【Vol.698(2023.06.10)】居場所としての学習塾

今年の4月に肝いりで発足した「子ども家庭庁」。

縦割り行政を解消することを目的に、これまで厚労省が担ってきた虐待問題や、
内閣府が担当していた子育てや少子化対策などを一本化する形で担う、
いわば子ども政策の司令塔です。

その子ども家庭庁が、今かなり力を入れているのが「子どもの居場所づくり」だそう。

先ごろもこんなニュースを目にしました。

<「家と学校以外の居場所がほしい」こども家庭庁が指針策定へ>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/k10014069781000.html

昔のように地域コミュニティがあまり機能しなくなっている現代社会で、
家と学校以外に居場所がない子どもたちは少なくありません。

しかし、もしそこが子どもたちにとって居心地が悪いのであれば……

ニュースでは、東京都文京区が中高生向けに設置した交流スペース
「b-lab(ビーラボ)」が紹介されています。

b-labは、勉強やゲーム、運動などができるスペースがあり、自由に過ごすことができる場所。
朝9時から夜9時まで利用でき、休みは年末年始のみ。

専任のスタッフのほかボランティアの大学生がおり、彼らが悩みを聞いてくれたり、
話し相手になってくれたりします。

このような環境の中で、いわゆる“サードプレイス”として機能しているのです。

ところで、これらb-labの特徴を見て、何か気付くことはありませんか?

そう、塾の事業内容や運営体制と非常に親和性が高いのです!

ということは、塾もやり方次第では、そういう場所になれる可能性があります。

これで子どもたちに寄与できるならとても嬉しいことですし、
ビジネス的な視点で見ても、「居場所」としての機能を持つ塾は
かなりの潜在ニーズがあると言えるのではないでしょうか。

実際、国がわざわざそういう場所を作ろうとしているわけですからね。

b-labでの取り組みを見ていて「ここは塾とは違うな」と思ったのは、
子どもたち自身も任意に運営側に参加して、
イベントや掲示物のアイデアなどを出しているということ。

これは、塾をb-labのような場所にする意図がなかったとしても、
とても参考になる視点だと思いました。

確かに塾のイベントや掲示物などは、ほとんどの場合は塾側が考えます。

少しひねくれた言い方をすれば、塾側が勝手に決めたものを、
有無を言わさず押し付けているわけです。

押し付けているつもりはもちろんないでしょうが、
「子どもたちが自分でそれをやりたいとは思っていない」と先入観と思い込みで、
そのような発想が頭に浮かばなかった、というのが正しいかもしれません。

でも、よくよく考えてみれば、それらを生徒さんに企画させてあげても、
塾側にデメリットなんてあまりないですよね。

むしろ、それで子どもたちの主体性が育ち、「自分たちの教室」として愛着がわき、
さらには「居場所」として機能するのであれば、こんな素晴らしいことはありません。

もしかしたら、生徒さんたちも
「塾はそういうことをさせてもらえる場所じゃない」という先入観から言わないだけで、
機会さえ与えれば喜んで取り組むかもしれません。

これっと、とても大切なことですよね。

勉強への取り組みも、私たちのアプローチ次第で劇的に積極的になる子を
たくさん見て来たはずなのですから。

場合によっては、学習の進め方も「こうやりなさい!」というものばかりでなく、
子どもたちの意見を聞いてみるのもいいかもしれません。

もちろん、塾としての個性や経営方針もあると思いますから、
「塾は福祉じゃないんだから、そこまでやる必要はない」
「うちは余計なことはせずに、勉強する(させる)場であることに特化する!」
というのももちろんアリです。

「居場所」であることが塾の正解ではないかもしれませんが、
少なくとも塾を「居心地の悪い場所」と思われたくないですよね。

「勉強するためだけの場所」「そのためにお金を払っている」みたいな、
ドライな割り切りをされてしまうのも、心情的にはちょっと寂しい気持ちになります。

「居場所」としての塾の在り方、少し考えてみませんか?

【今回のまとめ】
・子どもたちのサードプレイスが求められている
・塾とサードプレイス機能の親和性は非常に高い

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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