【Vol.757(2024.01.05)】教育って誰のため?

今回は新年1回目のお届けということで、原点に立ち返るという意味も込めて
「塾」あるいは「塾講師」が持つべき大切なマインドについて一緒に考えてみませんか?

まずはこちらのニュースをご一読ください。
塾講師が学校で授業を行ったという内容です。

<塾講師が公立小学校で算数の授業、千葉県教委が試行>
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20231205-OYT1T50241/

その難易度からつまずきが生じやすく、その後の中学数学履修への影響や
数学(算数)嫌いを生み出すことが多いとされる「小学5年生の算数」。

これを塾講師が出張授業の形で試験的に行った、というニュースです。

私立校などで「校内予備校」を設置し、
民間の予備校が放課後学習などを受託する例はいくつかありますが、
公立校では珍しいケースだそう。

授業を担当したのは市進さんの講師の方で、
さすがプロ講師と言うべきか、生徒たちからも校長先生からも
「分かりやすい」と好評だったようですね。

このような動きから、塾の経営者や塾で働く人間は何を学ぶべきでしょうか。

私は学校も塾も関係なく、「子どもたちの利益のために」という
心の在りようが大切だと考えました。

そもそも今回の試みの根底にあるのは、学力低迷が懸念される中で、
民間の指導ノウハウから積極的に学ぼうという考えだとのことです。

素晴らしいことですよね。

しかし、普通に学校の先生の立場で考えれば、
自分たちの授業の指導力が否定されていると受け止められても仕方ない試みです。

その声が報じられることはありませんでしたが、
実際には「塾講師が授業をするのであれば、教員なんて必要ないじゃないか」
と思われた先生方もいらっしゃるかもしれません。

自分たちが命を懸けて取り組んでいる“土俵”に踏み込まれた気がして、
不愉快に感じた先生方もいらっしゃるのではないかと思います。

また、一部報道では「学校の先生の授業より塾の先生の授業のほうが良かった」
という生徒さんの声を作為的に前面に打ち出すような記事も見かけました。

このように無駄に対立や比較をあおるような報じ方も健全ではありません。

私たちも「自分たちのほうが優れている」などと思いあがらず、
学校の先生方に敬意を持つことが大切です。

閑話休題、それでもこのような実践に踏み切ったのは、学校(教育委員会)に
「外部の力を積極的に使おう」という姿勢があったからではないでしょうか。

実際に近年では、公立校でも“教育のアウトソーシング”をするのは一般化してきました。

部活動の地域移行などはその最たる例でしょう。

自治体や学校から委託を受けた民間事業者が、
探究学習のコーディネーターを務める例も珍しくなくなりました。

そしてその原点になっているのは「子どもたちのためになるなら」という考え方です。

自分たちのプライドを守ることよりも、あくまで子どもの利益を優先すること、
教育の受益者は子どもたちであることを理解しているからだと思います。

塾も学校も関係なく、教育関係者が陥りがちなのが、「俺が育てた」という実感や、
子どもたちに「感謝されたい」という歪んだ承認欲求です。

「人間だもの」的な発想で解釈するなら気持ちは分からなくもないのですが、
やはり教育は、教育者が自分の自尊心を満たしたり、
尊敬されたり感謝されたりするためにやるものではないですよね。

これを塾業界に限定して考えてみましょう。

おそらく塾を経営している人の誰もが
「自分の塾こそ、子どもたちを最も幸せにできる!」という気概を持って
日々のお仕事に取り組んでおられると思います。

エゴとか思い上がりという意味ではなくて、あくまで心意気の問題です。

しかしそれが、他塾の批判という形で表れるのはあまり良くないことです。
それぞれの塾が、それぞれの正義や信じる教育のために日々頑張っているのですから。

また「自塾こそ子どもたちを救うにふさわしい」と過信し、
メサイアコンプレックス(※)に陥ってしまう人もいるようです。
(※)他者を助けることで自尊心を満たし、自己有用感を得ようとする心理

これらはいずれも、教育活動のベクトルがすべて自分に向いているんですよね。

自塾よりも他塾のほうがその生徒さんに向いていると思うとき、
臆せず他塾さんを勧める方も多いと思います。

それは「そのほうが、この子のためになるから」という、教育の本質をついた発想ですよね。

学校が塾講師の授業を取り入れるのも、同じ原理です。

つまり塾も、自己満足のために生徒さんを囲い込んだり、
かき集めたりするのは違うんじゃないかなと思うわけです。

もちろん塾は営利団体ですから、売上を無視しなさいという意味ではありません。

また「うちでは無理だから他塾へどうぞ」という話でもなく、
もしその子を幸せにする技量や環境が自塾に整っていないのであれば、
それを改善する成長意欲を持つことが王道なのではないかなと。

ビジネスの上ではライバルであっても、
根底では互いに「子どもたちのために」という気持ちを忘れないこと。

だから切磋琢磨して「より良い教育を届けるぞ」という矜持が持てるのだと思います。

2024年、改めて「子どもたちにとって最善は何か」という気持ちで
塾運営に取り組んでみませんか!

【今回のまとめ】
・教育の受益者は子どもたちである
・「子どもたちのために」という気持ちを忘れずに

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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