【Vol.706(2023.07.07)】文科省、生成AIの利用ガイドラインを公表

教育界にも旋風を巻き起こしている、「ChatGPT」など生成AI。

どのように使っていくのか、あるいは使わせないのか
多種多様な意見が飛び交っていましたが、
ついに文科省が学校向けのガイドラインを公表しましたね。

<教育現場での生成AIめぐり文科省がガイドライン公表>
https://news.yahoo.co.jp/articles/88b05f705b08008391d45781801bb13d2ef8c0cc

私も気になってずっとウォッチしていましたが、今回はこのガイドラインを分析しつつ、
一緒にこれからの教育と生成AIについて考えてみませんか。

さて、「不適切な使い方」として例示されたものから見てみましょう。

・読書感想文やレポートなどを生成AIに作らせ、自分の成果として提出
・定期テストや小テストなどで生徒自身に使わせる
・メリット、デメリットを学習させないまま生徒に使わせる

といった事例が挙げられるようです。

「メリット、デメリットを教える」のはリテラシー教育だとして、大まかには、
私は「生成AIに正解や成果物を求めない」ということではないかと受け取りました。

この考え方の根底には、学習指導要領で示された「思考力」「判断力」「表現力」の育成を
阻害しないかどうかが論点にあるのでしょう。

つまり、自分で考えることを放棄させる使い方は望ましくないということです。

塾でも読書感想文コンテストを開催するところや、
探究系のプログラムに力を入れているところもありますので、
これは同様に注意しておいたほうが良いでしょう。

また、宿題で計算などの演習問題を課したときに
AIに答えさせて、正解を丸写ししてこないかにも気を配る必要があると思います。

表面上は「正解」しているわけですから、こちらとしてはきちんと学習内容が理解できている、
力が定着していると勘違いしてしまうおそれがあります。

対策としては、解答だけでなく計算の過程を筆記して残すなどの指示を出すことでしょうか。

一方で、適切な活用方法としては、こんな事例が示されていました。

・アイデアを出す途中で、足りない視点を見つけるために使う
・英会話の相手として活用
・生成AIを用いたプログラミング

やはり「不適切な例」の反対で、
正解を求めるのではなく補助的に使うことが望ましいということなのでしょうね。

塾と親和性が高そうなケースで考えると、「英会話の相手」というのは面白そうですね。

例えばロールプレイングで、「レストランでの会話」などシチュエーションを設定し、
生成AIと英語で対話するのは良い練習になりそうです。

また、生成AIは問題を作ってくれるので、文法の穴埋め問題や、
英語以外にも計算問題の演習題材としても使えるでしょう。

試しに「わざと文法的に間違っている例文を作り、間違いを見つける問題を作ってください」
とChatGPTに指示してみたら、いい感じに作ってくれました。

例えばこんな感じです。
===========
【問題】
以下の文には文法的な誤りが含まれています。
誤りの箇所を特定し、正しい文に修正してください。

She don’t like coffee.
My brother is play tennis every weekend.
Do you can speak French?
===========

ランダムに「間違っていない文章」も入れてもらうようにすると、なお良いかもしれませんね。

こうした問題や宿題を講師側が出しても良いし、生徒自身にやらせてみても良いと思います。

講師が出題するという観点では、私たち塾側の業務負担軽減にも、
生成AIは活用できそうです。

実際、今回のガイドライン公表の際にも、
永岡文科相は「教員の働き方改革につながる」と話しています。

ガイドラインに示された事例では「たたき台」として使うと良い、とされています。

塾に応用できそうなのは、
・お知らせなどの定型的な文書作成(外国籍の保護者向けの翻訳も含む)
・教材作成
・練習問題作成、
・研修資料
などでしょうか。

注意したいのはあくまで「たたき台」であることです。

子どもたちの「使わせ方」と同様、私たちもAIの作ったものをそのまま使うのではなく、
ファクトチェックをふまえて最後の仕上げは自分でやることが大事でしょう。

なお、今回のガイドラインは暫定的なものであり、
文科省も「機動的に改善していく」としています。

これからも注視を続けつつ、私たち自身も使い方を考えてみたいですね。

【今回のまとめ】
・文科省が生成AI利用のガイドラインを策定
・ポイントは「安易に正解を出すツール」として使わないことか

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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