東大とベネッセの共同調査で、適切な学習方法が分からないと答えた子どもが、
実に7割近くにまでのぼっていることが分かりました。
<学習方法「分からない」7割 小学生で急増、コロナ禍影響か―東大・ベネッセ調査>
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023041100924&g=soc
小学4年生~高校3年生までを対象とした調査で、
「上手な勉強の仕方が分からない」と答えたのは平均して67.5%。
調査開始以来、過去最高を記録しているそうです。
10人中ほぼ7人が勉強方法が分からないというのは、かなり由々しき事態だと思います。
さらに小→中→高と学校段階が上がるほどこの割合も比例して高くなっており、
学年が進むにつれ勉強についていけない子どもたちが増えていると言えるでしょう。
だからこそ、塾が必要とされているのだとも言えます。
同時に注目したいのは、この調査では、成績と学習意欲、
学習時間の関係を分析していることです。
これによると、成績との相関性が最も強いのは学習方法。
そして意外にも(?)、学習時間と成績にはあまり強い相関は見られなかったというのです。
私たちはつい、演習量をこなすことを重視し、生徒さんたちに長時間の勉強を課しがちです。
場合によっては「長時間勉強したこと」を、「よく頑張った」と褒めます。
しかしそれが、あまり効果がないのだとすれば、
生徒さんへのアプローチを考えなおす必要もあるかもしれません。
例えば、塾でゴリゴリに勉強させられて、それでも頑張って、先生からも褒められて、
でも成績が上がらないのだとすれば、モチベーションはダダ下がりですものね。
ただ、経験からくる感覚値では「たくさん勉強したほうが、成績は上がりやすいはず」と
感じる方も多いのではないでしょうか。
仮にこの調査からの分析結果が正しいものだとすると、
それは学習時間が長かった効果ではなく、学習方法が良かったからなのかもしれません。
量が無駄だとまでは言わなくても、まずは質が伴ってこそだということでしょうね。
確かに、書き取りや計算問題など、数をこなすタイプの演習は、
ただ書き写したり暗記したものを当てはめたりして(量をこなしたと)形だけを整えた
“写経”になる場合もあり、それでは知識として定着しません。
結果として成績が上がり、学習方法が良かったのであれば、
それは塾の教え方が良かったということなので結果論としては問題ないですが、
「なぜ成績が上がったのか」という因果関係や相関関係を、
冷静に分析してみるのはおもしろいかもしれません。
「効果がある」と思ってやっていたことも、
実は他の取り組みの成果だったという可能性もありますし、
これでより学習や指導が効率的になるのであれば万々歳です。
「一人ひとりに合った学び方を作る」ことについては、
個別指導塾の強みでもありますので、ぜひ考えてみたいところです。
一方で、学習意欲との関連を見てみると、こちらも興味深い分析結果が出たようす。
学習方法が分かると、学習意欲が高まるそうなのです。
私たちは、まず「学習意欲ありき」で考えることが多いと思います。
どれだけ長時間勉強しても、どれだけ効果的な学習方法を教えても、
やる気がなければ意味がない、という考え方ですね。
だからとにかく、最初はあの手この手で生徒さんのやる気を高めようと
必死になっている方も多いでしょう(いや、ほとんどがそうかもしれません)。
テクニックよりもハートという感じでしょうか。
しかしこの調査結果は、学習方法が分かれば学習意欲が上がるとしています。
だとすると、まずは正しい学習方法(テクニック)を教え、
生徒さんたちに「おっ、できる!」と感じてもらうこと(ハート)も、いいのかもしれません。
小さな達成感や自己肯定感を積み重ねることが子どもたちの自信を育てるというのは、
コーチングの考え方からも理に適っていますしね。
少なくとも、ただ量や時間だけで判断すると、誰も幸せにならないとは言えそうです。
ただ気を付けたいのは、
これはあくまで成績と学習方法・学習意欲の関連を調べたものだということです。
成績という客観指標の数値が上がったか、下がったかというだけの話で、
その子が勉強を好きになったり、学ぶことを楽しいと感じられるようになったりしているかは
別問題だと思います。
塾に何が求められているのかを考えたとき、
成績さえ上がればいい、そのためにテクニック(学習方法)だけ教えればいいと
割り切るのも一つの考え方だとは思いますが、やっぱりそれだけじゃなんだか寂しいですよね。
この調査結果に引っ張られすぎて、
「教育」としての大事な部分を見失わないようにしたいですね。
【今回のまとめ】
・学習時間より、学習方法のほうが成績との相関性が強い
・かといって、それだけにとらわれないように