【Vol.638(2022.11.11)】情報教育はブルーオーシャンになるか

2025年の大学入学共通テスト(現在の高1が受験する年度)の
試作問題が公表されましたね。

毎日新聞

今回は、いつにも増して注目度が高いのではないでしょうか。

高校の新学習指導要領が適用された、初の共通テストとなるためです。

大きな変更点としては、以下の通り。(出典:大学入試センター)

・国語:資料を読み解く問題を増やして試験時間を10分延長
・地歴:日本史と世界史を横断的に問う「歴史総合」を設置
・公民:社会課題や主権者教育を主軸にした「公共」を新設
・情報:「情報Ⅰ」を新設

国語や地歴における思考力や学際性が問われる問題は、
近年の教育傾向から言っても当然なのでしょうね。

一方で、個人的に意識しておきたいと思っているのが、新しい公民科目である「公共」と、
プログラミング教育の必履修化などをふまえた「情報」が追加されることです。

特に、現場(学校など)が頭を抱えているのが「情報」への対応だと言われます。

「情報Ⅰ」は、今年度からの学習指導要領改訂で必修化された科目。

デジタル社会の基礎リテラシーを学びつつ、データ分析などの活用力を身につける内容で、
実際のプログラミングなどの技術的な内容も必履修化されました。

試作問題では「お釣りの硬貨の枚数が最も少なくなる方法を求める、プログラムの関数」や
「若者のスマホ利用時間、勉強時間、睡眠時間の散布図データから相関性を導き出す」
といった問題が出題されたようです。

これをふまえ、情報教育における基本的な考え方として知っておきたいのは、
国はこうした知識やスキルを「国民的素養」と位置付けているということです。

プログラミングもデータ分析も「読み書きそろばん」と同じレベルで
「できて当然」のレベルに持っていきたいのです。

だからこそ必修化し、共通テストにまで採用しているわけですね。

ちなみに、情報科界隈のエキスパートの先生方は、
「情報」の共通テストへの導入は悲願だったと言われます。

しかし、先述したように現場は混乱しているようです。

なぜなら、情報科専任の先生が圧倒的に足りていないから。

文科省は、「情報Ⅰ」の必修化を決めた数年前から、
各自治体(教育委員会)に情報科教員の増員を繰り返し要請してきましたが、
なかなか追いついていないのが現状のようです。

実際、公立高校で情報科の指導を担当している先生のうち、
約16%が情報科の正規免許を持っていない状況です。

つまり、他教科の先生が教えているということです。

これまでは、それでも何とかなってきたのですが、
プログラミングの必履修化など内容が専門的になり、対応が難しくなってきているそう。

ましてや、共通テストに対応できるだけの指導力を持つ先生となると、
さらにその数は限られてくるでしょう。

「16%が正規免許不所持」と聞くと、さほど多くないという印象を受けるかもしれません。

しかしこれは、あくまで全国平均。
専任教員の充足率が高い都道府県と、そうでない都道府県には大きな差があります。

中には、6割以上が正規免許を持たない先生が指導している自治体も。

この状況から鑑みるに、塾のビジネスとしてはチャンスであると言えるかもしれません。

本来、塾は学校での学業指導だけでは足りない(対応しきれない)部分を
補完する役割を担ってきたのだと考えると、十分に必然性のある分野です。

これまで塾業界における情報教育、特にプログラミングなどは、
どちらかというとサブ的存在でした。

小学生向けの習いごとの延長くらいの位置付けで、
(あまり良い言い方ではありませんが)中学以降に本格通塾してもらうための、
「囲い込み」の素材であった面も否めません。

しかし、ここまで情報教育が一般化し、ましてや大学入試の科目にまでなってくると、
指導教科の一つとして十分にニーズがあるのではないかという気もしてきます。

もちろん指導にも専門性が必要にはなってきますが、
市場として参入する余地はまだありそうです。

実際、10年くらい前はイロモノ扱いされていた「AO専門塾」も、
いまでは数も増え、市場の認知やニーズも高いです。

個人塾において「何か特定の分野で突き抜ける」のは王道の戦略だと思いますが、
情報教育(入試対応)もその一つになるかもしれませんね。

【今回のまとめ】
・情報教育にチャンスあり?
・高校の情報教育は人員不足が顕著

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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