【Vol.759(2024.01.12)】加熱する年内入試(大学受験)にちょっと待った

明日・明後日といよいよ共通テストですね!

弊塾からも高3たちがチャレンジします。

ここまで来たら、人事を尽くして天命を待つのみ。
実力を出せることを願うばかりです。

さて、みなさまもご存知かと思いますが、近年の大学入試においては
年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)の比率が年々増加しており、
全体ではすでに5割を超えています。

【参考】大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究 調査報告書(令和5年2月)
https://www.mext.go.jp/content/20230417-mxt_daigakuc01-000028258_1.pdf

2人に1人は、年内に受験が終わるといった状況で、
弊塾でも高3の4割が年内で進路を決めました。

肩の荷もおりて、きっとのんびりと正月を過ごせたことかと思います。

「受験生に正月などない!」という感覚で育った私たち世代からすると、
ちょっと信じられませんよね(笑)。

しかし、この現実を受け止め対応していくことが、学習塾にも求められています。

確かに学習塾の場合、中学生の時から続けてくれた生徒さんに関しては、
高1からしっかりフォローできますので、定期テスト対策も行うことで
(推薦系入試で必要な)評定平均のアップにも貢献できます。

また、生徒さんのことをずっと見てきたからこそ、
志望理由書や自己PRを書く場合でも色々とアドバイスしやすく、
学校推薦型選抜や総合型選抜との親和性が高いのも特徴です。

また、こうした流れを早くから見越し、
5~10年ほど前から総合型選抜(旧AO入試)専門塾もたくさん増えた印象です。

みなさん先見の明がありますよね。

ほんの10年前なんて「AO入試?一芸入試みたいなものでしょ?」という誤解が
当たり前に横行していた時代でしたからね(笑)。

学校の先生方から
「そんな入試で受けるのは邪道だ」「せめて一般入試で受ける生徒の邪魔だけはするなよ」などと
ひどい言われ方をした高校生も多かったようです。

そんな中で専門塾を立ち上げられた方々は、
苦しみと引き換えにした、先行者利益があったはずです。

学習塾に関しては、ここ3~5年ぐらいは「高等部の設立」というのがトレンドで、
中学生だけでなく、高校生にも通塾してもらう意識が高まったと感じています。

また、以前から高等部を持っていた塾さんからは、
昔は大半が2~3月の私立一般入試や国公立2次を受けていたが、
総合型選抜や学校推薦型選抜で、生徒の半分が年内で合格が決まり
卒業する流れになり困っている(動揺している)という声も聞かれるようになりました。

それでもニーズのあるところを攻めるのは正攻法ですから、
各々が学ばれて、「総合型選抜対策ができる塾」といったように、
自塾の特徴を生み出しておられる塾さんも多いです。

弊社も10年以上前から、総合型選抜(旧推薦AO入試)の先駆者・藤岡慎二先生に、
毎年総合型選抜に関連したセミナー(勉強会)を行っていただいております。

今年も3~4月に2回に分けてセミナーを開催させていただくことが決まっています。
(しれっと公表してしまいましたが・笑、みなさんご期待ください!)

いずれにせよ、年内入試というワードが流行ったり、
総合型選抜や学校推薦型選抜で進路決定する生徒が増えたりなど、
これらの対策を重点に置く塾さんが増えていくでしょう。

確かに総合型選抜や学校推薦型選抜の対策ができない塾は、
もう必要とされていないと言っても過言ではないレベルです。

一般入試のサポートはもちろん、
推薦系入試のサポートも「できて当然」というところまできているのではないでしょうか。

しかし、ここで少し冷静になって考えていただきたいことがあります。

年内入試というトレンドに対して、みんながその対策に躍起になっている感じがしますが、
本当にそれで大丈夫でしょうか。

半分が年内で進路を決めてしまっているのは事実ですが、裏を返せば残りの半分は、
年明けの一般入試や共通テストを受験するということです。

年内入試のことがメインになって、
年明けの入試対策がおろそかになってはいけないのですが、
そのようなスタンスの塾さんが増えているようにも感じます。

共通テストが「全員が受けるテストでなくなった」というのも原因の一つと考えられます。

高3生がいる塾さんでは、全員が年内で決まるケースは少ないはずです。

データでは半分ですし、学力層の偏りがあるとしても
最低でも2~3割は年明け入試にチャレンジするのではないでしょうか。

したがって、私たちは年内入試対策だけでなく、
今まで通り一般入試で大学に合格できるだけの指導メソッドを
しっかりと確立しておく必要があると思います。

みなさんの塾ではいかがでしょうか。

繰り返しになりますが、年明けの入試を受験する生徒さんが年々減っていると言っても、
それでもまだ半分です。

そこを見誤ると高等部の質が下がってしまいます。

「総合型は全員受かったけど、一般入試組や国公立組は全滅」みたいな高等部、
嫌ではないですか?

自塾で高等部を持つということは、
総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜・国公立対策と
あらゆる対策をできる必要があるのです。

本気でやろうと思えば、高等部はやることがてんこ盛りすぎて本当に大変なのです。

高校生に特化した専門塾さんなどは、うまい運営だなとつくづく感心します。

ちなみに国公立対策を除くのであれば、難関私大専門塾というやり方はアリだと思います。

しかし、一般的な学習塾が総合型選抜専門塾にするのは避けたほうが無難でしょう。

中学生から継続通塾してくれている生徒さんが一般選抜を受験可能性は十分にあるのに、
彼らを切り捨てることになる(生徒さんも通塾の意味がなくなる)かもしれないからです。

また、年内で進路を決めた生徒さんが、年明け入試でさらに1ランク上の大学を目指すとか、
年内入試で叶わなかった第1志望校に(一般入試で)再チャレンジでる流れを作るのも、
高等部を持つ塾には必要なことだと思います。

特にこだわりがないのであれば、「年内で進路だけは確定」させて保険としておき、
年明けにより難易度が高い大学にチャレンジする選択肢はありだと思います。

ただし、普通の生徒さんや保護者さんの感覚なら
「合格したんだから、もう受験勉強はいいでしょ?」となるものです。

この形が成り立つのは、中学生や高1など早い段階から通塾し、
信頼関係が築けている生徒さんや保護者になってくるでしょう。

やはり付き合いが長い関係を作れる塾には、たくさんの可能性が秘められているのです。

時代の流れもあり、年内入試が加熱気味ではありますが、
年明けの私大一般選抜組や国公立受験組の存在を忘れないようにしておきたいところ。

むしろ地方国公立などはチャンスがめちゃくちゃ転がっていると思います。
地域枠(地元枠)も増えていますし、理系の定員増も追い風です。

逆張りの発想というか、少し冷静になって改めてニーズを考えてみてはいかがでしょうか。

私は、年明けの難関私大一般入試や国公立入試に合格できる塾って
やはりすごく魅力があると思います。

高校生を受け入れる以上、どの選抜方式でも確実に対応できてこそ、
これからも求められる塾でいられるのではないでしょうか。

【今回のまとめ】
・年内入試のブームに流されすぎず、冷静に
・大学入試は、年明けも半分が受験することを忘れない

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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