【Vol.653(2022.01.04)】行列のできるラーメン店、閉店からの学び

新年最初のテーマは、昨年末に目にしたニュース記事から。

とても考えさせられる内容でしたので、年の初めにお互いに気を引き締める意味でも
ぜひ共有したいと思います。

<公認会計士のラーメン店主が行列店を閉めた理由>
https://smbiz.asahi.com/article/14780138
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ちなみに、会員登録しないと記事全文が読めないようなサイトは、
基本的に登録しないタイプの私ですが、この記事は「もっと読みたい」と、
思わず会員登録してしまいました。

もちろん、ラーメン店と学習塾では営業形態が異なりますので、
記事に記載されていることすべてが塾に適用できるわけではありませんが、
サービス業という観点で見た場合、似ている部分がとても多いと感じました。

さて、記事によると行列のできるラーメン店を閉めた理由(サブテーマ)が3つあるそうです。

(理由1)安いニッポンの正体
値上げをすると来客に大きく影響し、コスパが悪いと感じれば来店頻度が減ってしまう。
そのため、物価高騰による仕入れ価格や水道光熱費が上がっても値上げができず、
利益から持ち出すか、人件費を抑えるしかない。
人件費を抑える(給与を下げる)と人手不足がさらに拍車がかかり、穴埋めに苦労してしまう。
そのため、利益が少なくなっても耐えるしかない。
「安いニッポン」の正体は、値上げができない環境で、
経営者と現場スタッフが十分な収入を得られず、耐えている姿と言える。

(理由2)人口減少・働き手不足
慢性的な人手不足が大きな悩みで、少子高齢化の影響がとても大きい。
20人ほど採用したが、そのうち5人はシフト当日に来なかったり、
音信不通になって突然辞めてしまったり。
それでも、そもそもの応募が少ないために、妥協して選ばさるを得なかった。
近隣のラーメン店より高めに給与設定しても恒常的な人手不足に苦しんだ。
そのため、シフト管理に頭を悩ませることが多く、負担が増え疲労が抜けなかった。
また、ラーメンの主要な消費者が若者にも関わらず、その若者の数が減っているので、
今後売上が確実に減少することが目に見えている。

(理由3)ネットの口コミ
高評価に混ざって投稿される、一部の一方的な批判に心を痛めることになる。
理不尽な内容や嫌がらせ、心ない投稿を確認した場合、精神的ストレスにも参ってしまった。
「おいしいものを安く提供したい」と考えて頑張っているのに、
見えないところから石を投げられているように感じた。
悪意のある投稿はごく一部で、10倍以上お店を褒める内容だったとしても、
印象に残るのはネガティブな評価となる。
また、「相手を思い、良かれと思って」と低評価をする人もいるが、それは的外れで、
星の数(評価点数)を参考にするため、お店はダメージを受けてしまう。

この3つの理由は、学習塾経営者にとっては他人事ではないと思います。

学習塾でも、大手さんを中心に「夏期講習無料」や「小学生無料」などの
無料キャンペーンが展開されていますよね。

無料や安さを前面に打ち出した、価格勝負の戦略ですね。

そうなると、個人塾も安易に値上げすることができませんし、
個人塾が価格競争に乗っかってしまうとさらに危険です。

大手さんのように薄利多売でカバーできるわけではありませんので、
個人塾だと数を維持するのがやっとで利益がでなくなります。

頑張っても頑張っても経営者が報われなくなる構図です。

また、売上が下がったり利益を圧迫されたりすると、人件費を意識せざるを得ません。

相場より低い時給で求人を出したところで、いい人材を確保することは困難です。

妥協して採用したアルバイトの質は低くなりがちですから、
教室全体のサービス低下を招いて負のスパイラル一直線です。

さらに1~2年前に比べ、電気・水道代の高騰や
コピー用紙などの備品類の値上がりは凄まじいと思います。

教室の家賃も値上げとなったところもあるのではないでしょうか。

これらに関してはみなさんはどう対応されていますか?

授業料以外に管理費などの名目で費用をいただいている塾さんも多いと思いますが、
管理費を値上げできずに、利益から持ち出している塾さんも多いのではないかと推察します。

個人塾の場合もこのラーメン店同様、値上げができない環境で、
経営者と現場スタッフが十分な収入を得られず、耐えている姿そのままです。

個人的には、質の高いサービスを提供できているのであれば、
値上げすることは大切だと思っています。

「値上げしても通いたい塾」「周りの塾より多少高くても価値のある塾」という
ブランディングができていることが前提にはなりますが、そういう塾になるために、
自塾にどんな取り組みをできるかを改めて考える必要があるでしょう。

私自身は、こうした時代だからこそ、小回りの利く個人塾に優位性があると感じています。

塾長が「これをやったらいいな」ということを具現化し、チャレンジすることで、
教室の質が向上していくのではないでしょうか。

人口減少・働き手不足も、学習塾が痛感している部分です。

少子化の影響により子どもの数がどんどん減っているわけですから、
塾の総数が変わらなければ、1塾あたりの生徒数は単純に減ります。

そのため、周りの塾より特徴を持ち、魅力的な塾にすることで
生徒数の維持に努めることになります(競争社会ですから仕方のないことですが)。

しかし、中学生がメインの塾でも、少子化により横展開が厳しくなってきており、
縦展開(高校生・小学生・習い事)などの施策をする塾も増えてきています。

縦展開の場合に気をつけたいのは、展開する分野を徹底的に研究することです。

単に「高等部を作りました」だけでは、
素人が面倒をみることになり、質が悪くなるのは明らかです。

結果として悪い評判となり、教室全体に影響を及ぼすことになります。

アルバイトの採用も年々厳しくなっていると感じます(みなさんいかがですか?)。

特にここ数年、ブラックバイトの代名詞といった認知が広がり、
塾講師の魅力がどんどん減っている風潮があります。

昔は塾講師や家庭教師のバイトは高時給&あこがれという面もあったのですが、
そこにあぐらをかいていた私たちにも責任があると言えるでしょう。

しっかり反省しつつ、塾講師という仕事を。再び魅力あるものにしていく必要がありますね。

そのためにまずは、時給アップが最低限必要なことではないでしょうか。

弊塾でもこの春から、時給を大幅にアップします。

いい人材を確保することができれば、教室運営が好スパイラルになり、
退塾数の減少や紹介数の増加など、売上に利益も貢献することになりますので、
先行投資という認識です。

また、採用活動にもしっかり投資をして、
自塾のことをたくさんの大学生に知ってもらうことが大切でしょう。

ネットの口コミに関しては、学習塾にも心ないコメントや誹謗中傷などを
書き込まれてしまうケースがあります。

もちろん、その批判の内容が事実であり、
元生徒さんや保護者さんから書き込まれるのであれば反省の余地もあるでしょう。

しかし、同業他社の嫌がらせによる書き込みなどもあると聞きますし、
ひどい言葉で攻撃されると、心が傷ついてしまうのは事実です。

いわゆる「スルースキル」などを高めて自身を防御する手段を身につけておく一方で、
悪意あるコメントは削除申請したり(なかなか通らないようですが)、
堂々とコメント返しをしたりと対策しておきたいところです。

顧客(生徒さん・保護者)も口コミは読まれると思いますが、やるべきことをやっておき、
ある程度は気にしないというスタンスが、精神的にもベターかと思います。

いかがでしたか。

私はきちんとしたサービスを提供できているのであれば、
授業料や管理費を値上げするべきだと思います。

値上げすることで、売上・利益を増やし、その分を人件費に充てて、
従業員の満足度を上げることができるからです。

もちろんオーナーや塾長もしかりです。

「値段の割にサービスが良い」と思っていただけるレベルを維持することが、
これからの塾運営につながるのではないでしょうか。

先日、facebookで
「企業やお店は値上げによって潰れるのではなく、値下げによって潰れるのだ」
という投稿を目にしました。

まったくもって真理を突いた言葉だなあと思います。

最後は宣伝のようになってしまい恐縮ですが、
1月24日に開催する「教室経営で『利益』を確実に出す方法」セミナーにも
ぜひご参加ください!

<教室経営で『利益』を確実に出す方法>

■日 程  : 1月24日(火)11:00~12:30
■講 師  : 林 大輔氏(株式会社ZEST代表取締役)
■対 象   : 学習塾関係者(塾長・塾オーナー・教室長・社員など)
■参加方法 : Zoomを使ったウェビナー
■定 員   : 1000名(先着申込順)
■参加費用 : 無料
■申 込   : https://contents.comiru.jp/seminar/20230124-1/

※アーカイブ(後日視聴)はありません
※株式会社POPERと共同開催です

今年もお互いしっかり利益を出して、生き残る塾であり続けましょう!

【今回のまとめ】
・値上げを我慢しすぎると悪影響が出る可能性が高い
・値上げをすることで、みんなが幸せになれる形を作る

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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