【Vol.731(2023.10.04)】塾勤務経験者を個人塾で雇うべき?

今回は、正社員として塾勤務の経験がある人材を、

個人塾で雇う際のメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

 

まず、個人塾で社員を雇うきっかけは、

「2教室目を出店するために」や「生徒数が増えて、一人では対応できなくなってきた」

などが挙げられるでしょう。

 

なお大前提として、弊塾でも正社員は雇用していますが、

過去も含め塾勤務経験者はおりません。

 

したがって今回の私の意見は、

知人やコンサル先の塾さんで見聞きした事例がベースになっています。

 

ただ、そうした事例を約10件見てきましたが、

良い面も悪い面もある中で、非常に似たような課題を抱えるケースが多かったのです。

 

なかなかの高確率で、何らかのトラブルなどが起きているんですよね。

それらから総合的に判断しますと、

「1〜2教室を持つ個人塾が塾勤務経験者を雇うのは、できるだけ避けたほうが良い」

というのが私なりの結論です。

 

個人塾の場合は、経験者より未経験者を雇って育てるほうが

うまくいく確率が高いように感じています。

 

こんなことを言うと、個人塾で働こうと考えておられる塾勤務経験者さんを

敵に回してしまうかもしれません(汗)。

 

あくまで個人的意見ですので、ご理解いただければ幸いです。

 

とは言うものの、もちろん経験者を雇うことのメリットももちろんあります。

例えば下記のような事例です。

 

【メリット】

・ゼロから研修しなくて良い

・塾勤務の流れやイメージがある程度分かっているので、すぐに現場に馴染む

・生徒さんや保護者さんとのコミュニケーションがすぐにとれる

・教室をすぐに任せることができる

・塾長に代わって、鍵の開け閉めなどもすぐに任せることができる

・終業時間が遅いことにも慣れている

 

塾の1日の流れをすでに知っているので、即戦力になることが最大のメリットでしょうか。

 

教室をそのまま任せたい、2教室目の社員が退職するので

そこに配置したいといった場合でも、短期間の研修で柔軟に対応できる可能性が高いです。

 

また、当人のレベルにもよりますが、採用翌日から保護者面談をすることもできるでしょう。

 

塾長やオーナーからすると「将来の右腕ができた」という感じかもしれません。

 

塾で勤務したことがあるというのは、やはりそれだけ心強いのです。

 

一方で、デメリットは以下のようなものが考えれられます。

 

【デメリット】

・前の塾の「型」が抜けない

・自塾の方針を伝えた際、「前の塾ではこうだった」と主張する(何かと比較する)

・塾運営を知っているだけに、学ぼうとする姿勢が低い

・前の塾を退職したのは、本人が原因の可能性がある

・塾運営の流れを理解しているぶん、手の抜きどころを知っている

・1教室運営だと、ウマが合わなくなったら教室の雰囲気も最悪になる

・自分が辞めると塾長が困ることを知っているので、何かと要求してくる

 

社員を雇って上手くいかないケースあるあるですよね。

 

共感していただける塾長さんも多いのではないでしょうか。

 

経験値があるのはいいんですよ。

しかし、前職での勤務経験がベースになっている部分も多いので、

それを基準に考える(それが正解であると思っている)傾向はどうしても出ます。

 

前職が職務に対して厳しい塾であればそれが基準になりますし、

生ぬるい現場であればやはりそれが基準になります。

 

前職の経験をリセットしてゼロから新たにというのは、なかなか難しいですので、

自塾のやり方や理念を浸透させるのに時間がかかるでしょう。

 

こちらのやり方を伝えても、前職でのやり方をどうしても拭えずに、

「前職ではこうでしたから」と言われればもうどうしようもありません。

 

「いやいや、その前職を辞めたのでしょう?」と突っ込みたくなりますよね(笑)。

 

逆に、未経験者(他業種組)だと、変に色がついていないぶん

真っ白なキャンパスで伝えやすいですし、本人も吸収しやすい環境であるとも言えます。

 

弊塾では学生講師を採用する際も、

他塾での勤務経験がある講師はすべて採用を見送っています。

理由は社員の場合と同様です。

 

また、辞めグセがついているとも考え、自塾でも辞められる可能性が高いと判断しています。

 

前職の塾にも問題があるのかもしれませんが、

そもそも能力の講師だったらその塾もなかなか手放さないでしょうから、

やはり「辞めた」という事実は、採用の基準として大きいです。

 

また、個人塾で社員を雇ってしまうと、

その社員とウマが合わなくなった場合が悲惨極まりないです。

 

複数の教室があれば、そちらに配置すればまだ顔を合わせる必要はありませんが、

1教室しかない場合は、教室の雰囲気がかなり悪くなります。

 

学生講師もその雰囲気を察知しますので、

みんながやりづらくなってしまうループに突入です。

 

そもそも、前の塾を退職しているということは、何らかの理由があるはずです。

 

それが会社への不満によるものなのか、そこでできることはやり尽くして

ステップアップを求めているのかは分かりませんが、

なんらかのトラブルを起こして辞めた可能性もあります。

 

自塾でも同様のトラブルが起こるリスクは否定できません。

 

加えて、経験者が社員になった場合、いきなり教室長になることで

「自分はできる人間」という思い上がりや勘違いを生む場合もあります。

それがエスカレートしていくと、立場をわきまえずに塾長に過剰な要求をしたりするのです。

 

そして、自分の意見が通らないとなると、

人員不足を盾にして退職のカードをちらつかせたりします。

 

経験者だけに、悪い意味で手の抜き方を知っている面もあり、

要はズルさを覚えているんですよね。

 

ちなみにそうしたズルさは、たいていの場合上司や塾長の姿を見て学んでいます。

採用云々以前に、やはり塾長はみんなの見本になる存在でなければありません。

 

いかがでしょうか?

塾勤務経験者がダメと否定しているわけでも、能力が低いと言いたいのでもありません。

個人塾との相性が悪いのではないか、という話です。

 

中規模以上の塾さんであれば、他の社員さんもたくさんいますし、

組織の仕組みも段階を踏んだ研修制度も充実しているでしょう。

採用されていきなり大きな権限を与えられることはあまりなく、

勘違いするケースが少なくなると思います。

 

もちろん、経験者の方が個人塾で採用されて塾長の右腕になったり、

結果を出して塾長から信頼される存在になるケースもあります。

しかし、私が知る限りでは少数派です。

 

個人塾での経験者採用、みなさんはどうお考えですか?

事例があれば教えてもらえると嬉しいです!

 

【今回のまとめ】
・個人塾で社員を採用する場合は、かなり慎重に

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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