【Vol.740(2023.11.03)】新たな取り組みは、浸透するまで

教室を運営していると「もっとこうしたほうがいいかも」「こんなことをやってみたい」など、
いろんなアイデアが湧いてくることが多いですよね。

それを実際に行動にするかどうかは、
その人自身の行動力や教室の状況に応じてさまざまですが、
可能な限り実践してみたいところです。

ただ、実際に行動することになった場合に大切なのは、
「その取り組みが浸透するまでやり抜く」ことです。

やってみたはいいものの、反応が悪かったり、
周囲から「やる意味があるのか」といった否定的な意見が出たりして
自身も懐疑的なり、すぐにやめてしまうようでは意味がありません。

当メルマガでもいつも「とりあえずやってみる」の精神が大事だとお伝えしていますが、
もちろん、社員・スタッフの同意や導入した際のシミュレーションなど、
色々な根回しや準備も大切です。

これをふまえて、今回は弊塾での取り組みを例に、3つほどご紹介してみますね。

(1) 高3生の強制自習

開校してから数年は、高3生に関して自習の取り決めはありませんでした。

たまに授業後にも自習したり、授業がない日にも来たりする生徒さんもいましたが、
基本的には当人まかせのゆるい感じです。

ただこの状況では、やはり大学受験で思うような結果を出すことができませんでした。

その原因を教室長と話し合い、1つの理由として挙がったのが
「絶対的な勉強量が足りない」ということでした。

そこで圧倒的に勉強量を増やしてもらおうと、
翌年から高3生には強制自習を必須にしたという経緯です。

高2からすると寝耳に水で、「まじで、そんなん聞いてないし!」みたいな感じでしたが、
保護者さんを含めて面談を行ったり、本人と1on1などで必要性を説き納得してもらいました。

そもそも保護者さんは強制自習に大賛成ですので(親としてはそうですよね・笑)、
スムーズに移行しやすかったのですが、1人だけどうしても
「強制されることはイヤだ」と主張を続ける生徒さんがいました。

もちろんその意見も分かりますが、塾のルールとして決めたことでしたので、
本人とは「強制自習に納得してもらうか、転塾するか」を1on1でしっかりと話し込み、
最後は「強制自習に参加する」と判断をしてくれました。

「いやなら辞めろ」と一方的に突き放したわけではないものの、
少し強引だったという自覚や反省もあります。

それでも最後に納得してくれたのは普段からのコミュニケーションがあったからこそですし、
結果論ですがその生徒さんは第一志望に合格することができました。

こちらも成果を出すために必死でしたが、
この取り組みが志望校合格の可能性を高めることは確信できましたので、
翌年以降は、「高2の3月からは強制自習」が完全にルール化されました。

今では、新規の入会面談時に「強制自習がある」と伝え、
納得した上で入塾していただくようにしていますが、
形を作り上げるまではなかなかタフでしたね(笑)。

(2) 休憩時間を10分から15分に変更

開校当初は19:00〜19:10の10分間を、コマ間の休憩時間としていました。

しかし生徒さんから「授業の合間に夕食を取る時間として短すぎる」という意見をもらい、
これを19:00〜19:15の15分に変更したのです。

確かに、早食いすると胃もびっくりしてお腹が痛くなったりしますよね。

保護者さんやその他の生徒さんにも、休憩時間を延ばす理由を伝えて同意を得ました。

実は、この取り決めには続きがあります。

15分休憩の仕組みを数年間続けたのですが、
これに合わせて「パン(軽食)のサービス」を始めたのです。

元生徒の保護者さんが経営しているパン屋さんが、
日替わりでパンを毎日届けてくださいます。

そうすると、生徒さんはお弁当などを持参せずにすみますし、
小腹を満たす量としてもちょうど良かったようです。

きちんとした夕食は、帰宅後に自宅で食べてもらいます。

このサービスを始めるまでは、「教室でガッツリ夕食!」という生徒さんも多かったですが、
逆にその後はパン1個を食べるのに15分も休憩は不要ということが分かり、
実は昨年度から休憩時間を10分に戻しました。

決めたことをやりきってそのまま維持するのではなく、
状況に応じて修正していくという良い事例になったと思います。

講師には休憩中も事務給を支払っていますし、
それが15分→10分となったことで5分ぶんの人件費を削減でき、
かつみんなが5分早く帰宅できるようにもなりました。

(3)中学生に英単語アプリの導入

3年ほど前に英単語アプリを導入しました。

AIが生徒さんの記憶状況を把握し、
記憶が定着しやすいように出題順などが工夫されるアプリです。

今では、中学生全員がこの英単語アプリに週3回取り組むようになりましたが、
導入して浸透させるまでなかなか大変でした。

私は映像やITコンテンツの運用や導入がうまいほうではないと思うのですが、
それでもなんとか形にできた事例です。

アプリでも何でもそうですが、物珍しさもあって、
導入当初は生徒さんも率先して取り組んでくれます。

しかし、だんだん飽きてくるのがITコンテンツですよね。
進めていくうちに、生徒さんの取り組む姿勢にもばらつきがでてきました。

AIが搭載されているといっても、仕組み自体は映像授業とそう変わらない
一方通行のシステムですから、対面授業には敵わないのは仕方ない部分もあります。

とは言え、中学生全員の英単語力を向上させたい一心で導入しましたから、
私も負けていられません!

自習中にアプリをやっている生徒さんに声かけしたり、
「このアプリをやり続けたら英語のテスト、100点近く取れるよ」と伝えたりなど、
社員や講師の力も借りながらモチベーションが下がらないように工夫しました。

また、毎週月曜日に行っている「英語音読暗唱&計算講座」の時間を15分延長して、
この中に組み込んだり、通常授業(数学・英語関係なく)後に残って
15分間実施してもらうなどの取り組みも行いました。

そのぶん帰宅時間が15分遅くなりますので、
これも保護者さんへ説明と理解を怠らないようにしています。

もちろん勉強時間が増えるので保護者さんはとても好意的な反応でしたが。

その甲斐あって、月曜日と週2回の授業後、合わせて週3回は
この英単語アプリを実施するというルーティンが完成しました。

さらに定期テスト前の土日無料勉強会にも組み込み、
「単語アプリをすることが当たり前」という空気感が生まれていると思います。

アプリは、教科書内容の単語が覚えられる設定で活用していたため、
ほとんどの生徒さんが「学校の英語の授業が分かりやすくなった」、
「英語のテストもできるようになった」といった感想を戻してくれています。

とどめに「この英単語アプリのおかげだね!」と伝えましたので、
今は自ら進んでやるようになってくれているのでもう一安心です(笑)。

いかがでしたでしょうか。

新しい取り組みやルールを決める場合、産みの苦しみがあります。
浸透するまで時間もかかる場合もあるでしょう。

しかし、すぐに成果が出ないといって焦ってはいけません。

また、思いつきで強引に進めるのではなく、
生徒さんや保護者さんの同意を得たて納得してもらうことも大切です。

そして、社員・講師の協力も欠かせません。

なぜそれをするのか、それによってどんな成果が得られるのか、
社員・講師にも把握してもらった上で進めることが、
最後までやり切れるポイントかもしれませんね。

あなたが新たな取り組みでやり抜いたことがあれば、また教えてください!

【今回のまとめ】
・新しい取り組みをやり切るには、周りの理解と協力が必要
・浸透させるには時間がかかるので、焦らないこと

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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