【Vol.594(2022.06.10)】否定することしか知らない大人たち

何かと話題になっているこちらニュース。

<「大人は灯油缶、背負うんですか?」ランドセルを軽くするアイデア商品に批判殺到→小学生の反論がキレキレ>
https://news.yahoo.co.jp/articles/c4fc68eefd958bba519a85be034db33bd567a7d0

タイトルの通りですが、

小学生がランドセルを軽くするアイデア商品を開発したら、
心ない(?)大人たちから的外れな大バッシングを受けた。

その的外れな指摘に、ズバズバと的を射た反論をする子どもたちの様子が爽快だ。

という内容です。

そのバトル自体、あるいはランドセルの功罪はともかくとして、
このニュースの論点はもう一つあると思います。

これはもうね、ほとんどの方が同じ意見だとは思うのですが、
少なからず「教育」の末端に関わらせていただいている者としては
あきれてものが言えなくなります……

もちろん、子どもたちのアイデアをこんなふうに「叩く」ことしか知らない大人に対してです。

こうやって、子どもたちの発想力や主体性、クリエイティビティ、
イノベーションの芽が摘まれていくんだなと正直、怒りすら感じるほどです。

普段は「自分の頭で考えなさい」「言われたことしかできないようではダメ」なんて言うくせに、
いざ自分で考えて、主体的に行動したらこれですよ。

どうして、その発想力や行動力を褒めてやれないのか。
むしろ、褒める要素しかないと思うんですけど……

以前、こんな話を聞いたことがあります。

学校にある時計を分解してしまった子どもがいました。
中身がどうなっているのか、どんな仕組みで動くのか知りたかったからです。

ある先生は、道徳的な観点から、共用物である時計を壊したことを叱りました。
別のある先生は、その知的好奇心を褒めました。

さて、どちらが正しい教育だったのか、という禅問答のようなお話です。

これも一見、どちらにも理があるように思えますが、
「時計の仕組みを知りたい」と思ったことは「素晴らしいね!」、
でも、共用物を壊したこと自体は「良くなかったね」でいいじゃないですか。

二元論で白黒つけようとしなくてもいいのではないかと思います。

ただ、この時計の逸話や今回のニュースのような事例に限らず、
私たちも塾をやっていると、似たようなケースに出くわすことはあるでしょう。

そのとき、つい「大人の論理」で子どもたちを責めたり、
可能性の芽をつぶしたりすることがないようにしたいものです。

例えば、英単語の書き取り演習を10回やってきなさい、と宿題を課したとします。

しかしその生徒は、5回しかやってきませんでした。
理由は「もうこれ以上書かなくても、完全に覚えたから」。

このとき、10回という言いつけを守らなかったことを責めるべきでしょうか?
それとも、5回できちんと覚えた要領の良さを褒めるべきでしょうか?

書き取り演習の目的が知識の定着であるなら、
そこをミッションコンプリートしたなら、書き取りの回数自体は問題ではありません。

ミッションは10回書くことではなく、その英単語を覚えることだったはずです。

それなら褒めてあげればいいわけで、
「言いつけを守らなかった」「約束を破った」などと叱られては、子どもたちもがっかりです。

せっかく短時間で英単語を覚えたのに、褒めてもらえるどころか叱られたわけですから。

「面倒くさくても10回書くことが大事」という謎の精神論を持ち出す人もいるかもしれません。

この瞬間、子どもたちにとって楽しかった勉強も「作業」に変わります。

本来、「学ぶこと」「知ること」は楽しいことのはずなのに、大人がそうさせなくしているのです。

そういう意味で言うと、「頑張って勉強することで、精神的に成長する」というのは、
私たち塾人も学校の先生もよく口にしがちで、理屈としては正しいのかもしれませんが、
勉強を精神修行の場にすること自体がおかしいのかもしれません。

もっと学ぶことの楽しさを伝えてあげるのが私たちの役目であったはずです。

これは強い自戒を込めてですが、いま一度、教育の本懐に立ち返りたいところです。

私たちは枕詞のように「子どもたちの可能性を伸ばす」と口にしますが、
それを上辺だけのスローガンにしないようにしなければ。

本当に「可能性を伸ばす」とはどういうことなのか、常に客観的な内省を重ねながら、
子どもたちと向き合っていきたいですね。

【今回のまとめ】
・教育とは精神修行なのか?
・本当に「子どもたちの可能性を伸ばす」とは何なのか、自問を続けよう

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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