【Vol.704(2023.06.30)】手広くいくか、絞っていくか

これからの学習塾経営は、極論すると
「手広くいくか、絞っていくか」の二択になっていくのではないかと予想しています。

「何も変えることなく今まで通り普通に……」というのが1番危険かもしれません。

特に個人塾の場合は、「選択と集中」という運営が大切ではないかと考えています。

簡単に言えば、「対応する生徒さんの層を絞る」ということです。

今でも「小・中・高、全学年・全教科対応」や「どんな学力の生徒さんでもOK!」といった
スタンスでアピールされている個人塾さんは多いです。

もちろん「いろんな子どもたちの力になってあげたい」という心意気は素晴らしいですが、
一方で、こんなに受け皿を広げた場合、一般的な個別指導塾の教室の広さ(15〜20坪)で
すべて対応できるのかという点では疑問が残ります。

例えば、大学入試に向けて高3生が勉強しているところに、
小学生低学年の子が走り回っている状況では、高3生が集中できません。

最初は「かわいいねー」とやさしく見守ってくれるかもしれませんが、これが毎回となると
「何のためにこの塾に来てるんだろう」「もっと勉強しやすい環境の塾に行きたい」と
思ってしまうのは無理もない話です。

逆に小学校低学年の子どもたちに、強制的に静かにさせても
「この塾、つまんない」となってしまうかもしれません。

幅広く受け入れることはできても、
それぞれの満足度は下がる可能性があるので気をつけたいところです。

中には持ちビルがあるとか、30〜50坪ぐらいのフロアで
学年や習熟度別に部屋を分けるなどして、うまく運営されている個人塾さんもあります。

しかしそれは少数派です。

基本的には、15〜20坪という限られた空間で運営することになりますので、
取捨選択が必要になってくるのではないでしょうか。

では、何をどう選択していけば良いのでしょうか。
具体例を3つほど挙げていきたいと思います。

1.静かに勉強したい生徒さんと、ワイワイするのが好きな生徒さん

静かな環境を塾に求めて通っている生徒さんにとって、
休憩中に話しかけられたり、教室全体がワイワイガヤガヤしていてはたまりません。

逆もありきで、みんなでワイワイすることで通塾するのが楽しくなり、
モチベーションが上がる生徒さんにとって一言も喋ってはいけない環境は、
修行(苦行?)になります。

朱に交われば赤くなるで、周りに感化されて静かに勉強しだすかもしれませんが、
まあ普通に考えると転塾するのが目に浮かびます。

受け入れる生徒さんの幅を広げとは、
このように自塾の方針や雰囲気が合わない生徒さんも受け入れるということです。

退塾が出る塾は内部充実度も低いと考えることができますので、
長い目で見た時には衰退していく可能性が高いです。

2.受験を目指す高校生と元気な小学生

先述したように、大学入試を目指して自習室をフル活用している高校生の横で、
元気良く走り回っている小学生がいる環境は、
ほのぼのしているように見えて運営上はあまり好ましくないです。

受験生は大学に合格するために通塾しているのであって、
小学生とほのぼのするために来ているわけではありません。

教室を完全に分けるとか、高校生と小学生がまったく重ならない時間帯で
教室運営できるのであればいいのですが、一般的な教室キャパの場合、
高校生をとるか小学生をとるかという判断を迫られます。

ちなみに弊塾はこの選択で高校生をとる判断をしていますが、
「この判断をして良かった」と心から思っています。

3.学習塾と習い事コンテンツ

学習塾と習い事は親和性が高そうに見えて、意外と微妙です。
親和性が高いのは、同じハコでできるという部分かと思います。

学習塾は学習指導がメインで、成績アップや志望校合格など、目標達成をサポートする場所です。

一方で、習い事コンテンツ(プログラミング・そろばん・習字・こども英会話等)は、
あくまでも習い事です。

小学生向けの習い事教室で“青田買い”し、
中学生以降は本格的に通塾してもらおうというマーケティング戦略もあるかとは思いますが、
個人的には「学習塾はあくまで学習塾」というスタンスがいいと思います。

弊塾の生徒さんは6割以上を高校生が占めているので、
そろばんや習字をやってもあまり良い印象を持たれませんし、
トータルでは塾の評価を下げる場合がありえます。

しかし、それは弊塾が中学生・高校生がメインだから言えることかもしれません。

小学生・中学生がメインの塾さんであれば、
習い事コンテンツと抱き合わせてサービス提供するのもありかもしれませんね。

知人の教室では、学習塾として生徒さんがたくさんおり、
習い事コンテンツでもたくさんの生徒さんが集まっている塾さんもあります。

要はやり方と(塾としての)方向性しだいというところなんでしょうね。

少子化がどんどん進む中ですから、「選択と集中」をすれば、
ますます生徒が減ってしまうのではと思われるかもしれません。

しかし私は、選択と集中で「特化」することが、
塾のブランディングにつながると考えています。

特に個人塾は、誰でもウェウカムで中途半端に手広くやって無個性になるより、
特定の部分に秀でた塾にしていくことが大切な要素ではないでしょうか。

そんな塾が、これからも根強く生き残っていくのではないかと考えています。

もちろん特化するだけでなく、内部充実を図るのは当然ですよ!

ちなみに、私の知人で「選択と集中(特化)」により人気塾を創り上げているケースでは、

・中学生専門塾
・高校生専門塾
・一つの中学校(校区)専門塾
・英語専門塾
・数学専門塾
・関関同立(難関私大)専門塾

といった事例が見られます。

もちろん何かに特化しても、市場のニーズが変われば、
それがずっと通用するわけではありません。

ものすごいスピードで時代や教育は変化していますしね。

あなたの塾がもし「生徒さんが集まらなくて困っている」のであれば、
一度運営を見直しをしてみてはいかがでしょうか。

また「たくさんの生徒さんに通塾してくれており、今のところ問題はなさそう」という塾さんも、
調子のいい時にこそ、今後の方針を見直していくとリスクヘッジになるはずです。

私も来年度は大きな「選択と集中」を実行していく予定です!

【今回のまとめ】
・個人塾だからこそ、選択と集中が必要
・手広くいくならハコを広げるなどの投資が必要

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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