【Vol.779(2024.03.22)】新しいことを始めるときは、「何をやめるか」が大切

学習塾に限らず、経営をしていればよくある話ですが、より良いものを求めて
「あれもしたい」「これもやってみたい」という貪欲な気持ちってありますよね。

しかし、意欲的になりすぎた結果、詰め込みすぎてキャパオーバーとなり、
質が低下してしまったり、立ち回らなくなったりします。

何かをやってみようというチャレンジ精神はもちろん素晴らしいですが、
新しいことを始めるときは「何をやめるか」「何を捨てるか」という判断も忘れないでください。

特に個人塾においては、この視点が大切だと感じます。

個人塾の場合、塾長(塾経営者)がメインで、
あとはアルバイトと1名程度の社員で従業員をまかなう構成が多いと思います。

このケースで、「このコンテンツの評判がいいから、うちでも取り入れよう」となった場合、
その舵取りは塾長が行うことになります。

それに時間を取られることになりますので、労働時間が変わらないとすれば、
今までやっていた何かを削る必要があるわけです。

しかし、仮に塾長が常に授業を受け持っている塾さんだと、そこを削るわけにもいきません。
それでも強引に導入してしまうと、全力で取り組めず、十中八九はうまくいかないでしょう。

個人塾の場合、映像授業・プログラミング・オンライン英会話、
あるいは大学受験の指導ルート・教室運営管理などのコンテンツ関連は、
塾長が中身をとことん把握している状況を作らないと基本的にはうまく回せません。

自分が把握していない商品を、
自信を持って大切な生徒さんや保護者さんに売ることはできませんからね。

大手さんの場合は組織がしっかりできているので、新コンテンツ導入に際して、
担当者を決め、その担当者を中心に導入の可否を検討し、
1〜2教室を使って検証を行って……と、社長が絡まなくても回る仕組みができています。

しかし個人塾には、そんな余力はありません。

したがって、何かを導入しようとする場合は、
現状に余裕がある場合を除いて、何かをやめる決断ができるかが大切になってきます。

1日は24時間と平等ですし、あなただけ26時間にすることもできません。

最初は睡眠時間を削ったり、好きなことを我慢したりなど、
少しは時間を増やすことはできるかもしれませんが、それも限界があります。

すぐにストレスフルになって、元も子もない状況になるでしょう。
ちなみに私は、ゴルフの時間を削られたら発狂すると思います(笑)。

繰り返しになりますが、やはり何かやろうと思うのであれば、
「やめること」を決めてから行動することが大切なのです。

私自身を振り返ってみても、「やめる」を決断したタイミングが何度もありました。

例えば私自身、開校当初は週6日でフル授業を行なっていました。

立ち上げの大切さはわかっていましたし、
それしかすることがなかったからできたとも言えます。

そして数年後、学習塾向けコンサル(リアル・パートナーズ)を立ち上げ、
こちらに注力するために、自身が受け持つ授業の数をだんだん減らしていきました。

授業をすることをやめた(減らした)わけです。

当たり前ですが、ずっと授業をしていれば、コンサル先の訪問の時間も作れませんからね。

幸いなことに、弊塾は私より教室長のほうがしっかりしているので、
私が不在でも問題がほぼありませんでした。

また、教室の隣のテナントを借りて増床し、高等部を作った際には小学部をやめました。

高等部に注力するためには相当の時間を費やす必要があり、
小学生に対応する時間を高等部に注ぎたかったからです。

小学生がいないと、新年度に中1が全くいないというデメリットも痛感しましたが、
それでも今となっては小学部をやめて正解だったと思います。

あのまま小学部もやっていたら、どちらも中途半端な運営になっていたことでしょう。

2年前から始めた通信制高校サポート校事業でも、「やめる」判断をしました。

通信制高校に通う生徒さんの学習フォローなどを行う内容ですので、
みんな平日の午前中から通学してくれています。

「教室の空き時間を使えて効率的!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
もちろんそんな片手間でできるものではありません。

「おそらく、高等部設立のとき以上に時間もパワーも使うことになる」と判断し、
そこで中学生の募集をやめました。

中学生も高校生も対応しつつ、サポート校の運営をするのは不可能だと思ったからです。

そのため実は、2年前から中学生の入塾をすべて断っています。
2年で3〜40件ほどの問い合わせがあったと思いますが、断腸の思いでお断りしました。

正直、断るたびに「あ~、月謝が……」とか「もったいない」とか
思う気持ちが芽生えることもありました。

しかし中学部をやめたことで、サポート校にかなりの力を注ぐことができました
実際にこの1年、めちゃくちゃ頑張ったと思います(笑)。

その甲斐あってか、新年度のサポート校は、
想定以上の生徒数でスタートすることができました。

塾部門の事業も、中学生の募集を2年間していなかったこともあり、
4月からは高校生専門の個別指導塾としてうまく移行できたと思います。

これも遡れば、小学部をやめ、高等部に注力できたからこそ、
高校生専門としての土台を作ることができたといっても過言ではありません。

判断は間違っていなかったと、自分をほめてやりたいです(笑)。

もちろん、すべてが順風満帆にうまくいったわけではありません。

やめる決断がずれこんで、私自身もいっぱいいっぱいになったり、
ミスをしたりしたことは山ほどあります。

それでも私は、「めっちゃやりたい」ことがまだ2つほどあるんです。
今度は何をやめようかと模索しています。

人に任せたらもっとできるのかもしれませんが、
人に任せる能力がないので(だから個人塾をやっています)、
自分の資源を切り分けるしかありません。

自分の置かれている立場を理解して、毎日を楽しく過ごしていきたいですね。

いかがでしたでしょうか。

みなさんは、やりたいことがあれば、なにかをやめる習慣は着けていますでしょうか。

新年度を迎え、気持ちも一新して、新しいことに取り組もうと思う季節です。

やりたいことをやるために、やらないことを決める、
そんな1年にしてみてはいかがでしょう。

【今回のまとめ】
・1日24時間はすべての人に平等
・やめる勇気を持つ

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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