2025年の大学入学共通テスト(現在の高1が受験する年度)の
試作問題が公表されましたね。
今回は、いつにも増して注目度が高いのではないでしょうか。
高校の新学習指導要領が適用された、初の共通テストとなるためです。
大きな変更点としては、以下の通り。(出典:大学入試センター)
・国語:資料を読み解く問題を増やして試験時間を10分延長
・地歴:日本史と世界史を横断的に問う「歴史総合」を設置
・公民:社会課題や主権者教育を主軸にした「公共」を新設
・情報:「情報Ⅰ」を新設
国語や地歴における思考力や学際性が問われる問題は、
近年の教育傾向から言っても当然なのでしょうね。
一方で、個人的に意識しておきたいと思っているのが、新しい公民科目である「公共」と、
プログラミング教育の必履修化などをふまえた「情報」が追加されることです。
特に、現場(学校など)が頭を抱えているのが「情報」への対応だと言われます。
「情報Ⅰ」は、今年度からの学習指導要領改訂で必修化された科目。
デジタル社会の基礎リテラシーを学びつつ、データ分析などの活用力を身につける内容で、
実際のプログラミングなどの技術的な内容も必履修化されました。
試作問題では「お釣りの硬貨の枚数が最も少なくなる方法を求める、プログラムの関数」や
「若者のスマホ利用時間、勉強時間、睡眠時間の散布図データから相関性を導き出す」
といった問題が出題されたようです。
これをふまえ、情報教育における基本的な考え方として知っておきたいのは、
国はこうした知識やスキルを「国民的素養」と位置付けているということです。
プログラミングもデータ分析も「読み書きそろばん」と同じレベルで
「できて当然」のレベルに持っていきたいのです。
だからこそ必修化し、共通テストにまで採用しているわけですね。
ちなみに、情報科界隈のエキスパートの先生方は、
「情報」の共通テストへの導入は悲願だったと言われます。
しかし、先述したように現場は混乱しているようです。
なぜなら、情報科専任の先生が圧倒的に足りていないから。
文科省は、「情報Ⅰ」の必修化を決めた数年前から、
各自治体(教育委員会)に情報科教員の増員を繰り返し要請してきましたが、
なかなか追いついていないのが現状のようです。
実際、公立高校で情報科の指導を担当している先生のうち、
約16%が情報科の正規免許を持っていない状況です。
つまり、他教科の先生が教えているということです。
これまでは、それでも何とかなってきたのですが、
プログラミングの必履修化など内容が専門的になり、対応が難しくなってきているそう。
ましてや、共通テストに対応できるだけの指導力を持つ先生となると、
さらにその数は限られてくるでしょう。
「16%が正規免許不所持」と聞くと、さほど多くないという印象を受けるかもしれません。
しかしこれは、あくまで全国平均。
専任教員の充足率が高い都道府県と、そうでない都道府県には大きな差があります。
中には、6割以上が正規免許を持たない先生が指導している自治体も。
この状況から鑑みるに、塾のビジネスとしてはチャンスであると言えるかもしれません。
本来、塾は学校での学業指導だけでは足りない(対応しきれない)部分を
補完する役割を担ってきたのだと考えると、十分に必然性のある分野です。
これまで塾業界における情報教育、特にプログラミングなどは、
どちらかというとサブ的存在でした。
小学生向けの習いごとの延長くらいの位置付けで、
(あまり良い言い方ではありませんが)中学以降に本格通塾してもらうための、
「囲い込み」の素材であった面も否めません。
しかし、ここまで情報教育が一般化し、ましてや大学入試の科目にまでなってくると、
指導教科の一つとして十分にニーズがあるのではないかという気もしてきます。
もちろん指導にも専門性が必要にはなってきますが、
市場として参入する余地はまだありそうです。
実際、10年くらい前はイロモノ扱いされていた「AO専門塾」も、
いまでは数も増え、市場の認知やニーズも高いです。
個人塾において「何か特定の分野で突き抜ける」のは王道の戦略だと思いますが、
情報教育(入試対応)もその一つになるかもしれませんね。
【今回のまとめ】
・情報教育にチャンスあり?
・高校の情報教育は人員不足が顕著