【Vol.642(2022.11.25)】意外と多い?ヤングケアラー

近年、問題として取り上げられることが多くなった「ヤングケアラー」。

家族の介護などを日常的に行っている子どもたちのことを指しますが、
実際、みなさんの教室ではいかがでしょうか?

それと思しき生徒さんはいらっしゃいますか?

「塾に行く時間があるくらいだから大丈夫だろう」と思いたいですが、
何をもってヤングケアラーとするのか法令などによる定義はなく、
実態の把握が難しくなっているそうです。

こうした状況を踏まえ、各自治体で調査が進んでいます。

<ヤングケアラー調査、回答した中高生の1.7%が該当の可能性 高知>
https://www.asahi.com/articles/ASQ9Z7R58Q9ZPTLC00M.html?iref=pc_rellink_01

この調査によると、高知県内の中高生のうち約15%にあたる492人が
「世話をしている家族がいる」と答えたことが分かりました。

また、約1.7%にあたる55人が
「(家族の介護のために)やりたいことができないことがある」と述べており、
県はこの55人はヤングケアラーに該当すると見ているそう。

また、千葉県の調査では小6で14.6%、中2で13.6%、高2で10.5%が
同様に「家族の世話をしている」と回答、
栃木県の調査でも、小6:12.0%、中2:8.2%、高2:5.0%でした。

おおむね10%強が家族の世話を抱えており、
少なくとも1%はヤングケアラーに該当している状態です。

この数字をそのまま塾に当てはめて考えるなら、
仮に生徒数が100人とすると、10人以上が家族の世話を抱えており、
1人以上がヤングケアラーであるということになります。

加えて、上述の千葉県の調査では、定時制の高校に通っている生徒に限ると、
同じ高2でも全日制に比べて数値は2倍近くにまで跳ね上がり、
19.0%が家族の世話をしないといけない状態にあることが分かっています。

定時制に通う理由はさまざまでしょうが、学業面や家庭の経済面、
あるいは一般的な全日制の学校集団に馴染めないなど、
何らかのサポートが必要な子たちです。

ただでさえ、当人のサポートが必要な状態であるにも関わらず、
サポートを受けるどころか、自分が家族をサポートしなければならないということになります。

エビデンスに基づいた因果関係までは分かりませんが、
弊社では定時制サポート校事業に取り組んでいることもあり、気になる傾向ではあります。

ここで申し上げたいのは、貴塾にもヤングケアラーに該当する生徒さんがいないか、
目配りをしてあげてほしいということです。

確かに、家庭の問題ですから軽々しく踏み込むことは難しいでしょう。

しかし、生徒さんの学業成績が振るわず、
言動や表情から何かしらのサインが出ているようにも見えるが、
面談やヒヤリングをしてもいまひとつ原因を特定できないこともあると思います。

こうしたときは、ヤングケアラー問題も頭の片隅に置いておいたほうが良いかもしれません。

一方で、調査からはさらに気になる結果も浮かび上がっています。

栃木県では「ヤングケアラー」という言葉を
「聞いたことはない」「聞いたことはあるが、よく知らない」と答えた子どもが、
7割近くにものぼっているそう。

また記事によると、高知県でヤングケアラーと目された55人のうち、
同じく約7割が問題について相談した経験がないことも分かっています。

「相談しても解決すると思わない」「家族のことなので話しにくい」という理由が多いようです。

つまり、「自分はヤングケアラーである」という自覚のない子どもたちも多いうえ、
自覚があっても人に話せず背負い込んでいるケースも少なくないということです。

繰り返しになりますが、塾でこれを解決することは難しいかもしれません。

しかし、このような現状があることを知りながら放っておくこともできませんよね。

子どもたちの幸せに寄与するという原則を考えると、
塾も一つのセーフティネットとして、問題を発見することは大切です。

虐待問題などにも同じことが言えるかもしれません。

塾の経営や売上に直結する話ではないかもしれませんが、意識しておきたいところです。

【今回のまとめ】
・あなたの教室にもヤングケアラーがいるかも
・解決はできなくても、見つけ出し、サポートする意識は大切

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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