先日、とても共感できるニュースを読みました。
脳科学者の茂木健一郎さんが、大学を偏差値帯でカテゴライズした
「MARCH」「大東亜帝国」などの呼び方について、強い憤りを持って批判しています。
<茂木健一郎氏 大学を“MARCH”呼びする教育界・予備校業界を批判「最低最悪の愚行」>
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5e9b8c22f83edaf1495d9ed404d50a800c97801
みなさんご存知のとおり、MARCHとは明治、青山学院、立教、中央、法政大学の
頭文字をとって語呂合わせしたもの。
大東亜帝国なら、大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士館。
記事には記載がありませんが、日東駒専(日本、東洋、駒沢、専修)もありますし、
関西圏では「関関同立」(関西、関西学院、同志社、立命館)、
産近甲龍(京都産業、近畿、甲南、龍谷)などが有名ですね。
茂木氏は(このような呼び方を定着させた)「予備校業界が悪い!」と断罪しておられますが、
同じ私教育業界にいる私としても、本当に返す言葉がありません……
以前から同様の批判があったことは知っていますが、
正直なところ、実際に私もこれらの呼び方を使っていましたし。
茂木氏も指摘しているように、これらは単に偏差値帯でひとくくりにした、
便宜上のカテゴリーにすぎません。
同じMARCHの一角でも、それぞれの大学はまったく異なる存在であるにも関わらずです。
大学としての個性や魅力はぜんぜん違いますし、建学の精神も、
いわゆる3ポリ(ディプロマ、カリキュラム、アドミッションポリシー)も違います。
それを同じカテゴリーで括って語ることは大学に対しても失礼ですし、
生徒さんへの悪い影響もあると思います。
以前、大学受験のサポートをしている友人から、
生徒さんとのこんなエピソードを聞いたことがあります。
志望校を尋ねたら、「関関同立のどこかには入りたい」と答えたと言うのです。
私も、その話を聞いてゾッとしました。
明らかに、偏差値帯(もしくはそれに伴う大学名のブランド力)で進路を選ぶ発想ですよね。
自分の学力と比較して「この辺りのレベルを目指したい」と考えるのは良いとしても、
それにしたってまずは、大学で「どんなことを学びたいか」があってのこと。
「こういうことが学びたい」という目標があり、
それを学べる大学や学部を探すことから始めるのが筋であって、
難易度や偏差値帯で比較するのはその次でいいはずです。
しかし「関関同立のどこか」から始まる進路選択の価値観に、そのステップはありません。
「教育」「学び」という観点から考えれば、明らかに間違った作法であると言えます。
そして、その生徒さんがそんな発想で大学を選んでしまっているのは
茂木氏も指摘するように、まぎれもなく私たち大人(学校、予備校、塾)のせいです。
これは強い自戒も込めてお聞きしてみたいのですが、みなさんはどうでしょうか?
生徒さんの進路面談などをするとき、
いきなり偏差値帯から考え始めたアドバイスをしていないでしょうか?
「先生、どの大学がいいかな~?」
「そうだね、キミなら関関同立あたり狙ってみてもいいんじゃない?」
みたいな。
でも本来なら、そうではなく
「大学でどんなことが学びたいの?」「将来、どんなふうになりたいの?と
尋ねることから始めるのが正しいアプローチだと思います。
これは、高校受験も同じことです。
偏差値で輪切りされ「勉強の得意な子はここ」「中間層はここ」「下位層はここ」みたいな
選び方がはびこっているのが現実ですよね。
生徒さんたちも、疑うことなくそういう価値観を刷り込まれています。
でも本当なら、やりたいことをやるために進路を選んで欲しい。
別に普通科の高校じゃなくたっていいじゃないですか。
農業、工業、商業、水産などの専門学科や、総合学科の高校でも
素晴らしい学校がたくさんあります。
その生徒さんがやりたいことや、個性を活かせる環境がそこにあるのなら。
専門学科や総合学科の高校は「勉強できない子が行く」みたいな風潮もありますが、
そもそもそれがおかしいのです。
当メルマガでも何度か紹介している
「地域みらい留学」(地元を離れ、地方の特色ある公立高校へ進学する動き)もあります。
<地域みらい留学>
https://c-mirai.jp/
「家から通えて」「自分の学力で入れる」というのがこれまでの高校選びだったとするなら、
私たちももっと広い視野を持たなければいけないと思います。
確かに、塾経営はビジネスです。
成績向上や、志望校合格に向けたサポートをするのが仕事です。
でも、「教育」の末端に加わっているんだという矜持は忘れてはいけないと思います。
まずは「MARCH」や「関関同立」を、禁止ワードにしてみるのもいいかもしれないですね。
【今回のまとめ】
・偏差値帯で大学や高校をくくっただけの進路指導は、見直してみませんか?