ごろのニュースで、文科省の検討会議が
「今後採用するすべての教員は、採用後10年程度の間に、
特別支援学級の担任などを2年以上経験」
することが望ましいとの報告書案を示しました。
<今後採用の教員、特別指導学校など指導経験を>
https://www.fnn.jp/articles/-/340704
発達障害などへの理解が進んだことにより、これまで見過ごされていた子どもたちも
特別支援学級などで個々に応じた教育が受けられる環境整備が進んでいます。
そのため、以前であれば見過ごされてきた子どもたちが特別支援の対象となり、
特別支援学級やそこに所属する児童・生徒の数が増えてきました。
これをふまえ、全教員が特別支援への理解や指導技術を身に付けるべし、という考えです。
本来であれば、大学で専門課程において学ぶべき特別支援に関する知識やスキルを、
現場での2年の経験でカバーできるのかといった問題はありますが、
それはまた別として、私たち学習塾でも注目しておきたいニュースかもしれません。
塾業界においては、専門知識に基づいた特別支援に関する指導体制は
遅れていると言わざるを得ないからです。
ここで注意しておきたいのは、「特別支援」=「知的障害」とは限らないということ。
そういう先入観を持つ人は少なくないですが、上述したように、
発達障害や四肢の障害、身体虚弱、弱視や難聴を持つ子どもたちも対象になっています。
また、障害だけでなく、(日本語の運用に不安がある)外国籍の子どもたちも
特別支援の対象です。
先日の当メルマガで、ウクライナから避難してきた子どもたちの
学習サポートに関する記事届けしましたが、
今後は彼らのような子どもも増えてくるかもしれませんね。
こうした子どもたちが入塾を希望してきた場合、私たちは正しく対応できるかを考え、
必要であれば受け入れ態勢を整えることも大事だと思います。
もちろん、塾は公教育ではありません。
受け入れられない生徒を断ることは自由です。
情や、目先の生徒数確保といった実益に惑わされて入塾させ、
適切な対応が取れないのであれば、それはむしろ不誠実な行為です。
それならば、お互いのためにも最初から入塾を断る方針を取るのも一つの判断でしょう。
ただ、一方で塾の「社会的意義」という側面から考えた場合、
「困っている子どもたちを助ける」のも私たちのミッションと言えます。
特に補習型の個別指導塾は、学校の授業についていけないなど、
公教育だけでは補いきれない部分に対するセーフティネットの役割を果たしてきました。
それは特別支援についても同様です。
仮に今回の文科省の案が実現しても問題は残っており、
特別支援の専門免許を持つ教員は圧倒的に不足しているのです。
特別支援学校で働く教員のうち、知的障害に関する免許保有率は90%とまずまずですが、
視覚障害は66%、聴覚障害は61%と低くなっています。
全教員が特別支援の経験を積めるようにしたとしても、
おそらく、学校だけではカバーしきれない、
あるいは満足なサポートが得られない子どもたちは出てくるでしょう。
そうなったときに、彼らはどこに助けを求めればいいのかという話です。
近年では、発達障害を持つ子どもへの学習指導に専門性を持ち、
積極的に受け入れている塾や、家庭教師も見られるようになりました。
塾企業が、放課後等デイサービス事業に乗り出すケースも見られますね。
特別支援(の学習サポート)へのニーズは、社会的に高まっていると言えます。
これをあえてビジネス的視点で捉えるなら、新たな市場とも言えるわけです。
教員志望で、大学で特別支援を学んでいる学生や、
退職した特別支援の教員を講師として雇用することができれば、
何らかの対応はできるかもしれません。
おそらくみなさんの塾でも、過去には
「ああ、今思えばあの子は何か障害を持っていたのかも」という
「助けてあげられなかった」生徒さんがいらしたのではないでしょうか。
今こそ、そういう子たちに手を差し伸べる意味でも、
塾が特別支援への理解や専門技術を高めることは
検討の余地があるのではないかと思います。
【今回のまとめ】
・特別支援のニーズは、社会的に高まっている
・塾でも、特別支援への理解や事業展開を