【Vol.817(2024.08.07)】高校入試に内申点は必要!?

連日の夏期講習、みなさん本当にお疲れ様です!

あと3〜4週間後には新学期も始まりますが、
それを楽しみにしている生徒さんがいる一方で、
複雑な気持ちを抱いている生徒さんも存在します。

何らかの理由があって、学校に通学できない(するのが辛い)生徒さんです。

新学期が始まる前週あたりは、特に憂鬱な表情をしている可能性もありますので、
アンテナをしっかり立てて、できる限りのフォローをしていきたいところです。

先日、不登校の生徒さんに対する調査書(内申点)の記事を読みました。

【不登校の子、高校受験に調査書の壁 特別枠も受ける自治体も】
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c51dcde7278e667c6390c1c5c1c1b8eac1ee531?page=1

公立高校入試(特に全日制)の場合、基本的にはどの都道府県でも、
「調査書(内申点)と学科試験の得点」で決まると思います。

合否判断における調査書と試験得点の比率は都道府県によって違いがありますが、
弊塾の地元・兵庫県公立高校の場合は「1:1の500点満点」です。

調査書の比重が半分もあります。

それぐらい学校での取り組みが重視されていると考えることができます。

また、調査書の内申点は、
中3の1・2学期で判断されるため(=中1・2の成績は度外視)、
中3の1・2学期が非常に重要であることも保護者さんは理解しています。

ちなみに、記事の中にもありますが、調査書とは
「進学のための入学試験や就職に当たり、
在籍校から受験先等に対して生徒の学習状況を伝えるために作成する書類」
のことで、中学校では9教科の内申点が書かれています。

また、部活動や生徒会活動を記入する欄もあります。

そして内申点は、東京都教育庁の入試担当者の説明によると
「中学校で生徒の授業の理解度を把握し、日々の授業をよりよいものにするためのもの」
と定義されているようです。

おそらくこの定義自体は、全国ほぼ同じ認識だと思います。

したがって、学校の先生方が不登校の生徒さんに対し
「評価しづらい・できない」という事情も十二分に理解できます。

学校に来てコツコツ頑張っている生徒さんを自身の目で見ていたら、
そうではない生徒さんよりも評価してあげたいという感情が湧くのも当然ですし、
不登校の生徒さんに関しては、授業の理解度を把握できないわけですから
評価のしようにもできません。

となると、何らかの理由があり学校に行くことができない生徒さんには
非常に不利な現行制度とも言えます。

小・中学校で30万人を超える不登校の生徒さんがいる状況ですから、
生徒さんに問題があるというより、現代の学校という制度が
現状の子どもたちにマッチしなくなっていると考えるべきです。

30万人という数値の異常さを、客観的に受け止めなくてはいけません。

個人的は、新しい高校入試制度として、
調査書(内申点)不問の高校入試があってもいいのではと思います。

大学入試で言う「総合型選抜入試」や「一般選抜入試」といった形でしょうか。

一般選抜入試なんて、調査書なしで当日の学科試験の点数オンリーで判断しますからね。

これらが全日制の高校入試でも広がってもおかしくないと思いますし、
広がるべきだと考えています。

表現は良くないかもしれませんが「たかが」中学校に行かないだけで、
高校進学の選択肢がめちゃくちゃ狭められるのはどうかと思います。

現状だとこういった生徒さんは、ほぼ通信制高校一択になるでしょう。

確かに、この数年で通信制高校の認知イメージも少しずつ変わりつつあり、
高校進学の一つの選択肢にもなってきましたし、
多様な特徴・特色を持つ通信制高校が増えてきたのはとても良いことだと思います。

しかし、15歳でそれしか未来の選択肢がないのは残酷です。

中学で不登校だった生徒さんに対しても、
全日制高校にチャレンジできる制度はあったほうがいいと感じています。

また、不登校の生徒さんに対して、評価できないから「1」をつけるのではなく、
評価できないという意味の「/(スラッシュ)」という表記などに統一する配慮が必要だと思います。

例えば、周囲に迷惑をかけてばかりで素行が悪いという意味の「1」と、
担任の暴言により不登校になってしまった生徒さんの「1」を
同列に扱って良いのかということです。

これではあまり不憫すぎて可哀想だと思う先生方も多いのではないでしょうか。

ところが、リンク先の記事のコメントをいくつか読んでみると、
かなり辛口(批判的)なコメントが多くてびっくりしました。

「不登校の子が全日制行ったところで、やめるに決まっている」
「不登校の子たちは甘えている。社会に出たらもっと苦労する」
「学校に行っていないのだから全日制に行けないのは当然」

……などなど、よくそんなことが書けるなと個人的には怒りすら覚えます。

おそらく、ご自身やご自身のお子さんは不登校にならない(ならなかった)、
そしてそれが「普通であり正常である」という前提に立っているのだと思います。

現代の教育現場にいる人であれば分かっていただけると思いますが、
不登校は劣っているわけでも異常なのでもなく、誰でもなりうる可能性があるものです。

起立性調節障害や過敏性腸症候群といった内的要因もありますが、
運悪く席替えで隣に座った子が運悪くいじめっ子だった、
先生から暴言を吐かれて学校へ行くのが辛くなったなどの外的要因など、
冗談抜きで、運ゲーみたいな要素もあります。

実際に弊塾でも「えっ、まさかこの子が不登校になったの!?」という
卒業生が何人かいました。

「たとえ全日制高校に合格したとしても、すぐに不登校になる」みたいな
偏見に満ちた単なる主観に耳を貸す必要はありません。

実際に行ってみないと分からないじゃないですか。

中学とは環境が変わることで、高校から学校に行けるようになる場合もあります。

起立性調節障害も年齢とともに回復して行くケースも多いと言われていますし、
外的要因が変わるだけで人間の心理や行動も大きく変化するものです。

職場環境が極悪で能力を発揮できずにいた人が、
転職した会社では環境が合っていて大活躍――みたいなイメージでしょうか。

全日制高校に進学したけれどやっぱりしんどいとなれば、
次の選択肢を見つけていけばいいだけの話です。

ですから、大学の一般選抜入試のように調査書なしの当日の得点のみの選抜や、
総合型選抜入試のような受験生の学ぶ力を総合的に評価・判断する仕組みが
高校入試にもどんどん導入されていくといいですね。

大学入試の総合型選抜サポートを行っている塾さんであれば、
高校入試向けの対策も余裕でできるはずですから、塾としての事業の幅も広がります。

少し話がそれますが、実は弊社では今年6月から
フリースクール事業にも取り組んでいます(初リリース情報です)。

コンセプトは、「中3生限定&全日制高校を目指す勉強中心」のフリースクールです。
塾運営のノウハウを生かして、学習面のフォローを徹底することにしています。

9月から通学してくれる中3生もおり、
教育委員会や在籍中学校とも連携をとって準備を進めているところです。

在籍中学の校長の判断になりますが、
フリースクールに通うことで中学校の出席認定を取ることもでき、
現行制度を急に変えることができない現状においては、
内申点対策としても役立つと判断しました。

様々な理由で中学校に行けない生徒さんが内申点を取れる仕組み作りや、
調査書(内申点)なしでも全日制高校を受験できる仕組みなどが増えて行けば、
生徒さんにとって高校入試の選択肢が広がります。

今、学校に行けずにしんどい思いをしている生徒さんが、
10年後・20年後に「そういえば、中学の時不登校だったなー」と
笑い話にできるような社会を作っていくことが、私たち大人の責任ではないでしょうか。

みなさんはどうお考えですか?
よかったらご意見をお聞かせください!

【今回のまとめ】
・高校入試にも、大学入試の総合型選抜や一般選抜のような仕組みを
・子どもたちの未来を閉ざすのではなく、広げる教育制度を

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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