【Vol.810(2024.07.12)】石丸伸二氏に見る、生徒さんへの接し方

先日の東京都知事選で、何かと話題をさらった石丸伸二氏。
舌鋒鋭く論理的に相手を論破していく姿勢がとても印象的ですよね。

ネットでは、さっそく「石丸構文」なるネタが流行っているようです(笑)。

石丸氏に関してはさまざまなトピックが飛び交っていますが、
「これって、学習塾にも通じるものがあるな」と思ったやりとりがありました。

石丸氏の言う「政治屋」の「定義」は何なのか、
社会学者の古市憲寿氏とやり合ったエピソードです。

<「なぜ喧嘩腰?」古市憲寿氏、日テレで石丸伸二氏との“舌戦”に視聴者が覚えた“違和感”>
https://news.yahoo.co.jp/articles/a7a21a4913bd9070ff2e96b449b99bb07fd2957a

話をするときは、前提となる「定義」が共有できていないと議論がかみ合いません。

例えばA・B・Cさんの間で「友達は大事だ(or大事ではない)」という議論があったとして、
どういう人のことを「友達」と呼ぶのかの定義が共有できていないとどうなるでしょうか。

仮に、三者が自分の中ではこのように「友達」を定義していたとします。

Aさんの考える「友達」:何でも話せて、心許せる信頼できる人
Bさんの考える「友達」:趣味などを共有できる人
Cさんの考える「友達」:クラスメイトなど、自分の意思とは無関係に同じ集団に属している人

Aさんは、この定義のもと「人生において友達は大切だ」と主張し、
Bさんは「いればいいけど、大事というほどでもない」、Cさんは「大事ではない」と言います。

いつまでたっても議論が平行線になるのは目に見えていますよね。

まずは「友達」とは「○○な人」のことと定義します、とした上で議論しないといけないのです。

仕事においてもそうですよ。

上司が「この書類を明日までに仕上げてくれ」と指示したとして、
「明日まで」とは明日の何時を指すのでしょうか。

明日の始業時?
上司が出勤してくるまで?
日付が変わる今晩の24:00?

この定義の認識が違っていると、トラブルのもとです。

この場合、上司が明確に「何時まで」と指示するか、
部下も「何時までですか?」と聞くべきだと思います。

では、これらのケースを学習塾に置き換えてみます。

宿題をやってこない生徒さんに「きちんとやってきなさい」と叱ったとしましょう。

このとき「きちんと」とはどういう状態を指すのでしょうか。

(1)課されたものを、もれなくやってくること?
(2)演習問題などを全問正解してくること?
(3)ノートのとり方なども含めて、丁寧にやってくること?

あなたの中で「きちんと」の定義が(1)だったとしても、
生徒さんによっては極端に家庭学習が苦手で、
宿題のすべてを終わらせる(問題などを解く)ことができなくとも、
自分なりに頑張って、自分としては「きちんと」やったつもりかもしれません。

このとき先生から「きちんとやりなさい!」なって叱られた日には、
「自分はきちんとできない人間なんだ……」と自信をなくしてしまうかもしれません。

他にも「頑張ろうね」なども何気なく行う声掛けですが、
「頑張る」とはどういう状態か定義した上でのコミュニケーションでなければ、
先生は「頑張れと言ったのに、この子は頑張らないなあ……」、
生徒さんは「頑張ってるのに頑張れと言われる。あの先生キライ」という
行き違いも起こります。

「やる気を出す」「全力を尽くす」「まじめにやる」なども定義があいまいで、
同じような行き違いが起きそうです。

心理学的には「スキーマ」で考えることができると思います。

スキーマとは、「経験の積み重ねによって、一定の情報からものごと理解するための枠組み」
のことだそう。

例えば、小さな子どもはどんな動物も「わんわん」と言ったりしますよね。

これは「犬」を理解するときに、「四本足で歩く」生き物を「犬」だと認識するスキーマです。
まだ経験が少なく、「犬」を構成する前提情報が「四本足で歩く」しかないからです。

ここに「犬はワンワンと吠える」「猫はニャーと鳴く」など別の経験が加わることで、
犬と猫を区別して認識できるようになります。

つまり、先ほどの「きちんと宿題をやってくる」「頑張る」「やる気を出す」「まじめにやる」なども、
生徒さんのスキーマによって定義づけられている可能性は多分にあるということです。

私たちの考える「きちんと」「頑張る」「やる気」も、自分の経験からくるスキーマです。

これら、人によって解釈が分かれる要素は、やはり定義づけが大事だと思います。

「きちんと」ではなく「ここからここまで問題を解いてきてね」、
「まじめに」ではなく「ゲームやスマホは封印して、勉強時間にそれ以外のことはしない」など
子どもたちが分かりやすい定義を共有し、具体的に指示することが必要ではないでしょうか。

自分は分かっているつもりでも、定義が共有できていないことはよくあります。

お互い、普段の自分の言動を振り返ってみませんか?

【今回のまとめ】
・定義があいまいだと意思疎通がうまくいかない
・生徒さんが分かりやすい、具体的な定義で指示を出す

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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