【Vol.650(2022.12.23)】「みんながそう言っているから」は正しいの?

このところ気になっていたニュース。

鳥取県の小学校で新しい校名を決めるにあたって、
事前に市民から寄せられた校名案のうち、大多数が選んだ校名ではなく、
たった1件のみの応募だった名前に決まったのはおかしい、という話題です。

<「市民が納得していない」応募341件のうち1件で採用の小学校名、選び直しへ 市民の声が動かす>
https://news.yahoo.co.jp/articles/ab4eacb9463b685e57fef78e5feb68d168b5ae75

確かに、多数の意見が無視されて密室で決まったかのようなプロセスは良くないと思います。

ただみんなが「こちらがいい」と言っているのだから、
こちらにすべきだという論理については、ちょっと深掘りしてみると面白そうです。

もちろん、私は現地住民などの当事者ではないので、
どちらの名前が良いかについて論ずる立場にないですし、
何かを否定するものではありません。

あくまで今回のニュースを触媒に「多数派重視って本当に正しいの?」というテーマについて、
塾運営や教育の切り口から考えてみたいと思います!

さて、民主主義の代名詞のように使われる多数決。

政治などで多数派の意見を尊重することは、より多くの人に益をもたらすわけですから、
それはそれで良いと思います。

ビジネスにおいても、より多くの人に受け入れられるサービスを提供するのは
原理原則だと言えるでしょう。

しかし間違えてはいけないのは、「多数派であること」は「正しい」と同義ではないということです。

多数派のほうが間違っているケースだって十分あるわけですし、
少数派が悪いということにもならないですよね。

これを塾運営や教育に置き換えて考えてみましょう。

例えば、みんなが簡単に解ける問題が解けないのは、その子が悪いのでしょうか?
間違っているのはその子なのでしょうか?

個別指導塾を経営されているみなさんなら、
きっと「そんなことはない!」と言ってくださるのではないかと思います。

一方で、生徒さんに「勉強を頑張れ!」とハッパをかけたいとき、
私たち大人はつい「みんな頑張っているんだから(あなたも頑張るべき)!」
みたいな激励をすることってありますよね。

しかし、その生徒さんにとっては「みんなが頑張っているから」といって
自分も頑張る理由にはならないかもしれません。

「みんながそうしている」からといって正しいわけではないからです。

いや、もちろん勉強を頑張ること自体は正しい行動だと思いますよ?

でも「みんなが頑張っているから」「それが正しいことだから」、
あなたも頑張れと言われても、その子の心には響かないし、
結局、しぶしぶやらされるだけの勉強になってしまうんですよね。

また、社会でこういう力が求められているからあなたも身に付けるべき、
というのも同じ理屈だと思います。

例えば「リーダーシップが必要だ!」と言っても、
実際のところみんながみんなリーダータイプでは組織は回りにくいものです。

自分が集団を統率する力がなくても、
リーダーを支える「フォロワーシップ」だって大切なわけですし、
そちらの方面でこそ能力が発揮できる子だっているわけですよね。

口で言うほど簡単なことではないのは重々承知の上ですが、
やはり個別指導塾は「一人ひとりの、勉強する理由」を
掘り起こしてあげることが大事なのだと思います。

また、少数派の意見だからと言って無視しても良いということにはなりませんし、
その意見に価値がないということにもなりません。

先ほど「大多数の人に受け入れられるサービスを提供するのがビジネスの原則」だと
お伝えしましたが、それを狙った結果、結局同じようなサービスがはびこり、
最後は価格競争に陥っていくわけですよね。

だとすると、あえて少数派の希望に添うようなサービスを提供し、
そのニッチなニーズの中で誰にも負けない強みを確立していくのも、
素晴らしい戦略だと思います。

例えば、教科限定や探究専門、AO(総合型選抜)専門の塾さんなどです。

発達障害のお子さんに強みを持つ塾さんもありますよね。

もともと個別指導塾は、集団指導という当時の多数派である塾のスタイルに
合わない子たちに向けて生まれたサービスでした。

それでも最初は「こんな塾が流行るわけがない」なんて意見も多かったはずです。

しかし現実は、ご存知のとおり。

多数派の陰に眠っていたニーズを見事に引き出しました。

私たちは、そうした先人が切り拓いてきた土壌の上に立たせてもらっていると思うと、
それに対する感謝も生まれますね。

他にも、例えば教材選び一つとっても、
最も売れている問題集が最も優れた問題集だとは限りませんよね。

どの生徒さんにどの問題集が合うのかは異なるわけですから。

対面よりオンラインのほうが向いている生徒さんもいますし、
メンタル面も含めてガッツリ向き合って欲しい生徒さんもいれば、
適度な距離間で放っておいて欲しい生徒さんだっています。

つまり、私たちが経験則的に選んできた方法、
またその方法が多数派(=常識)だったとしても、
その生徒さんにとっての正解だとは限らないのです。

特に個別指導塾はその視点が大切だと思います。

今までの常識や「普通はこうでしょ?」というスタンスを
あえて天邪鬼な視点で見直してみると、新たなビジネスチャンスが見えてくるかもしれませんね。

【今回のまとめ】
・多数派=正しいとは限らない
・あえて少数派を狙うビジネスモデルもあり

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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