【Vol.1014(2026.06.09)】アルバイトが労基に駆け込んでも大丈夫?

個別指導塾の場合、講師や事務スタッフはアルバイト雇用がほとんどだと思います。
社員だけの個別指導塾さんもありますが、少数派です。

アルバイトと正社員とでは給与も業務内容も責任も重みが違いますが、
そのせいで「アルバイト」という労働者を軽視している面はないでしょうか。

悪意を持って軽く扱うという意味ではないにせよ、
無意識に、あるいは慣習的に、労働条件などさまざまな場面で
「まあ、アルバイトだし」と考えてしまうことがあるかもしれません。

しかし、その考えは改めたほうがよいと思います。

例えば、もしみなさんの教室で働いているアルバイトたちが、
貴塾の勤務(労務)条件について違法性などを労働基準監督署に相談しても、
「うちは大丈夫!」と自信を持って言えるでしょうか?

プロ野球チームの監督辞任に絡んで先日も話題となりましたが、
今は子どもたちでも悩み事があればChatGPTなどの生成AIに相談する時代です。

同じように、アルバイト講師が勤務のことで悩みを相談しても、
そこに法的、あるいは倫理的にグレーな部分などがあれば、
「それは労働基準監督署に相談してみましょう」とアドバイスすると思います。

もちろん、アルバイトとのコミュニケーションの取りようによっては、
ちょっとした善意やサービス精神から、
無給で働いてくれたり手伝ってくれたりすることもあると思います。

それは本当にありがたいことですが、
それに甘えすぎていると、痛い目を見る可能性が高くなりますよ。

ちなみに弊塾は、アルバイトやパートスタッフにも
有給をきちんと取得・消化してもらっています。

もちろん、正社員の方にもきちんと有休を取ってもらわなくてはいけません。
もし社員さんに有給を付与していないようであれば、大問題ですよ!

近年では大学でも、新入生のオリエンテーション時に
「アルバイトにも有給があります。権利なので必ず申請しましょう」とレクチャーする
ケースが増えているそうです。

これを聞いて、もし「学生に有給?は?」「余計な入れ知恵をしないでくれ」と
思われたようなら、厳しいことを言うようですが、すぐにでも考えをアップデートすべきです。

速攻で労基に駆け込まれますよ。

20〜30年前から有給という制度はありましたが、
アルバイトで使った人はほぼ皆無ではないでしょうか。

使った瞬間に干される、煙たがられるみたいな風潮があったと思います。

そもそも、自分に有給を得る資格があること自体、
知らない学生アルバイトも多かったはずです。

しかし、もう時代が違います。

今では簡単に情報を手に入れることができますし、
そもそも権利として活用するというのが現代の就労観です。

アルバイトの有給について解説した記事がありますので、こちらもご覧ください。

<アルバイト・パートも有給はもらえる。いつから・何日・いくらなど条件と計算方法を解説(タウンワーク)>
https://townwork.net/magazine/knowhow/low/40078/

ちなみに、勤続年数が半年経てば、下記の有給日数が付与される決まりです。

【有給付与日数(勤続年数が半年以上)】
・週5日以上勤務・・・有給日数10日
・週4日程度勤務・・・有給日数7日
・週3回程度勤務・・・有給日数5日
・週2回程度勤務・・・有給日数3日
・週1回程度勤務・・・有給日数1日

また、有給だけでなく、勤務時間に関してもきちんと整えていく必要があります。

覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、11年ほど前、
「塾=ブラックバイト」というイメージがついたできごとがありました。

【厚労省も異例の改善要請! 個別指導塾はブラックバイト業界か】
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/98d70621a97e4983687d83917d94967518c6c84e

授業前後の勤務に対して、きちんとした対価が払われずに、
やりがい搾取として取り上げられたニュースです。

すべでの塾がそうではなかったにせよ、
当時の塾業界には、「教育」や「生徒のため」というワードを人質にして、
対価を払わない労働(報告書作成・予習)が常態化している部分がありました。

授業前後の準備給がなかったり、
授業と授業の間(入れ替えの時間)の時間は無給にしたりというケースもありましたね。

弊塾では、授業の始まる10分前と、授業が終わってからの20分は
準備給として手当を出しています。

授業が終わってから20分以内に退社してもらうようにしていますし、
そこはコロナ以降、特に意識して取り組んできました。

正直なところ、昔は、授業後に教室でアルバイト講師とお菓子を食べながら
1時間でも2時間でも生徒さんの話で盛り上がっていました。

講師たちも残ってダラダラしゃべるのが好きだったんですよね。

しかし、もうそんな時代ではないと割り切っています(非常に寂しいですが)。

また、夏休み以降は高3の過去問対策授業が始まります。

その場合、講師は過去問の予習をする必要がありますが、
こちらも予習代として、きちんと賃金を支払っています。

科目によって予習にかける時間が異なりますが、目安としては、
関関同立クラス以上の大学で45〜60分、
産近甲龍クラスで20〜40分の事務給を支払っています。

めちゃくちゃ難しくて長い英語長文を出題することで有名な
同志社大学の過去問を「無償で予習しておいてねー」なんて、私には言えません(笑)。

きちんと払うぶん、しっかり予習してきて
「授業では最高のパフォーマンスを出してね」というスタンスです。

これが無償の場合、予習をしてこなくてもこちらは文句を言えません。

だからと言って授業時に初見の問題解説をしようものなら、
授業の質が低くなりすぎてたまったものでもありません。

やはり、塾としての質担保の意味でも、講師には相応の指導力や努力を求め、
その対価として適切な賃金を支払うのがあるべき姿だと思います。

ブラックバイト問題をきっかけに、学習塾業界の労働環境が整い出してきていますが、
それでもまだアルバイトに有給を出さない、言ってくるまで(有給のことは)黙っているなど、
労基に入られたら危ない塾さんがたくさんあると思います。

「今のアルバイトは権利ばかり主張してくる」と思われるかもしれませんが、
権利なのですから当然です。

その権利も踏まえた上で雇用しているわけですし、それが納得できないのであれば、
雇用契約でなく委託契約を結べば良いと思います。

ただ、塾内での学習指導が委託契約になるかはまた別の問題になりそうですので、
そのあたりは社労士さんに相談してみてください。

払うものはしっかり払って、その分責任を持って仕事をしてもらう、これが王道です。

質の高い授業となれば、指導単価を上げても問題ありませんし、
こちらが我慢しすぎる必要もありません。

いい授業をして結果を出し、指導単価を上げても納得してもらえる授業を展開できれば、
気持ちよく支払うことができますし、
結果として生徒数増や売上増に繋がる好循環となります。

超ホワイトな塾をアピールすることで、いい人材が集まるというメリットも多々あるはずです。

昔はこうだった……にしがみつくのではなく、今の時代にしっかりと対応できる仕組みを作り、
もし今あなたの教室で働いているアルバイトが、
労基に相談に行っても大丈夫、いやそもそも労基に行こうなんて発想が起きない
健全なマネジメントを実施していきましょう。

【今回のまとめ】
・アルバイトの有給や無償の時間外労働にきちんと対応する
・ホワイトで魅力ある塾運営を心がける

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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