしいと考えた方がいいです。

そういう教室は、悪評が広まり少子化の影響以上に入塾も減り、
退塾も増えるという負のスパイラルに陥ってしまいます。

では、どのくらいの退塾数であれば許容範囲なのでしょうか。

何度か当メルマガでもお伝えしておりますが、


私が目安にしているシンプルな計算法があるのでぜひ参考になさってください。



まず、受験学年(中3、高3)をのぞいた

昨年度のMAX生徒数と年間退会数を出してください。



この「年間退会数÷MAX生徒数」から出てきた数値が「退会係数」です。


私が基準としている目安は以下の通りです。


~~~~~

・退会係数0~0.05・・・内部充実がきちんとできている塾

・退会係数0.05~0.08・・・内部充実がまあまあな塾

・退会係数0.08~0.12・・・内部充実が甘い塾

・退会係数0.12以上・・・内部充実ができてない塾

~~~~~



仮にMAX生徒数60名で退会数が6名だったら、退会係数は6÷60=0.1。

9名だったら、9÷60=0.15となります。



共に退塾数が多すぎるという評価です。



MAX生徒数が60名であれば、
年間の退会数は2~3名(大会係数0.03~0.05)に抑えるのが基本ラインかなと思いますね。

もちろん退会数は0名を目指すのが教室長の責務でもありますが、
みなさんの教室では退会係数いかがでしたか。

また退塾は、教室運営の通知表とも言えます。
退塾をゼロに近づけるほど、通知表の数値も高いということですね。

退塾数の少なさを人事評価の基準にしている塾長さんは、
退塾をしっかり抑えることの重要性をわかっておられるなと思います。

なお、特に直接的なトラブルがあったのでないかぎり、
先月や今月(直近)に出てしまった退塾の原因は、
半年前の行動に問題があったと考えると良いでしょう。

退塾も、数ヶ月にわたる不満の積み重ねや熟慮の上で我慢できなくなり、
「(やっぱり)今月で辞めます」となるケースが多いです。

もし今退塾が続いている場合は、
半年前の自身の行動や教室の状況などを振り返ってみてください。

必ず原因があるはずです。

「学生講師が辞めて社員が授業に入らざるを得なくなり、生徒さんとの関係が希薄になった」
「定期的な面談や電話連絡など、やるべきことを怠った」
「学生講師の採用がうまく行かず、質の悪い大学生を採用せざるを得なかった」

など、心当たりが見つかるのではないかと思います。

ちなみに退塾係数のメルマガ記事は先述の代表も読んでくださっていたようで
「かなり参考にさせてもらいましたよー。おかげで退塾がめちゃ減りました」
と言っていただけて、私もテンションが上がりました(笑)。

続いて入塾です。

例えば今、年間で30名もの入塾がある場合でも、
基本的には右肩下がりの未来が待っていると思います。

ご存知の方も多いと思いますが、2013年の出生数は103万人で、2023年は76万人です。

10年で25%も減ったという事実を受け止めなければいけません。

これからの未来も同様、いや今まで以上に出生数が減っていく中で、
その前提の上でどう塾運営をしていくか考えていく必要があります。

だからなおのこと、入塾を増やす以上に退塾を減らす意識が大切なのです。

もちろん、入塾数は重要ではないという意味ではありませんし、
内部充実を高めまくって紹介などを増やすなど、入塾数増加に対する努力は必要です。

「少子化なので、入塾数が減っても仕方ありません」と
努力もせずに言っているようではダメですよ!

大事なのは、退塾を減らす取り組みをすれば、
入塾が減ったとしても結果として生徒数は増えるということです。

入塾が減るということは、新規面談や体験授業などを行う回数が減るということでもあります。

そうなれば、塾長や教室長はその余剰時間を今いる生徒さんへの対応に使えるはずです。

保護者さんに連絡したり、生徒さんと1on1の面談をしたりと、
内部充実度を上げるチャンスなのです!

これを実施することで、さらに内部充実が高まり退塾も減るという好スパイラルが生まれます。

「(生徒さんを)たくさん入れないといけない」という追い込まれた気持ちをなくせますし、
入塾に関連する業務も軽減できるはず。

きっと、塾長や社員さんのモチベーションアップへとつながるでしょう。

昔は「退塾がたくさんあっても、それ以上に入塾すればいい」
みたいな風潮も正直あったと思います。

しかしその考えは、これからは絶対に通用しません。

そもそも、そんなふうに生徒さんを使い捨ての数字のように見ること自体が、
極めて不健全で失礼な発想であると認識すべきです。

ましてや子どもの数が減っている現代、
もし、近隣に退塾をゼロにする(目の前の生徒さんを大切にする)ことに
全力を注いでいるような塾さんがあれば、
生徒さんはそちらに流れて入塾も一気に止まり、とどめを刺されることになるでしょう。

繰り返しになりますが、退塾を減らす努力をすることで、入塾が減ったとしても対応できます。

私は20年ぐらい前から、「退塾をなくせば生徒数は増える」と言い続けてきましたが、
これが今後の塾運営のトレンドになると強く確信しています。

退塾を減らす取り組みを各教室で考え、実施していきましょう!

【今回のまとめ】
・「増やす」よりも「減らない」教室運営を

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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