【Vol.754(2023.12.22)】それって当たり前?

鹿児島で、県立高校の先生がPTA会費の返還を求めて訴訟を起こしたそうです。

<PTA回避の返還求め提訴>
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc4129f8d421d3f64fc413fd447daea705298c13

PTAは教員と保護者で作るものですが、先生本人の意思確認なく自動的に加入となり、
給料から天引きされていたことを巡っての訴えです。

「入るのが当然という暗黙の了解」となっていたことを問題視しています。

金額は微々たるものなので、お金を返して欲しいと言うよりは
制度の不備を改善したいがための訴えのようですね。

ご本人も「PTAに入るのが当たり前という現状に一石を投じたい」とおっしゃられています。

このニュースを見て私は、塾経営にも言える部分があるなと思いました。

なんとなく惰性で「そういうものだろう」と払い続けている費用や経費ってないですか?
例えばリース料金や消耗品費、通信費などの固定費です。

塾の規模や運営スタイルによっては、
OA機器をリースするほどでもなく、レンタルやコンビニでコピーするほうが
合理的な場合もあるでしょう。

あまり使っていない備品があるのではないか、
もっと安いインターネットプロバイダはないのか……などなども考えることができます。

もっと言えば広告費だって、
本当にチラシを出す必要があるのか考えられるかもしれませんし、
教材などのロイヤリティは妥当かと考えると「うーん……」となる人もいるでしょう。

これらはいわゆる「経費削減」としての視点ですが、
他にも銀行振り込みにしていた月謝のお支払いをカード引き落としにしたほうが、
支払い忘れへの督促などの手間も省けて時間コストも削減できるかもしれませんよね。

逆に、塾側がいただくお金にしても、相手からしたら「???」というものもあるでしょう。

例えば保護者さんが「この『教材費』ってなに?」とか、
「『設備維持費』って払わなきゃいけないものなの?」とか思っているかもしれませんし、
「金額の妥当性を示して欲しい」と思っているかもしれません。

もはや当たり前になった「入会金無料キャンペーン」にしても、
そもそも入会金ってなぜ必要なのか、と考える人もいるでしょう。

教材費や設備維持費を徴収するなとまでは言いませんが、
ちゃんと保護者さんには説明することが大切ですね。

また少しネットを調べただけでも「夏期講習ってどうしても受講しなくてはいけませんか」
という質問サイトへの書き込みも頻繁に見かけます。

私たちからすれば当然受講して欲しいですが、
保護者さんにとってそれは当たり前ではないのだという意識は必要かもしれませんね。

仮に受講するとしても夏期講習は決して安い費用ではありませんから、
保護者の皆さんは必死の思いで家計をやりくりして費用を捻出してくださっているはずです。

それでも保護者さんも私たちも「それが子どものために必要である」と考えるから
夏期講習を実施するし、安くない費用をお支払いいただいているわけです。

ただ、先日カリスマホストのROLAND氏がインタビューで、
「店で何百万も使ったお客がカップラーメンを買って帰る生活をしていることをどう思うか」
という質問に「自分の店にそこまでの価値を見出してくれてうれしい」と答えたことが
物議をかもしたニュースがありましたよね。

何が正しいのかは分かりませんし、当事者同士がそれを幸せだ、
正しいことだと感じているなら問題ないのかもしれませんが、
構造的には、夏期講習も一緒なのではないかと思わず考え込んでしまいました。

他にも、「交通費の支給額に上限があるのはおかしい」と思っている
講師がいても変ではありません。

まあ逆に海外では通勤交通費が出ることのほうが異常という国も多いですけどね。

会社から遠くに住んでいるのは自分の都合であって、
実費負担を減らしたければ引っ越せばいいという考え方のようです。

そういった面も含めて、自分たちの慣例や常識が、
相手にとっても同じだとは限らないということです。

また、コスト面以外でも「それが当たり前」だとして
深く見直すこともなく悪い習慣になっている部分もあるのではないでしょうか。

例えば生徒さんの受験において、
偏差値の高い学校とそうでない学校が志望校候補にあったとして、
塾としては偏差値の高いほうをすすめがちです。

「より高いレベルを目指して頑張ってみよう」というのが塾側の言い分ですが、
そもそも「偏差値の高い学校へ行ったほうが良い」とは限りません。

生徒さんがそれを望んでいるのか、
たとえ偏差値は低くても行きたい学校があるのなら、
その自己実現をサポートするのが大人としての役割だとも言えます。

なんとなく「偏差値の高い学校のほうがいいよね」と考えていないでしょうか。

ましてやそれが塾の進学実績のためであるなら、良くない発想だと思います。

いずれにせよ、自分や業界の常識が当然と思ってはいけません。

ここを見直すことで経費削減になるかもしれませんし、
より生徒さんや保護者さんが求めるサービスを提供できるかもしれません。

前例や慣習にとらわれず、クリティカルに考えたいですね!

【今回のまとめ】
・自分の常識=相手の常識ではない
・慣例を見直すことでチャンスが広がるかも

この情報をシェア
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

目次