【Vol.785(2024.04.12)】夢って本当に必要?

先月の当メルマガでご紹介した、日本財団が定期的に実施している「18歳意識調査」。

毎回、現代の若者の志向や傾向が良く反映されていて非常に興味深いのですが、
今回もまた気になる調査結果が公表されていました。

シェアしつつ、問題について一緒に考えてみましょう。

今回のテーマは「国や社会に対する意識」で、
日本・アメリカ・イギリス・中国・韓国・インドの17~19歳の男女(各国1,000名)を対象に
比較調査を行っています。

<日本財団18歳意識調査 第62回「国や社会に対する意識」>
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2024/03/new_pr_20240403_03.pdf

この中で、塾関係者(教育関連業従事者)としてぜひ知っておきたいと思ったのが、
日本で「将来の夢を持っている」と答えたのは60.1%だったことです。

夢がある若者が「6割もいる」のか「6割しかいない」のかは評価が分かれるところでしょうが、
他国と比べると「6割しかいない」と表現するほうが適切なようです。

アメリカは84.7%、イギリスは82.0%、中国は88.2%、韓国は73.5%、インドは88.4%で、
調査対象国の中でもとびぬけた数値で最下位となっています。

また「自分かは他人から必要とされている」、
「自分には人に誇れる個性がある」という質問でも、
日本は他国に大きく差を離された最下位でした。

こうしたデータは、似たような他の調査などでもたびたび話題になっているため、
目にされた方も多いでしょう。

そしてそのたび、多くの教育関係者が
「もっと子どもたちの夢を育てなければ!」と問題意識や情熱を燃やします。

ただ、ここで注意しておきたいこともあるんです。
「夢を持つ=絶対的正義」のように扱わないことです。

確かに、夢を持つのも、夢を持つ子どもたちを育てるのも、素晴らしいことだと思います。
そこに対して否定しているのではありません。

しかし「夢を持とう!」「夢を持とう!」と大人から働きかけられることに
うんざりしている子どもたちだっています。

子どもたちに過度に夢を持つことを強いたり、絶対的に正しいことだという前提で接するのは、
「夢を持てない自分はダメな(人より劣る)人間だ」と追い込んでしまう側面もあるからです。

それって、勉強ができないからダメだと言っているのと同じなんですよ。

勉強はできないよりできたほうがいいですが、夢も同じ。

まずは(夢が持てない子には)「ないよりはあったほうがいい」くらいの
接し方のほうがいいのかもしれません。

勉強もそうですが、夢も他人に強制されて持つものではないでしょう?

まずは、なぜ「夢を持てないのか」を考えることから始めなければいけません。

また、こうした考え方でいくと、勉強への動機づけに「夢」を用いることがありますが、
それが本当に正しいアプローチなのかも一考の価値があるかもしれません。

勉強が苦手(嫌い)だから、「夢のためには勉強が必要だ」という理屈ですが、
すでに夢がある子ならいいですが、まだ夢が定まっていない子に
夢を持つことを強いても余計に苦痛になるだけです。

それと、「夢」にちなんで私が以前から気になっているのは、
無意識に「夢」と「職業」を結び付けて語ってしまうことです。

子どもたちに「将来の夢は何?」と尋ねるとき、
それがイコール「どんな職業に就きたい?」になっていることってありませんか?

「夢」なんですから、もっと「お金持ちになりたい」とか「有名になりたい」とか、
「世界を旅してみたい」「愛する人とずっと一緒にいたい」とかでいいのではないでしょうか。

職業選択は、その手段の一つに過ぎないのですから。

とかく私たち大人は、学ぶことや夢を持つことを、
経済社会での実用性で考えすぎな部分があると思います。

そもそも、子どもたちが夢を持てないのは、子どもたちが悪いのでしょうか?

そんなことはないはずです。
夢を持てない社会を作ってきた、私たち大人の責任だと思います。

将来が見越しにくい不安定さ、働くことに疲れて暗い目をした大人、
子どもたちが夢を抱くと“現実”に引き戻そうとするドリームキラー……

これからの社会はこうなるから、ナントカ能力やナントカスキルを身につけなければ!
そうしないと生き残れない!

みたいな、恐怖に根差した動機で学ばせようとするのも考えものですし、
そんな脅しから始まる状況で、子どもたちは夢なんて抱ける余裕なんかないですよ。

夢やハングリー精神を持てなくても、衣食住に事欠いたり、
生命の危機が訪れたりするわけではない、
日本はそれだけ安心・安全な国だと考えることもできるわけです。

それくらいのスタンスから始めるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。

そうした社会を作っておいて
「いまどきの子どもたちは夢が持てないから嘆かわしい」なんて言えた立場ではありません。

子どもたちに夢を持てと働きかけるのではなく、
放っておいても夢を抱くような社会を作り、背中を見せる必要があるのだと思います。

まずは、私たちが前向きで生き生きとしていたいですね!

【今回のまとめ】
・夢を絶対視し、持つことを強要するのは危険
・夢が持てないのは子ども自身のせいではない

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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