【Vol.830(2024.09.20)】採用時期をずらせば、人材確保は捗る?

近年、学生講師の採用環境が厳しくなっているのは
みなさんも肌で感じておられることと思います。

かつては高時給のバイトとして人気があった塾講師も、
他業種の時給アップ傾向もあって、給与面だけではなかなか優位に立てない状況です。

もっと言えば、子どもたちに何かを教える「先生(講師)」という仕事自体に
魅力を感じない若者が増えているのかもしれません。

そこで今回は、採用増加に向けて私たちは何をすべきか、
学校が行っている取り組みを参考に、一緒に考えてみましょう。

まず事実として、学校の先生の採用状況もかなり厳しいようです。
志願者数や倍率は低下傾向にあり、半ば社会問題化しつつあります。

教職員のブラックな労働環境が報道などでも取り上げられるようになり、
教員志望者が減って人材不足に陥り、現職教員の負担は増してさらに激務となり、
志望者もさらに減るという完全な負のスパイラルに陥っている印象です。

そんな中、こんなニュースを目にしました。

<教員採用試験の日程早期化 文科省が効果検証を行うと表明>※有料記事
https://www.kyobun.co.jp/article/2024090603

内容を要約すると、近年、国は教員の人材確保を念頭に
全国規模で採用時期の前倒しを進めていますが、
本当にそれで効果があったのか検証するというニュースです。

教職を目指す人は、学校で教育実習に参加したり、指導実技の選考があったりと、
学生にとってはなかなか忙しいスケジュールです。

当然、民間企業も視野に入れながら就活する学生も多いわけで、
その両立の難しさから、対策が不十分になったり、教職への道を諦めたりする人もいます。

そこで、採用試験の時期を前倒しして選考を受けやすくし、
教員になる人を増やそうという狙いがあるようですね。

これを聞いて、みなさんはどう思われますか?

実際の教育現場(先生方)からは、
「そこじゃないだろう……」という批判的な声が多いようです。

前倒しがまったく無意味だとまでは言いませんが、
問題の本質は教職の労働環境にあるわけで、その改善こそ急ぐべきであって、
単に人(教員の数)を増やせばいいとか、
選考を受けやすくすればいいという問題ではない、という意見ですね。

個人的には、私もそう思います。

教育委員会に対して実施したある調査でも、「なぜ前倒しするのか」を問うた質問で
「文科省の指示だから(仕方なく)」という消極的な答えが多く出ていました。

いくつか実際の事例を見てみると、前倒しの効果があった都道府県もあれば、
逆に志願者などが減った(効果がなかった)都道府県もあったようです。

転じて、塾ではどうでしょうか。

講師バイトへの応募人員を増やすために、小手先の対応に陥っていませんか?

もちろん、採用方法や、講師募集広告の作り方、広告を掲載する採用媒体、
あるいは学校と同じように採用時期などを見直すことも必要だとは思います。

しかし、もし塾講師という仕事自体の人気が下がっているのなら、
その場しのぎの対策ではなく、講師職の魅力そのものや、
給与面も含めた自塾の労働環境そのものを高めていくことが大切です。

例えば弊塾でも、就活サポートなどを見越し、
業務に直接関係のないものも含めた学生講師向け勉強会を開催するなどしています。

時給についても、社会情勢や競合他塾・他業界とも比較して、
定期的にアップし、講師が満足のいく金額を提供できるように頑張っています。

オンラインの普及により、(場合に応じた)リモート指導にも対応するなど、
多様な働き方の導入も意識しているつもりです。

他にも、労働時間や休みの取り方など、工夫や改善できる点は
探せばまだまだたくさんあるのではないでしょうか。

そこをおろそかにして、テクニックやノウハウにばかり走ってしまうと、
問題の本質を見失ってしまいかねません。

塾は、元生徒から学生講師へ、講師から社員登用へ……といった、
いわゆる“内リク”という特殊な採用文化を持つ業界でもあります。

そこに頼りすぎて(それが前提になりすぎて)、
他業種がバイト募集のためにどんな工夫や努力をしているのかを学ぶ意識が
希薄になっている可能性もあります。

学校と違って、塾は民間企業です。
国や自治体の制度といった、大枠に捉われず採用活動ができます。

ましてや、個人塾や小規模塾であれば、大手さんと比べても小回りが利きやすいはずです。

「今までこうしてきた」「これが塾だから」という前例や先入観にとらわれず、
ゼロベースでの改善意識を持ちたいものですね。

【今回のまとめ】
・講師募集について、学校の教職員採用から学ぶ
・小手先のテクニックではなく、問題の根本的改善に意識を向ける

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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