【Vol.670(2023.03.03)】新規開校時の授業料設定

今回は授業料の価格設定についてお伝えしたいと思います。

稲森和夫さんも「値決めは経営だ」というほど重要な価格設定。
どのような考え方で決めていけばよいのでしょうか。

今回は弊塾の事例をお伝えすることになりますが、
その価格設定が正しかったのかどうか、今でも正直わかりません(笑)。

それでも15年間教室運営をしてきて、なんとか生活できているということは、
結果論としてはそんなに間違っていなかったのではないかと思います。

あくまで弊塾のケースであり、15年前の開業時ことにはなりますが、
何らかのヒントになると嬉しいです!

さて、弊塾は2008年7月に兵庫県宝塚市に開校しました。
指導形態は、一般的な個別指導でもある1(講師):2(生徒さん)、指導時間は1回75分です。

開校当時の指導単価(1回・75分)は、

●中1~2:2,450円
●中3:2,700円

でした。ともに税込(当時の消費税率は3%)です。

ちなみに現在は

●中1~2:4,070円
●中3:4,400円

です。消費税率がアップしたぶんを含めて、開校時の約1.5倍になっています。

価格改定(値上げ)は、開業後15年の間で数回行っていますが、
このあたりの話はまた次の機会にでも……

新規開校時に、この料金設定にした理由はいたってシンプル。

「前職で勤務していた指導単価と同じすれば、それなりにニーズがあると判断した」からです。
石が飛んできそうな理由ですが、もう少し読んでからにしてください(笑)。

では、なぜ前職と同じ単価にすればニーズがあると思ったのか。

私が独立前に勤めていたのは、家庭教師派遣がメインの会社です。

そこで新規事業として個別指導塾を立ち上げるということで、
「低価格で高品質のサービスを提供する」という方針のもと、
地域の最安値クラスで次々に教室を展開したのですが、
実は、その価格を決めたのが事業責任者である私でした。

第1号教室を作る際の価格設定には、めちゃくちゃ気を使って考えたのを思い出します。

まずは出店予定エリアの個別指導塾さんすべての授業料を調べました。

そして会社の方針である「低価格で高品質のサービスを提供する」という考えのもと
弾き出したのが、「中1・中2が2,450円、中3が2,700円」という指導単価です。

ターミナル駅周辺の立地でもあったので、有名どころの大手個別指導塾さんが多数あり、
その中で一番安い単価を実現しました。

今はもしかするともっと安い塾さんも出現したかもしれませんが、
当時は地域ナンバーワンの低価格でした。

続くポイントとしては、月謝表記で価格を4桁表示にすることでインパクトを持たせたことです。

「中1・中2が2,450円、中3が2,700円」の指導単価ということは、
月額(4週)に換算すると「中1・中2が月9,800円、中3が10,800円」となります。

「1:2の個別指導なのに、月の授業料が9,800円!」と表現できたことは
大きかったと思います。

実際、みなさんにも「安っ!」と感じていただけるのではないでしょうか。

ただし、授業料とは別に「教室運営費」として月1,800円(税込)はいただいております。
あくまでも「授業料が月9,800円(週1回/中1・中2生)」という見せ方にしました。

では実際に、この単価で当時どのぐらいの生徒数だったかというと、
教室長として臨んだ第1号教室は2年目に早々と生徒数100人を超え、
4年目には200人になりました。

周辺には大手個別指導塾さんが4つも5つもある中でです。

もちろん、料金だけでそうなったわけではありませんが、
インパクトのある価格設定でまずは「知ってもらう」「通ってもらう」ことの大切さを
経験することができたと思います。

その後も、3年で30教室ほど教室展開を進めていきましたが、
料金設定の後押しもあり、どの教室も順調に生徒数が増えていきました。

こうした裏付けもあり、「独立開業する際は、地域で一番安価な設定にしよう」と決めたのです。

弊塾の地元エリアも、前職時に第1号教室を出店したエリアと
ほぼ同じ顔ぶれの大手個別指導塾さんが展開していらしたので、
「それだったら、馴染みのある指導単価でやっちゃえ!えい!」と勢いで決断した次第です。

個別指導塾を新規開校する場合、
ビリギャル著者・坪田先生のようによほどの名の知られた方であれば別ですが、
まったく知名度がない個人が(開業時には)ブランド力で勝負ができません。

それであれば、最初は地域で一番安い料金設定を行うのが無難な戦略だと、
私は今でも思っています。

大手個別指導塾さんは、直接的に売上を作らない部署(本部機能など)の人件費や、
莫大な広告宣伝費を各教室の売上でカバーしていく必要もあるわけで、
指導単価がある程度高くなってしまうのは当然です。

また、フランチャイズの個別指導塾も、一般的には売上の10%ほどを
ロイヤリティとして本部に支払わなければなりません。

無名な個人塾はそうした固定費がないのですから、そこだけ見れば、
大手個別指導塾さんと同じ単価で出店しなくても経営は回るはずなのです。

ですからまずは間口を広げ、たくさんの方に通塾していただくことで、
評判から紹介となって問い合わせも増える……という好循環のスパイラルを
生み出せる流れになるのではないでしょうか。

ただし、くれぐれも誤解していただきたくないのは、
「中身より価格インパクトで勝負!」という意味ではないことです。

まずは中身ありき。
クオリティは最低でも他塾さんと同等であることが前提のお話です。

時代の流れもあり、例えば「月謝単価8万円で生徒数15名」など、
「高単価で少人数の塾」も一部では流行っています。

これはこれで素晴らしいビジネスモデルだと思いますが、
1:2の個別指導塾にはめこむのはちょっと難しい気がします(私の力不足もあるでしょうが)。

まずは開校から2〜3年で、たくさんの生徒さんに通塾いただけるように、
月謝という敷居を下げ、「安いのにこんなにサービスが良い。成績も上がる」
といった評判を作ることで、紹介や兄弟入会を増やしまくるのが合理的だと思います。

2〜3年で生徒数がある程度集まってから
次のステージ(値上げや教室拡張など)に進む感じですね。

もちろん、最初から大手個別指導塾さんと同じような指導単価にしたり、
さらにそれを上回る単価設定でやるのもアリです。

その場合、「大手さん以上に魅力ある何か」が必要となるはずです。

仮に私が個別指導塾を今年開校するのであれば、
15年前と同じ低価格路線で攻めていくと思います(開校しませんが・笑)。

いかがでしたか。

15年前の話ですし、たまたま私は運が良かっただけかもしれません。

少しでも価格設定の参考になれば幸いです。
あなたがもしこれから開業するのであればどうされますか?よかったらまた教えてください!

次回は、自塾の授業料の値上げのタイミングやその意図などを考えてみたいと思います。

【今回のまとめ】
・新規開校時の低価格路線は今でも戦略の一つ

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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