【Vol.581(2022.04.27)】総合型選抜(旧AO入試)対策を自塾でどこまで行うか

大学の総合型選抜、弊塾でも9年前、セミナーでご登壇いただいた藤岡先生にマンツーマン研修をお願いし、
かなりみっちりとご指導を受けています。

あまりの研修の濃さに、
教室長が「藤岡先生の顔を見るのはしばらく大丈夫」となるくらいでした(笑)。

その後も、藤岡先生やその右腕クラスの方々からたくさんのご指導をいただき、
難関大にも総合型選抜で合格者が出るようになりました。

総合型選抜は、徹底した自己の掘り下げが重要なうえ、
一般の教科学習のように正解が存在するものではありません。

「ここまでやれば完璧!」という目安やゴールも設定しにくいので、
掘り下げ始めたらまるで底なし沼です。

そんな中で頑張った生徒さんも、心を折らさず向き合った教室長たちも本当にすごいですし、
ご指導くださったみなさんには感謝しかありません。

ただ、ここまでなら美談で終わるのですが、
現実の対策は生徒さんも指導者もかなりハードです。

そこで今回は、関関同立やGMARCHクラス、
あるいはそれ以上の最難関クラス大学の総合型選抜対策が、
実際のところどれだけ大変なのかをお伝えしてみたいと思います。

まず結論から申しますと、総合型選抜対策をやるために必要なのは「覚悟」です。
私もそれをひしひしと感じています。

数年前、関西私大最難関クラスの関西学院大学(以下、関学)に2名、
さらに、中堅上位に当たる産近甲龍レベルにも合格者が出ました。

結果は素晴らしいのですが、教室長が本当に大変で
疲弊しきってしまった苦い経験があります。

簡単に言えば、関学志望の2人の対応につきっきりになってしまい、
夏期講習会期間中、他の生徒さんへのフォローが激減してしまったのです。

関学クラスになると、簡単に志望理由書を書くことは不可能ですが、
もちろん生徒さんが最初からまともな文章を書けることなどありえません。

文章力もそうですが、中身も薄っぺらなものです。

ですから、教室長と生徒さんが1on1で何度も話し合って、考えや想いを引き出します。

また、「なぜ関学なのか」という志望理由を明確にするため、
過去の経験などを掘り下げ、志望理由と結びつけていきます。

それを言語化していき、何度も何度も添削を行っていく流れでした。

しかし、1on1はマンツーマン授業みたいなものですし、
生徒さんの志望分野に関する専門的な業界知識を調べるために
参考文献を片っ端から読みあさる必要もあります。

しかもそれが2名、他大学志望を含めればさらに人数は増えます。

とてもではありませんが、手が回りません。

藤岡先生や知人に添削のサポートをしてもらいました。

先述したように、志望理由書には完成レベルの絶対値がありませんので、
入試対策に終わりがなく、可能な限りやり続けることにもなります。

教室長も労働時間が膨れ上がり、体調を崩すこともありました。

できる限りサポートしてあげたいという教室長の献身的な対応でしたが、
AO入試(当時)というものを真正面から受け止めてしまったケースです。

私もここまで教室長の手が回らなくなるとは予想以上で、本当に申し訳なく思っています。

生徒さんが見事に合格してくれたのがせめてもの救いでした。

これをふまえて弊塾では、総合型選抜に関して、こんなガイドラインを作るようにしました。

・関関同立クラスは、塾外人材にも手伝ってもらって負担軽減を行う
・関関同立クラスの塾内対応は、1名まで。以降は塾外の人材にすべて依頼
・産近甲龍クラスは、教室長と副教室長で対応。2名まで

対応できる体制がないのに(あえてこういう言い方をしますが)安っぽい正義感で引き受け、
なんでも自分たちで抱え込もうとして、
結果すべてが中途半端な対応になるのは本末転倒だと思います。

自塾のキャパを超えるのであれば、アウトソーシング(外注)するようにしたのです。

一般入試で受験する高校生、中学生や小学生がたくさん通っている個別指導塾において、
総合型選抜対策は片手間でできるものではありません。

労働時間を増やせばいいかもしれませんが、
せっか業界のブラック体質改善が進んでいるのに、
それに逆行するような選択はありえません。

総合型選抜の専門塾があるのも納得できます。
そうでないと、運営が本当に大変であるということです。

したがって「総合型選抜対策をうちもやっていこう」とお考えの塾さんは、
本当に対応できるのか、誰が担当するのか、1on1する時間は取れるのか、
添削は誰がやるのかなど、よ~く考えた上で採用してください。

安易に取り入れてしまうと、最も害を被るのは生徒さんです。
しかも、総合型選抜を受験しない生徒さんにまで影響が及ぶのです。

それを分かった上でやるのであれば、
ぜひ覚悟を決めて生徒さんにために頑張っていただきたいと思います。

塾内スタッフのみでガッツリやるのも手ですし、
必要に応じて外部にサポートしてもらったり、
あるいは完全に丸投げしたりと、方法自体がないわけではありません。

これだけ大変な対策ですが、もし形を作ることができれば
「総合型選抜対策もできる個別指導塾」として、地域の評判になるはずですし、
高校生がたくさん集まる塾になると思いますよ!

大変ですが、学習指導をしているだけでは踏み込めないような部分まで
一人の生徒さんと本気で向き合える(そうしないと合格できない)のは、
総合型選抜対策の醍醐味であるのは事実です。

総合型選抜対策を取り入れるかどうか、考える機会にしてみてください!

【今回のまとめ】
・総合型選抜対策は、担当者の負担がかなり大きい
・外注も選択肢の一つ

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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