【Vol.699(2023.06.14)】個人塾の属性化は不可避

今回は塾の属人性や属人化について考えてみたいと思います。

「属人化」とは、特定の業務について、
担当する一人の社員しか詳細や進め方が分からない状態のことです。

つまり「その人でないとダメ」ということですね。

まえがきの内容とも関連するのですが、九州でお会いした塾長さんたちは、
みなさんパワフルで魅力たっぷりの方々でした。

私が各地の塾長さんとお話する際、いつも念頭にすることは以下の二つです。

・自分の子どもを、その塾へ通わせたいか
・自塾(個別教育フォレスト)の隣に、その塾ができたらどう思うか

今回はお会いした先生方の塾は、いずれも自分の子どもを通わせたいと思いましたし、
「自塾の隣にあったら(手強すぎるので)嫌だなー」というのが率直な感想です。

そこで実際、どんな条件を満たす塾さんにそんな印象を抱くのか振り返ってみたのですが、
一つの結論としては、塾長が魅力いっぱいなのは当然として、
「塾長が現場に入っているかどうか」でした。

つまり、属人化されているということです。

一つのビジネスモデルとして見たとき、
現在の傾向として属人化はリスクと見なされがちです。

特定の人だけがその仕事ができないのではなく、
みんなができる仕組みを作って効率化するのが一般的ですね。

しかし私は、個人塾に関して言えば属人化を強めるのはアリだと考えています。
(定義が難しいですが、ここでは仮に1〜4教室ぐらいまでを運営している塾を個人塾とします)

個人塾は塾長が塾の看板ですから、塾長さんもいい意味でクセが強いですよね。

そんな塾長が現場に入っている塾は、かなりの脅威です。

仮にシステムやサービスをまったく同じ内容で再現したとしても、
塾長の個性や魅力はコピーできません。

逆に、塾長が現場におらず誰かに任せているケースは、
(質自体は良い塾であったとしても)そこまで脅威ではなくなります。

むしろ「隣の塾が広告宣伝してくれるので、そのぶん自塾の問合せも増えてラッキー」
とさえ思ってしまいます。

カリスマ塾長が作った塾だとしても、その当人が教室にいないのであれば、
魅力や強みはどうしても軽減されてしまうでしょう。

つまりその塾長さんでなくても教室が回る状態で、
良くも悪くも平均化されているわけですから、
そうなると大手塾さんに資本力や安定したクオリティに対しては不利になります。

塾長個人の魅力や経営センスに裏打ちされた教室運営で人気になっていたのに、
規模が大きくなって社員さんに教室を任せたとたん、
生徒さんが激減するのは塾経営あるあるだと思います。

1教室ではうまくいったのに、
2教室目・3教室目を展開してうまくいかないケースもこのパターンかもしれません。

1教室目は塾長の魅力で人気になっていた教室ですから、
それと同じ強みを2・3教室目で展開することはほぼ不可能なのです。

例えば、教務に関してマニアックな先生がいて、
その教務力に惹かれ通う生徒さんもいるはずです。

そのマニアックさを社員さんやバイト講師が再現できるかと言えば、難しいでしょう。

つまり、塾長自身が自塾の属人性の高さに気づいておらず、
同じものを他の教室でも提供できると思っているパターンです。

属人性が強い塾は拡大できないとまでが思いませんが、
好調な塾運営が属人化の成果である可能性を忘れてはいけません。
(もちろん、「オレはすごいんだ!」と驕ることとは違います)

基本的に、私自身も含め、個人塾の塾長の多くは社会不適合者だと思っています(笑)。
もちろん誉め言葉です。

社会に適合せず(できず?)、普通はイヤだとか、マニュアル化されたものがキライとか、
組織として動くのが苦手で自分の好きなようにやりたいとか、
そういう価値観を持っているからこそ、逆に個人塾として光るのだと思います。

しかし、個人塾(しかも塾長が超個性的)でありながら、
複数教室をうまく展開されている塾さんもいくつか存じ上げています。

そうした塾(塾長さん)たちに共通する傾向は、いきなり社員に教室を任せるのではなく、
半年〜1年は自分の下につけて、同じ空間で学んでもらっているということです。

塾長の考えや理念、そして実際の現場での動きを直に見せることで、
自分に何が求められているのか、自塾はどうして人気なのかを実感してもらい、
社員さん本人に趣旨の理解や自覚を促しながら育てています。

そして、社員さんがある程度学んだ段階で新規出店すると、
塾長がその教室にいなくてもうまくいく可能性がアップするようですね。

私の知人の塾長さんは、社員さんと現場で一緒に働き背中を見せつづけ、
今では、各教室長さんがそれぞれの現場で、意識高く教室運営されています。

ただ、ここまでレベルを高めるために数年かけて研修されていましたし、
失敗や痛い思いも重ねながらだったはずです。

ブレずにそれをやり通されたことに、尊敬の念しかありません。

ですから、個人塾の塾長先生で
「現場は部下に任せてよう」「2・3教室目を出店しよう」とお考えの方は、
部下があなたの理念や行動を7〜8割方理解するまでは、
ご自身も現場の最前線に出て一緒に働くことがベストだと思います。

これをおろそかにすると、魅力のない単なる「普通の個人塾」となってしまいますし、
複数教室を出店しても苦戦される可能性が高いです。

「人が採用できたからあとは任せた!」が、最もやってはいけないパターンです。

個人塾は属人化ありきだと認識した上で、自分が常に現場に出続けるのか、
後釜をしっかり育成するのか、塾長の考えや行動を浸透させ複数教室を展開していくのか、
考えていく必要があるのではないでしょうか。

もし現在、人に任せてうまくいかずに頭を悩ませている塾長さんがいらっしゃるなら、
そのあたりを見直されてみると良いかもしれません。

人を採用できたからといって、手を抜いていませんか?胡座をかいていませんか?
自分自身を見つめ直すことで、解決の糸口が見つかるかもしれませんよ。

自分自身の戒めも込めつつ、みなさんの参考になれば幸いです!

【今回のまとめ】
・個人塾は属人化を大切にすべき
・人に任せるときは、時間と労力を投じてきちんと背中を見せる

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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