【Vol.646(2022.12.09)】何でも競争すればいいってもんじゃない!?

近ごろ、学校の体育の授業にICTが積極的に用いられているようです。

NHKニュース
「きつい」「しんどい」はもう古い “学校体育”最前線 | NHK | WEB特集 【NHK】今、ICT(=情報通信技術)を活用し、体育の授業を大きく変えようとする動きが広がりつつあります。学校体育の最前線は。

今回のニュースで私が特に「いいな!」と思ったことがあったのでシェアしたいと思います。

上記のニュースの中で紹介されているのは、VR(ヴァーチャルリアリティ)のアプリを使って
跳び箱をうまく飛べる動作(感覚)を体験できる授業。

そして、持久走で心拍数を図れるモニター機能を使って、
自分に合った一定の心拍数(ペース)で走れるようにする授業です。

これまでも、タブレットを使って自分の動作(フォーム)などを録画し、
改善に用いるなどの活用はされてきましたが、これらに共通して言えるのは、
他者との比較や競争ではなく、自分なりのレベルに合わせて自ら課題を見つけ、
改善していこうという姿勢です。

私たちが知っている体育の授業は、
どちらかというと他者との競争が原則になっていたように感じます。

人よりも早く走れること、人よりも高く遠くへ跳べること、
人よりもものを遠くへ投げられること……

そうやって、常に「どちらが優れているか」という比較にさらされてきたのです。

それが原因で、体育という教科に苦手意識やコンプレックスを
持つ子どもたちも少なくありませんでした。

競い合うことが一つの目的である部活動などはまだ良いでしょう。

教育的意義から考えると、競うことだけが目的ではありませんが、
「競技」という言葉が示すように、競うことで技術や精神力の向上を目指すという
側面はあっても良いと思います。

しかし、体育の授業にまでその原理を持ち込む必要があるのでしょうか。

体を動かすことの楽しさを知り、健康の増進や身体能力の健全な成長を促すのが
「体育」という教科の趣旨のはずです。

学習指導要領でも「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育み、また生涯にわたって
健康を保持増進することでの豊かなスポーツライフの実現することを重視」
と記載があります。

この目標を達成するために、競争原理の中で運動に取り組ませることが本当に必要なのか、
確かに疑問が残りますよね。

私はここから、主要5教科においても同じことが言えるのではないかと思いました。

他人と比較して「できる」「できない」ではなく、あくまでこれまでの自分と比べて
どれだけ成長できたかが大切なのではないかと改めて思います。

定期テストだってそうです。

友達と競争することで意欲がわく子どもたちもいるでしょうし、
それはそれで良いと思いますが、それが苦痛で仕方ない子もいるはずです。

体育と同じように、それが勉強嫌いを生みだしている可能性もあるのではないかと思います。

常に比較され、できない自分を突き付けられては、それも無理はありません。

以前、知人からこんな話を聞きました。

その知人は、勉強はそこそこ得意だったものの、運動は苦手。
だから、体育の授業はあまり好きではなかったと言います。

中高生だった当時は、単に「体を動かすのが好きじゃないから体育がキライなんだ」
くらいに思っていましたが、大人になってふと気付いたのだそうです。

自分は勉強がそれなりにできたから、英語や数学の授業はイヤではなかった。

でも体育の授業では、自分が人より劣っている事実を見せつけられているようで、
本当はそれが辛かったのだと。

ということは、勉強が苦手な子は、
主要教科の授業のたびにこんな思いをしていたのではないか?

体育の授業は週の授業回数も限られているからまだマシかもしれないけど、
勉強が苦手な子にとって、学校で授業を受けている時間のほとんどが苦痛ではないのかと。

これを聞いて私も、「確かに!」と思いました。

塾を経営している人の多くは、おそらく勉強が得意だった部類に入るでしょう。

だから、勉強で苦しさを感じている子どもたちの気持ちに
気付きにくい部分もあるかもしれません。

ただでさえ、学校の授業で競争と比較にさらされて勉強が苦しくて仕方ないのに、
塾で「さあ、勉強をがんばろう!」と言われても辛いのは無理もありません。

それを「この子はやる気がない」で片づけてしまうのは、横暴な判断なのかもしれませんね。

例えば、教室内に定期テストの結果などを貼りだしておられる塾さんは多いでしょう。

「5教科合計450点!」とか「50点UP!」とか。

他者との比較ではなく自分の成長という視点で見ると、
こうした結果を褒めてあげるのは良いことだと思います。

しかし、これを順位で示すような掲示は、一考の余地があるかもしれません。

もちろん、それを分かって意図的に競争をあおる指導方針にされている塾さんもあります。

それも一つの方針であり理念ですし、そういう自由度があるのも私教育の魅力です。
最終的には、受験という競争からは逃げられないわけですしね。

ただ、それ以前の学習においては、必ずしも競争させることがベストとは限りません。

最終的な競争を勝ち抜くためにも、
(今は競争するのではなく)まずは自分自身が成長しようという考え方もアリです。

大事なのは、いずれのスタンスでいくにせよ、
それを自覚して明確な意思のもと、その方針を実行することではないでしょうか。

漫然とやるのではなく、自塾がどの方針でいくのか、しっかり認識しておきたいですね。

【今回のまとめ】
・競争が原因で勉強嫌いになる子もいる
・自塾がどの方針でいくのか、メタ認知を

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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