【Vol.1057(2026.11.06)】AIが相談相手になる時代に、塾ができること

子どもが友人関係の悩みを抱えたとき、誰に相談するのでしょうか――

小中学生を対象にした調査で、
2位に「AI(ChatGPTなど)」が入ったことが話題となりました。

<小中学生の相談相手、生成AIが2位に 1位は「誰にも相談しない」>
https://kai-you.net/article/96842

そこで今回は、これを個別指導塾運営に照らして考えてみましょう。

AIがこれだけ社会に浸透し、AI脅威論なども囁かれる中ですから、
ニュースとして「AIが子どもたちの新しい相談相手になっている」ことに
注目する人が多いのは無理もありません。

一方で、ここで見落としたくないのは、「誰にも相談しない」が1位だったことです。

この二つの意見は別物のように見えますが、
根底には共通するものがあるようにも感じました。

いずれも「身近な人に相談する」ことを避けているからです。

子どもたちは、なぜそうするのでしょうか。

もしかしたら、相談したことで余計に事態が悪化するのを恐れているのかもしれません。

大人に話せば、本人の意思とは関係なく問題が大きくなったり、
説教されたり、正論を押しつけられたりする可能性があります。

あるいは、自分の悩みをうまく言語化できず、
相談したいけれどもできないのかもしれませんね。

子どもにとって「相談する」という行為は、ビジネス上の「ホウ・レン・ソウ」とは違います。

自分の弱さや失敗、時には誰にも知られたくない感情を相手に見せることでもあり、
相手がどう受け止めるか分からない以上、
「誰にも相談しない」という選択にも、それなりの合理性があるのでしょう。

子どもや若者が専門的な支援を求めない理由を分析した研究では、
恥ずかしさ、周囲からの評価、相談内容の秘密が守られるかという不安など、
複数の要因が確認されているそうです。

また、話を尊重して聞いてもらえることや、否定されずに受け止めてもらえることは、
援助を求めやすくする要因として報告されています。

つまり、子どもが相談するかどうかは、
悩みの大きさだけで決まるわけではないということですね。

私たち大人は「気軽に相談してね」「なぜ相談してくれなかったんだ」と考えますが、
「この人に話しても大丈夫だろうか」というフィルターがそもそもあるのです。

そう考えると、AIが相談相手として選ばれていることも合点がいきます。

AIには、相談したことを友人に知られる心配がありません。

相手の表情や反応を気にする必要もなく、
自分の考えを否定されることへの不安も比較的小さいでしょう。

もちろん、AIの回答が常に正しいわけではありませんし、
実際の人間関係に介入して問題を解決してくれるわけでもありませんが、
それでも、誰かに話すことに抵抗がある子どもにとって、
気持ちを言葉にするための相手にはなり得ます。

人間に相談するときに感じる負担がAIにはないということです。

子どもが求めているのは、いつも正しい答えを出してくれる大人ではないのでしょう。

すぐに評価したり、否定したり、論理的な正解を求めたりしているのではなく、
まずは自分の話を聞いてくれる(安心して話せる)ことの

プライオリティが高いのだと思います。

これを、個別指導塾での生徒さんとのコミュニケーションに置き換えて考えてみましょう。

個別指導塾には、講師と生徒さんが一対一で向き合う時間があります。

学校の先生や保護者さんとは異なる立場で、
子どもと継続的に接することができるのも特徴です。

だからこそ、学校や家庭では話しにくいことを、
塾の先生には話せるという場合もあると思います。

もちろん、塾講師はカウンセラーではありませんし、
専門的な支援が必要な問題まで抱え込んで、塾で対応しようとするのは危険です。

大切なのは、子どもが悩みを打ち明けられる関係をつくることと、
塾では対応できない問題を適切な支援につなぐことでしょう。

そのためには、特別な相談時間を設けること以上に、日常の関わり方が重要になります。

例えば、「なぜできないの」と問い詰めたり、
理由も聞かず結果のみを見て叱ったりしていては、生徒さんは決して心を開かないでしょう。

逆に、以前に話していたできごとを講師が覚えていて、次の授業でさりげなく尋ねてみたり、
生徒さんが話したくなさそうなときには、無理に聞き出そうとしなかったり。

こうした対応は、特別なコミュニケーション技術というより、
日々の指導の中で生徒さんを一人の人間として尊重する姿勢です。

また、話してくれたことをどのように扱うかも大切です。

本人や周囲の安全に関わる問題であれば、
保護者さんや専門機関と連携する必要がありますから、
何でも秘密にするという約束はできません。

しかし、そうした例外があることも含めて、
普段から情報の扱い方を誠実に伝えておくことはできるはずです。

話した内容がどこまで共有されるのか分からなければ、
子どもは安心して相談できないですものね。

これらをふまえて忘れてはならないのが、
「生徒さんが相談してこない=困っていない」ではないということではないでしょうか。

今回の調査で「誰にも相談しない」と回答した子どもたちの中にも、
誰にも話せない事情が隠れている可能性はあります。

だからと言って、生徒さんの気持ちを無理に聞き出すことはできません。

だとするなら必要なのは、相談を待つだけではなく、普段から生徒さんの様子に関心を持ち、
「話したくなったときに話せる」余地を残しておくことだと思います。

AIが相談相手になる時代に、塾がAIに対抗しても仕方ありません。

それでも、日々の表情や行動の変化に気づいたり、言葉にならない違和を感じ取ったりは、
人間の講師だからこそできることだと思います。

ただしその価値は、「何でも相談してね」と声をかけるだけでは生まれません。

ふだんの何気ないやり取りの中で、
話しても否定されない、困ったときに気にかけてもらえる、必要以上に踏み込まれない、
といった経験が積み重なって、初めて相談できる関係が育まれるのです。

AIに相談する子どもを否定するのでも、塾がすべての悩みを引き受けるのでもなく、
子どもが必要なときに人の支援にもつながれる環境をつくっておくことが大事だと思います。

【今回のまとめ】
・子どもの相談相手がAIになる時代
・なぜ相談しないのか(できないのか)という、子どもの心理を理解したコミュニケーションを

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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