【Vol.710(2023.07.21)】これからの、学習空間づくりとは

国立教育政策研究所が、ユニークな報告書を公開しました。

学校施設の空間づくりに関するもので、
教育の内容やアプローチが大きく変わりつつあることをふまえて、
それに準じた快適で合理的な教室(学校施設)づくりをしようというものです。

  

 

「創造的な学習空間の創出に関する調査研究」報告書について
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この報告書は学校の空間づくりに関するものですが、塾に関係ないとは言えません。

もし今後の学校でこうした空間づくりが進むのであれば、
塾だけが取り残されるわけにはいかないからです。

「学校は快適だけど、塾は……」なんて言われないようにしたいですよね。

塾経営者さんの中には、カフェのようなおしゃれ空間を再現している人もいれば、
あまりそのあたりに興味がなく、武骨な(悪く言えば雑然とした)教室を作る人もいます。

ただ、今回の報告書の背景にあるのは、教育界におけるICT化が進んでいることと、
個別最適化された学びや協働的な学びの重要性が浸透しつつあることのようです。

だとすると「なぜそのような空間づくりが必要か」という要点は学校も塾も関係ありません。

オシャレな空間を作るのももちろん悪くないですが、
どうせやるなら、教育的根拠に基づいて教室づくりをしたいところです。

その視点で、報告書を紐解いてみましょう。

これによると、これからの学校空間づくりのキーワードは

・「コモン/シェア(専有しない)」
・「ダイバーシティ(多様性)」
・「シームレス(連続性)」
・「モードチェンジ(時間や場面による空間の変容)」
・「リダンダンシー(冗長性)」
・「ウェルビーイング(心地よさ、五感に優しい)

の6つだそう。

例えば「コモン/シェア(専有しない)」では
=========
学年や複数クラス、あるいは教科等によるユニット(コモンズ)を構成し、
クラスルームとなる教室も、学習場面では特定のクラス専用の場とせずに
クラスや集団を超えて、活動の人数や活動の性状に応じてお互いが使えるようにする。
=========
と記載があります。

学校という集団学習の場を想定した内容だと思われますので、
個別指導塾でそのまま再現するのは難しいかもしれませんが、
趣旨として参考にできる部分はたくさんあります。

ユニット(コモンズ)を構成するという考え方は、
指導スペース(座席)の配置にも活かせるのではないでしょうか。

ほか「ウェルビーイング」では、
========
変化のある空間、好きな場所が選べる、五感に優しい空間、家具、
仕上げ等による心地 よい空間が、自分が大事にされているという感情とともに、
前向きな気持ちを生み出すよ うにする。
========
と記述されています。

「変化がある」「好きな場所が選べる」というのは面白いですよね。

そして注目したいのは「自分が大事にされている感情とともに~」のくだりです。

先ほども「どうせおしゃれ空間を作るのなら」と申しましたが、
単に自分の趣味だけに走ったおしゃれ空間のするのではなく、
「おしゃれで過ごしやすい=自分(生徒さん)が大事にされているから」
と分かってもらえると最高だと思います。

また、具体例としては以下のような案が示されていました。

・机の寸法を拡大
・自由な配置転換に対応できる教室スペース
・生徒用ロッカーや掃除用具入れなどは、教室の外に配置
・壁面を確保し、教室の正面性をなくす

これらも、とても勉強になる視点ですよね。

ちなみに、こうした空間づくりをすでに実施している学校もあるそうですよ。
やはり塾もうかうかしていられません。

「塾は勉強するところであって、そういう部分に時間や金を使うのは間違っている!」
という硬派な意見もあるかもしれません。

チャラチャラしているように見えるのかもしれませんね(笑)。

しかし、勉強するところだからこそ、
より気持ちよく効率的に勉強できるようにしてあげるのは良いことだと思います。

限られた空間ではありますが、「塾にいるのが心地よい」と思ってもらえるようにしたいですね。

【今回のまとめ】
・学校が新しい空間づくりを始めようとしている
・「何のためにそれをやるのか」という教育意義的視点は必須

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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